きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

谷村智康さん寄稿「被災現場でもやじうま放送 テレビ地方局の存在価値とは」と、宮崎勤死刑囚

 本誌のコラム「経済私考」で不定期に寄稿してもらっている谷村智康さんからこのネットコラムのために寄稿してもらいました。元広告代理店マンだった谷村さんは最近『マーケティング・リテラシー 知的消費の技法』(リベルタ出版)を出版し、広告とメディアの問題に痛烈に斬り込んでいます。谷村さんも宮城県に住んでいるので、今回の岩手県と宮城県の地震報道について当事者としてなぜあまり役に立たないのか違和感をもったそうで、それを分析しています。

 以下、お読みください。


 
被災現場でもやじうま放送 テレビ地方局の存在価値とは
谷村智康

 岩手・宮城内陸地震の被災現場を地上デジタル放送で見た人も多いだろうが、土石流に巻き込まれた駒ヶ根温泉は地デジの放送対象外で、その放送をあの近辺の人たちは見ることができない。
 そんな「電波が届かない」ところから、取材班がハイビジョン映像を送ることができるのは、通信衛星を使っているから。今では、パラボラアンテナも送受信機も小型化しているので、日本中のどこからでもハイビジョン中継ができる。同様に衛星を使って放送すれば、テレビ放送における地域の格情報差や途絶(!)を解消できる。
 こう言うと、地方テレビ局の人は、「地方発の映像文化の危機」と反論するのだが、今回の地震の被災県にいた者として意見させてもらえば、土石流に巻き込まれた温泉や崩落した道路の上空を旋回して放送し続けるのは、火事場見物であって、災害報道ではない。
地震などの大型災害の直下では、自分の置かれている状況が分からない。じっとしていれば良いのか、避難した方が良いのかが、まず分からない。逃げるにしてもどの交通網が生きているのかが把握できない。
 なので、複数のテレビ局があちらこちらにヘリを飛ばして、被災の状況を伝えてくれるのは、本当にありがたい。ところが感心できないのは、その後である。派手な現場が見つかると、全局がそこに集中してしまう。
被災者と救援に向かおうとしている人が求めている情報は、どこに危機があり、脱出や救援のためにどの道路が使えるかである。
 だから、震源地や大規模被災地を中心に、各局がヘリを別々の道路に沿って飛ばしてスクロールしながら生中継してくれるとありがたい。どの道路が使えるのか、あるいはどこで寸断されていて、どこまでは行けるのかを報じてくれると本当に助かる。今時であれば、GPSと連動させて崩壊箇所を電子地図上に表示することは容易だし(今回、これをしたテレビ局は一つもない)、カーナビに情報を送って、被災地への到達可能ルートをナビゲートすることも可能なのだが。
 こうした地域に有用な取材放送ができない理由は「絵にならない」から。崩落や事故や泣き叫ぶ人の姿がないと全国ニュースの素材にならないので、キー局から叱責されるからだ。
 地方の民放テレビ局は、広告売り上げの激減で、経営破綻状態にある。存続できているのは、キー局の番組を放送する電波料で「食わせてもらっている」から。金づるの意向には逆らえない。
 そこに放送規格として失敗している地デジがダメを押す。なにしろ、田舎では地デジは映らないのだから見ようがない。キー局発の全国向け番組ならば、衛星経由で受信すれば事は足りる。
 もはや用済み扱いされそうな地方の民放テレビが、「公共性」を根拠に生き残りを図るのなら、せめて災害報道くらいは、地元被災地への配慮を優先しておいた方が良いでしょう。でないと、お膝元の視聴者から、地デジへの公的資金注入に反対運動が起きます(終)。

 この原稿以上にさらに構造的でつっこんだ話が前出『マーケティング・リテラシー』では紹介されています。関心のある方はぜひとも手にとってください。

 今回はテレビ局のようにまさに枠を貸す(ある民放はビルを貸したりもするが)だけということになりかねないので、少々身辺雑記を。
 17日火曜日は、出勤途中に「宮崎勤死刑執行」というニュースを聞いたので、死刑執行される刑場がある小菅の東京拘置所へと向かう。ここにはオウムの元教祖もいる。
なんでこのタイミングかなと思いつつ、なにもなくとも同じ空気を吸うべえと、そのまま新小岩駅で電車を降りてタクシーを拾い平和橋通りを走って拘置所で下車。2300円也。
久しぶりに来たこの場所には死刑反対運動グループ、出棺待ちのメディアがいくらかいるだろうと思ったら、週刊誌のデータマンらしき記者が一人いるだけ。
あれれ?? 
死刑執行をした刑務官は、午後の仕事はせずに昼で帰ると確か元刑務官の本に書いてあったなと思うが、校了日だし、そこまでは張れないと会社へ。

早速、ネットでテレビ局のニュースをチェックするともちろんこのニュースには触れているが、鳩山邦夫法相の発表会見の映像が中心。しかし、どの局も「中継」とうたっている。なんのことはない、法務省前から「中継」しているだけなのである。
現地に行ってもなにも変わった映像を撮れたりはしないが。
「20年も前の事件だし、宮崎勤の事件について考える時間などもったいない」という空気を感じる。事件発生後の過熱報道にくらべると、あまりにもあっけない幕引きである。
少々、反発して想像してみる。
結局、宮崎勤はどのような姿で、あの場所を出たのか。   (一部敬称略)
(平井康嗣)