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外国人参政権法案早期成立のためにも、ていねいな説明を

 マンガを読む速度は、欧米人に比べ日本人のほうが格段に早いそうだ。日本語の特殊性が寄与している。普段から漢字(表意文字)とひらがな(表音文字)を一緒に脳で処理している日本人は、絵とふきだしを瞬時に認識できる。内田樹さんの『日本辺境論』(新潮新書)で知った。脳機能研究によっても証明されているらしい。

 米国属国の日本は、せっせと英語教育に力を入れる。まずは日本語を勉強させろと、つい”右翼”的になってしまう。何とも不思議なのは、保守陣営(言論界も含め)から英語排斥論が出ないことだ。もし英語が公用語化すれば、確実に日本文化そのものが変容しよう。それでも構わないということなのか。

 一方で、外国人参政権問題では、「絶対反対」「日本が滅びる」「中国に占領される」といった勇ましい言葉が飛び交う。どうやら、こうした「排外主義」の主張はもっぱら中国、韓国、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に向けられ、米国は範疇に入らないらしい。強い者には服従し弱い者は排除する――これでは、大和魂も武士道もあったものではない。

 資源のない島国の日本が生きていくためには、大きくいって二つの選択肢がある。「他国を侵略して植民地化する」「各国と友好関係を結び、共存共栄を図る」。前者を選ぶ人はまずいないだろう。となれば、善隣外交を展開するしかないのだ。

 それには、「他国を受け入れ、他国に受け入れてもらう」姿勢が必須になる。むろん、迎合を意味するものではない。歴史の違い、文化の違いを尊重しあったうえでの外交が重要ということである。日本の場合、侵略戦争の過去をもっており、しかも十分な反省、謝罪がないのだから、まずはそこを解決するのが前提であることも忘れてはならない。

 政権が準備している外国人参政権法案は、地方選挙の「投票権」にすぎない。さらに「永住資格をとって5年以上の外国人」が対象だから、ごくわずかな人数だ。朝鮮半島・台湾出身者の一般永住者が42万人、それ以外の一般永住者が49万人で100万人にも達しない。このあたりの情報が、市民・国民にきちんと伝わっていない気がする。だから、まるで国会が占拠されるかのような不安感を抱く人がいるのだろう。

 一方で、賛成の立場の側でも、朝鮮総連が法制化に反対している事実を知らない人がいたりする。与党は早急に、ていねいな説明を市民・国民にすべきだ。それが、一刻も早く外国人参政権への道を開くことにつながる。今国会の成立をあきらめるのは早い。(北村肇)