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いよいよ正念場の民主党に芽吹きはあるのか

 鳩山政権の支持率が下げ止まらない。マスコミは鳩山由紀夫首相と小沢一郎幹事長の「政治とカネ問題」が要因と報じる。そうだろうか。一因ではあっても要因とは思えない。批判覚悟であえて言えば、たかだか政治資金の形式的事案だ。容認できることではないが、かといって悪質性が高いわけではない。多くの有権者はすでに、地検の国策捜査とマスコミのバカ騒ぎだったと見抜いている。

 さらに付け加えると、どちらも「過去の事件」である。最近は、どんなに大事件でも“賞味期限”はせいぜい3ヶ月だ。世論調査のたびに質問項目に上げられるので、新聞を読んでいると、また事件が尾を引いているようにみえる。しかし、市民・国民の関心はもう別のことに移っている。

 裏を返せば、「政治とカネ問題」がなくても、鳩山政権の支持率は下がるべき運命にあったのだ。危険水域といわれる30%を割り込んだ理由は、鳩山首相のふらつきぶりと小沢幹事長の独裁的党運営もあるが、何よりも民主党が「プチ自民党」に成り下がったことにある。

 政治主導といいながら、官僚、とりわけ財務官僚にいいように操られる、米国の顔色をうかがうばかりで沖縄県民を裏切る、「友愛」を掲げながら朝鮮高校を差別する、選挙目当てに業界団体をアメとムチで手なづける――書き連ねるだけでむかむかしてくる。どこが一体、「革命的な政権交代」なのだ。

 政権浮揚の切り札としては、事業仕分けしかないのが現状だ。このため、本誌今週号で取り上げた「新しい公共」を目立たせたいらしい。税制も含め、NGO、NPOへの支援強化は望ましいことだ。しかし、一歩間違えると民間利用の小さな政府論につながる危険性も含んでいる。評価できるかどうかはこれからの展開しだいである。

 民主党支持率が下がれば上がっていいはずの自民党支持率は、相変わらず低空飛行のままだ。「自民党よりはマシだ」という消極的支持者が私も含め数多くいるのだろう。再び多数派になった「無党派層」がどこに向かうかで、各党支持率は大きく変わる。
 
 沖縄米軍普天間基地移設問題決着の期限、5月末は目の前に来ている。7月11日予定の参議院選挙もすぐそこだ。晩春の桜は一陣の風によって散る。初夏の緑が一朝に芽吹くことはあるのか。いよいよ正念場の民主党。(北村肇)