編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

文在寅と金正恩

 韓国の文在寅前大統領が今月回顧録を出版した。5月19日に配信された『毎日新聞』電子版の記事によると、金正恩・朝鮮労働党総書記は2018年4月に板門店であった文氏との首脳会談で、核・ミサイル開発に対する国連の経済制裁が「正直に言って、きつい」と語っていたという。「経済を発展させることが自分にとって最も重要な課題なのに、制裁のせいで難しい」と。確か当時、文氏は金氏に、南北経済協力の青写真を示した。板門店では二人っきりで話す場面もあった。そこで何が話し合われたのかは明らかにされていないが、おそらく経済問題について突っ込んだ話し合いがなされたのではないだろうか。

 その後、文氏が平壌を訪問するなど、南北関係は改善した。史上初の米朝首脳会談も実現した。そのまま関係改善が進んでいれば、金氏も核・ミサイルを放棄し、「経済を発展」できたはずだ。だが、米朝首脳会談決裂で再び膠着状態に。金総書記は韓国を「第1の敵国、不変の主敵」と表明するに至った。(文聖姫)