編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

知り合いの在日朝鮮人が、怒って電話をかけてくる。

編集長後記

 知り合いの在日朝鮮人(「在日北朝鮮人」ではない)が、このところたびたび怒って電話をかけてくる。

「北朝鮮が日本を攻撃するっていうけど、おれたち(在日)が日本にいるから攻撃するわけがない。(北朝鮮は)日本が攻撃してきたら攻撃をすると言っているのに、その前段をメディアはカットして報道している。意味が全然違う」

 恣意的な報道はいつものことだが、今回、拡散されたのは北朝鮮の若い指導者は負けず嫌いで何をするかわからないという独裁者像だ。確かに映像に見る軍人が取り囲む金正恩氏はいかにも、である。ああイラク、イラン報道に続く既視感。これが「敵性」報道の完成形なのか。国交もない、取材もできない。日本の朝鮮総聯も政治家やメディアに抗議もせずにひたすら沈黙。そうしてますます彼らは正体不明になり、裏取りいらずの叩きやすい存在になっていく。このような国は武力的緊張を適度に求める政治リーダーにとってまことに好都合だ。まるで喜劇のように日本中が騒いでいる。 (平井康嗣)