編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

夫婦別姓制度は今度も陽の目が見られそうにない。これは、時代錯誤であるのはもちろん、紛れもなく有事法制につながる発想である。

 もう、うんざりだ。夫婦別姓制度がまた「お蔵入り」になりそうという。法案に反対する議員の時代錯誤ぶりには、怒りを通り越してあきれるしかない。

 法案は、自民党の有志でつくる「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」(会長・笹川尭衆院議員)が中心になってまとめた。その名の通り「例外的に」で、「職業生活上の事情」や「祖先の祭祀の主宰」などの理由がある場合に限り、家裁の許可を得て別姓が認められる、となっている。

 法相の諮問機関である法制審議会が96年2月に、選択的夫婦別姓制度の導入を答申して以来、何度か論議されたものの、そのつど自民党の強硬派の反対でつぶされた。結果、今度の法案は、別姓へのハードルがかなり高い内容となった。「何とか通そう」という苦肉の策だったのだろうが、現実を考えれば、当然、別姓を原則にすべきであり、極めて不満が残る法案である。

  だが、こんな「甘い」法案に対しても、自民党法務部会で異論が続出した。報道によれば、「国家解体運動だ」「家族制度の崩壊につながる」などの声も飛んだという。どんな顔をして、このような破廉恥な発言をしたのか、想像するだけで気分が悪い。

 同姓制度は、つまるところ「家に嫁ぐ」という考え方の延長線上にある。これが女性差別、家柄差別であるのは言うまでもないが、他にも見逃せない点がある。

 自民党の安倍晋三幹事長は「国の根幹にかかわること」と発言した。「国民管理の強化」のためには、家制度の堅持が欠かせない、ということなのだろう。紛れもなく有事法制につながる発想である。 (北村肇)