きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「夏野」__金曜俳句への投句一覧
(6月26日号掲載=5月31日締切)

夏野は文字通り夏の野原です。百草が生い茂り、草いきれでむせかえるような野原です。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2026年6月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、堀田季何さんの選と比べてみてください。

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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【夏野】
夏野ゆく見えぬ海まで指呼の間
雲ひとつ影もひとりの夏野かな
お遍路の背の浮いてゆく夏野かな
消毒の匂ひの奥に夏野あり
スターバト・マーテル響く夏野かな
山を父海を母とし夏野ゆく
一風に髪をなびかす夏野かな
夏野駆け漢ふつうに会いに行く
衰へも育ちもせずに大夏野
五月野に立ち根の国を踏みしむる
血に染まる夏野を想う夏野にて
アルバムを閉ぢればひらく大夏野
ねぶる波かきわけかきわけ夏野行く
このへんないきものはまだ夏野の夜
白杖へ風広がりて夏野澄む
夏野発つ扉にNever More記し
また君に愛告ぐるならこの夏野
大夏野ぽかりぽかりと雲低し
革底の靴に限つて大夏野
夏野から賢治好みし南部富士
しがらみを振払ひ立つ夏野かな
夏野原スケッチブック広げたる
夢だけど夢じゃなかった日の夏野
大山寺児童公園夏野かな
夏野原いのちの匂ひ欲しひまま
花も咲け星も輝け夏の原
夏野割るど真ん中なる高速道
眩しくて手庇ししての夏野の野
はじめから空はおほきく大夏野
開拓の夏野にたれも戻らざる
夏野原モノクロ印画紙消えた赤
祖母だけの小さき宗教夏野の香
この夏野のここに爆弾落ちました
保存良き化石を探し夏野行く
鉄軌道定規で引きし夏野原
絶望の対義語はこの夏野原
いつの間に歩幅のびゆく夏野道
夏野より出る命の夏野に死す
大夏野にドクターイエロー待つ子かな
病室の窓に手を振る夏野の子
輪唱や山賊の歌夏野行く
底のなき壺に入れらる夏野かな
かつてそこに澄みし塔あり夏野かな
今を生きる夏野駆けゆく自分探し
街に棲み遠く夏野を思ひけり
戦乱も夏野となつて沈みゆく
夏野から外は大山小山かな
夏野過ぐ父のすべてに頷きて
木魂して夏野に消ゆる叫びかな
魂のぬけがら白き夏野ゆく
木の影をひとつ置きたる夏野かな
母と来て一人となりぬ夏野かな
椅子一つ置けば舞台となる夏野
起伏してひろごりゆける夏野かな
ナースコールのベルの向かうの夏野かな
夏野とは終はりの姿ではないか
アトラスの爪先ほどの夏野かな
なゐの跡今は青野に覆われて
夏野原少年少女逃げおほす
野球帽駆ける夏野の暮れはじむ
手に残る異国の硬貨夏野原
神のゐる山のかたちぞ大夏野
丈超ゆる草払いつつ行く夏野
デスクワーク終わる解放夏野原
前を行く父を追ひ越す夏野かな
お大事に一言で晴る夏野かな
追憶のほどけてゆけり大夏野
光降るゴッホのいない夏野ゆく
白々と廃寺の礎石夏野ゆく
瞼から溢れにけりな大夏野
あちこちの夏野に眠る不発弾
切先の鋭き葉になやむ夏野原
夏野行く木道の果て至仏山
地下深く活断層の夏野かな
夏野ごと消えてたとへばニルヴァーナ
君の血の中では黒い夏野の死
夏野見て散歩の速力早まりぬ
夏野ゆく石投げられし九条碑
沖縄の夏野を西に戦闘車
金ローの地続きにある夏野かな
パレツトに白青緑夏野かな
好きなだけ夏野を進むスニーカー
夏野道車椅子押す背の細さ
一本の径もうやむや夏野かな
一歩二歩三歩夏野へのまれゆく
紛争地夏野に地雷ある悲しみ
窓秋の白き夏野が見つからぬ
PTSDを背負って夏野に立つ兵士
大夏野えくぼのやうな池ふたつ
コンタクトレンズ怖がる吾の夏野
ゆつくりとをれぬ夏野やスーツ着て
田を見詰め歓声家族夏野かな
寝ころんで夏野の底は空の底
どんどんと夏野に逃げるところなし
彼の人を夏野に待てる小さき椅子
足裏より柔らかなるも夏野かな
とりどりの影を放てる夏野かな
夏野へと迷ひ込みたる童かな
