きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

エコプチテラス最後の日

4月6日日曜日、足立区六町に六町エコプチテラスを訪れた。

前日の5日にエコプチの責任者である平田ヒロユキさんから、「エコプチテラスが閉園することになりまして、明日は最後の菜の花祭りを開きます。どうもありがとうございました」という、電話をいただいたのである。

ええっ! 明日で終わりだってー!

日々の取材にかまけていたため、力を入れてやりたいと思っていたエコプチテラスが終わりとは知らず。おおむね、力むほど掲載が遅れる傾向にあるのが僕の悪い仕事習慣である。しかもお礼をいただくほど、たいして役に立つこともしていないというに。

ものすごい後悔の思いも混じりつつ、翌日は、とりあえず10時30分に足立区六町のエコプチにかけつけることにした。電話をもらえて本当によかった。

ところで、なぜ、このエコプチが閉園になるかって?
それは神社が移転してくるからである。
この六町という場所はつくばエクスプレスという電車も開通した再開発地域。それで、空き地だらけになっていてその空き地に新しい建物が建つのを待っている状況なのである。
その未利用地を利用したのがエコプチテラスという足立区のプロジェクトなのである(詳しくはホームページをご覧ください)。

しかし、この神社移転はただの嫌がらせとしか思えない。というか嫌がらせでしょ。
再開発でほかの住宅は手つかずだったりするのに、神社だけ計画を早めてこの場所を爆撃するように移転してくるからである。
地元の自民党都議がやってくれましたよ。まったく。
なにがチームマイナス6%やねん。

このような不明朗な手続きがあるために、代替地の提案をされたものの、エコプチのひとびとはそれを断った。そして閉園へと至ったわけです。筋が通らないということなのです。

さて、ダークサイドに心が引き込まれそうなになりましたが、気を取り直して本文へ。

日曜日は、エコプチには晴天で黄色い菜の花が一面に咲いていた。キウイ棚は収穫が12月に終わっているそうなので、もはやつたが絡まっているだけである。
あらためて、首都高を背後に臨む東京の一角にこんな光景があるのかとあらためて思う(写真がなくてすみません)。
ここは、エコプチができなければ、ただの開発予定地の空き地だったのである。
変われば変わるものだ。

とにもかくにも、エコプチが終わってしまうということは残念である。
マカロニ総研の67回目後半でも触れたが、エコプチテラスはめちゃめちゃ画期的な試みだった。
ここで詳しく述べることはスペースの都合で避けますが、テレビや新聞でも再三とりあげられていたことを見ると、共感を覚える記者やディレクターはさぞや多かったのだろう。

超訳していえば、ともかくエコプチテラスは、町おこし、食育、高齢者問題、地球温暖化、農業、再開発問題などさまざまな問題を、この元空き地で五年半かけて解決していたように思える。「問題」というのはかなり消極的な表現だな。エコプチはマイナスをゼロにするだけでなく、多大なプラスをもたらしたように見える。
その一方で、行政と政治の救いがたい弊害の縮図もまざまざとみせつけた。だから、日本は政治でよくならない。

手前味噌だが、ぼくは金子勝慶應義塾大学教授と日本全国を回ったことがあり(とっていっても北海道から宮崎までの5カ所)、『金子勝の食から立て直す旅』(岩波書店)で、いくつかのリポートを共著で発表させてもらっているが、エコプチの試みはそこでとりあげたかった。(残念ながら、連載が終わってから、エコプチに出会ったのである)

住民の人たちがあくまでも主体的に楽しむ場所を提供して平田さんという逸材がいたから、エコプチは成り立ったのだろう。
実のところ、平田さんは環境問題の専門家であるので高邁なことを語ることもできるはずだ。でも難しい言葉や理屈はいったん横に置いて、こどもでもおじいさんおばあさんでも楽しめる仕組みにしていった。そしてもちろん、平田さんがすべてをコントールできるわけもなく、偶然のぶつかりあいの繰り返しでこの場ができていったのだろう。

当日の開会式にはおおぜいの人が訪れ、その後、和気あいあいで、淡々とメニューをこなしていた。ぼくはバーベキューの準備が始まったところで、失礼した。挨拶で平田さんは「今日で閉園ですが、エコプチのたねは撒かれました」と明るく語っていた。

その日の午後は、家に帰り、昨年から借りている農園に行って種をまいた。
ゴーヤ、みずな、かぶ、ブロッコリー、ルッコラなどなど。
土にある程度、種さえまけば、ほとんど野菜は驚くほど元気に育ってくれる。雑草との闘いもあるが、思ってもいないところから芽が飛び出しりもして。
今年の夏もどんな驚きがあるのか、楽しみだ。

【参考サイト】
○エコプチのブログ
http://blog.goo.ne.jp/adachigp

○足立区グリーンプロジェクトについて
http://www.greenproject.net/modules/nsections/index.php?op=viewarticle&artid=25

○このエコプチの伝説はラッシュという会社から助成金も受けて本になるという。
http://www.lushjapan.com/happyshare.asp

○緑の東京10年プロジェクト(東京都)
https://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sizen/midori-10nen/index.html
東京都環境局は「緑のムーブメントを起こしていかなければならない」と掲げるが、実際は街路樹をやたらと植えたり、芝生を屋上に貼るとはばかり。いま存在する緑を潰して新しく植える(だけ)ことを繰り返していて、ムーブメントは断じて起きないだろう。もっと、自分で「育てる」という経験を仕組みにいれないとダメなんじゃないの?
計画をしっかり決めるということは、結果や効果も最初からがっちりと決めてしまうことになる。
自主的な行動から生まれる偶然的副次的な効果や驚きも、当初の計画に縛られてはそのようなもっとも重要な「果実」が想定外のものとしてスポイルされていくものだ。
東京都はプランを決めて認めてカネを配ってやるぞ、みたいな仕組み以外を認めた方がいい。業者がやるべきことのたんなるアウトソーシングにすぎないのではないでしょうか。東京都に限らず行政の言うところのボランティアは、ほぼ「ただ働き」という意味と同義語に思えてならない。 

【反省】
マカロニ総研67回で、谷村智康さんのミクシィ話を書き、リンクを張りましたが、ミクシィは会員制サービスなので、参加していない人はサイトが見られません。ミクシィに参加してない読者から「見られない」とのご指摘を受けましたので、説明不足だったことを反省いたします。
(平井康嗣)