編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

歴史修正主義

 ここ数年、歴史修正主義を深刻な現象だと感じてだらだらと考え続けており、小誌でもしつこいほどとりあげている。なぜこのような錯覚が起きるのか疑問なのだ。

 大衆の対立構造を生むため、差別を正当化するため、または失政のめくらましのために「政治」が利用している「結果」は存在する。だが大衆レベルでもちょっと調べればわかる間違いや法則を信じ込む姿勢は広がるばかりだ。

 私はこのような現象の説明をこれまで歴史学や哲学に求めていたが、最近は心理学にも求めている。なぜ錯覚、思い込み、認知バイアスが生じてしまうのかについて興味深い実験も数々ある。心理学者のアルベール・ミショットは人は観察から因果関係を見つけ出しているという通説を70年も前に否定したという。

 実は人は観察の第一印象で因果関係を思い込んでしまうそうだ。つまり因果関係の発見は人の外側ではなく、そもそも人の内側からはじまっている。断捨離やミニマリズムも、無意識の思いこみに抗う内側の動きの一つなのだろう。