寝転びて背を掻く馬や夏野原
名を呼ぶな夏野の法に従ひて
風も緑炎も緑夏野ゆく
廃屋のブリキの玩具大夏野
海鳴を眼下に夏野暮れなむと
大いなる夏野の果てに待つものよ
白髪を束ね夏野の影法師
広々と風を容れたる夏野かな
教会に走れメロスよ夏野原
夏の野にゐて幸せできりきりす
眼前に故郷のにほふ夏野かな
大切に拾ふがらくた夏野原
著るき道の延々とあり夏野原
検温の数秒間や夏野燃ゆ
当つるもの無くて夏野の音叉かな
懐かしき風の吹きたる夏野かな
墓標なき餓死の兵士の夏野道
髪を結ふ指の隙間の夏野かな
虎杖の背丈ほど夏野歩けり
帰られぬ生家を呑みし夏野かな
賑やかに葉ずれの囃す夏野かな
熱気球乗れば地球の大夏野
夏野原ガザの顔なく日々凡々
甲子園五つは入る夏野かな
骨壺に揺られし帰還夏野行く
夏野抜け朽ちしトーチカ銃眼孔
五月野に妙な煙の立ち上る
優しさの教へてくれし夏野かな
夏野ゆく大噴火までの待ち時間
ワンマンの二両編成夏野原
太陽の引力増して夏野かな
夏野ゆくそのひとの碧き眼球
注射終へ夏野の風と深呼吸
我々は断固夏野に火をつける
捨てし子のゆりかごとなれ夏野原
すぐそばに殺生のある夏野かな
風呂入れど取れぬ夏野の匂ひかな
日に向かふ夏野は蒼き海ならむ
美しき夏野の雨でありにけり
際限なくひろがつてゐる夏野かな
逃れ来て息ふたたびの夏野かな
遮断機の鐘の音残す夏野かな
ジャパニーズロック舐めるな大夏野
夏野原一番乗りの赤子かな
どこまでも広ごる夏野牛のたり
高濃度酸素産声夏野原
影の無き夫を追つ掛く夏野かな
元兵士は夏野で心の傷癒す
大夏野富士の高さを支へたる
馴染みなるマルハナコバチ来庭夏野
牧羊犬夏野に吠えて駆けて風
食ふものも食はるるものも大夏野
そよ風に夢と夏野の真間ん中
蜥蜴呑み蛇を隠さむ大夏野
御陵の地に拡がりぬ夏野かな
牛の尾の揃うて揺るる夏野かな
かしましきパッケージツアーの夏野
処方箋めくる手元に夏野風
大夏野牛の目優し塩くれ場
鹿の目の蒼く濡れたる夏野かな
生きものの匂ひに噎せる夏野かな
売地札ばかりの夏野つづきけり
幾千の生類ひそむ夏野かな
国籍のなき夏野にて晶となる
窯跡に小花零るる夏野かな
人にだけ見えぬ風棲む夏野かな
あくまでも夏野の風のあをあをと
あまりにも無防備なりき夏野立つ
夏野往きけもの道より引き返す
陰踏みてやけにさみしき夏野原
夏野にもサイゼリヤ有り歯医者有り
立漕ぎの少年風を切る夏野
ホーメイの倍音ざわわ夏野揺る
あちこちに水の音聞く夏野かな
幾万の骨抱く夏野風の声
青野来て身内の鍵のはずれし音
マネタイズ出来なくて良い夏野かな
万引きの母許しゆく夏野風
吾の骸横たわつてゐる夏野
ミラージュの街よ夏野よアリアかな
ブーメラン還らぬままの夏野かな
夏野行くバイクに墨染の法衣
夏野ゆく負けず嫌ひの友と来て
日の丸も国歌も不要夏野かな
リフトより夏野へわつと大ジャンプ
なんこうねん夏野めざしつ旅路ゆく
幾千のいのちの燃ゆる夏野かな
戦場は遠く夏野に遊ぶなり
二代目の語り部と立つ夏野かな
黒雲の押し潰したる夏野かな
声限り出せども揺るがぬ大夏野
窓秋の夏野探しに外に出る
車停め降る夏野の香満タンに
夏野ゆく心の襞を伸ばしつつ
夏野から夏野へ渡る板つきれ
夏の原空き地にあらず人の住む
名も知らぬ虫のありけり大夏野
東西に陣幕揺れる夏野ゆく
兵隊さんの亡霊が夏野行く
吾は風少年は鳥大夏野
夏野光体位変換息近し
潜水艇浮かび来そうな青野かな
ただ石を積むだけのこと大夏野
夏野行く子の指先に日は沈む
赤屋根のサイロぽつんと夏野かな
夏野には鳥が素早く鳥を追ふ
大夏野やがて倒るるからだかな
幼きの冒険夏野草の丈
草波にわれ孤島なり大夏野
テムジンの夏野へ黒き犬放て
夏の野に会うた二人の子を夏野
思い出の欠片もなくて夏野かな
山二つ抜けて夏野の川となり
夏野行く片アイゼンや錆びてあり
いつの間にパクチー茂る夏野かな
夏野抜け野鳥図鑑の森に入る
並口のスケッチブック大夏野
夏野ゆく錆びし硬貨をそのままに
目手術を終えて青野の広がれり
古井戸や夏野に遺る深き闇
紛れ込む人の命や大夏野
夏野には夏野の色の風渡り
夏野原吾子は走りて父は寝て
膨らんで夏野へ向かうバスの席
大夏野寝転ぶとこが空の臍
証票の返還開けたる夏野
水俣のうをひかりて夏野澄む
吠え募る牧羊犬のゐて夏野