編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

音読版『おんじゅく日記』  

世界的ヴァイオリニスト、黒沼ユリ子さんが弊社から自費出版したブックレット『黒沼ユリ子の「おんじゅく日記」~ヴァイオリンの家から~』を音訳した人がいる。「音訳グループ 山びこ」のメンバーで元アナウンサーの磯部誠子さん(77歳)だ。彼女が所属する「山びこ」は、視覚障害者や高齢で視力が低下した人のために、ボランティアで録音図書を製作している。

 製作されたCDを聞いてみた。耳に心地よい。不思議なもので、字を目で追う時より内容がスーッと頭に入ってくる。表紙なども服装まで具体的に説明してくれる。聞いていると、その光景が浮かび上がってくるようだ。

 1月15日に千葉・御宿のヴァイオリンの家で開催されたブックレット出版記念会で磯部さんにお会いした。「あくまで本の内容を正確に知らせるのが目的です。だから感情を抑えて、淡々と語ることを心がけています」と語る。磯部さんのような人々がいて、視覚障害者にもユリ子さんの素敵な本の内容が届くことをうれしく思う。(文聖姫)