きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「甘蔗」__金曜俳句への投句一覧
(11月24日号掲載=10月31日締切)

「甘蔗」は、「かんしゃ」「かんしょ」と読みます。砂糖黍のことです。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2023年11月24日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

電子版も発行しています

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【甘蔗】
墓原を出でてまばゆき甘蔗畑
甘蔗焼く煮るより栄養多いかも
一本の蔓のみちびき藷探る
蒸し甘薯割れば黄金の肌を見せ
変はつてるは讃辞さつまいも温し
甘蔗刈り無口になるしか術がない
土埃立てて軽トラ藷運ぶ
荒れ果てた甘蔗を抜ける波音や
キックして甘蔗に触れぬ技術かな
甘蔗かじる人間は脆き月
甘藷かな土の中から紫の
デザートに甘薯こふきが定番なり
午後のベル指先黒しふかし藷
戦争は海から来る砂糖黍
甘蔗刈る音は海へと刺さるらし
その腕に抱き取られゆく甘蔗
甘蔗畑大人の鬼ごっこ
働けば甘蔗一本差し出せり
沖縄に日本の歴史さたうきび
島人の背負ふ甘蔗の夕まぐれ
刈り込むる甘蔗の仇の腕の傷
人柄は甘蔗のあまさウチナンチュー
騒つく島鼠となつて初甘蔗
甘蔗刈つて青空すこし厚み増す
戦いに血塗れとなる甘蔗かな
甘蔗なる蜜の誘う茂みかな
甘蔗ざわつくラジオ聞き取れぬ
甘蔗踏み付け折つて食べる象
甘蔗ふるさとを問ふタヒチかな
さとうきび伸びて広がる地雷原
口角の切れて血の味さたうきび
砂糖黍噛む子やずつとこつち見て
どこまでもどこまでも青甘蔗
甘蔗刈る鎌に羽虫のまつはりぬ
歯にささる甘蔗かじりて遊びし日
大鍋に甘蔗煮詰めて唾を飲む
早起きの旅の遠景甘蔗畑
甘蔗そよぐ見え隠れする水平線
日の下に甘蔗真横に持ちて噛む
甘蔗切る兵士の倒る規則あり
甘藷掘り本家の嫁といふ立場
一塊の風に甘蔗の鳴りきりし
ほかほかの甘藷がぶりと母娘
風渡る甘蔗の裏葉翻し
甘蔗畑に隠れ出て来れず
一島の散髪をせし甘蔗刈り
土落とし太き甘薯の包焼き
甘蔗踏み付け鼻で振る子象
きび糖や甘さの影に辛苦あり
甘蔗積む車甘藷のお侍
どこまでも育ち続ける甘藷かな
甘蔗見る風の重みを背に受けて
甘蔗刈り沖に浮く島遠望す
一行の戦史に向かい砂糖黍
山積みの奴隷市場の甘蔗かな
甘蔗畑に錆びし不発弾
ぬつと出る甘蔗畑の戦闘機
甘蔗仔馬の歯音清々し
孫抱き上げてなほ外る甘蔗
穏やかな風に戦げる甘蔗かな
甘蔗しがむ摩文仁の丘晴れて
基地の子と呼ばれ甘蔗の丈高し
甘蔗食むじわりと汁の音の沁む
甘蔗刈り海に開けて基地現る
砂糖黍島にも冬の来ることを
原色の夢をみてゐる甘蔗かな
パンチする甘蔗は意外とタフなもの
収穫の轟音甘し砂糖黍
甘蔗の厳しい母の優し味
身の丈を越えるそよぎや甘蔗刈る
果ての無き甘蔗畑に迷ひけり
甘蔗刈るや十三画に書く平和
初垂の雫一滴黍に酔ふ
讃岐原甘蔗が守る命あり
サトウキビ海は今年も激怒する
ザワワとしか聞えぬ甘蔗一面に
砂糖黍これ竹ですか?絶句する
島の子の甘蔗の丘のハイジめく
鞭を打つ浅知恵甘蔗畑
軽トラにたんと山積み甘蔗
甘蔗畑の中に何かゐる
甘蔗刈るや一本ごとに開く空
初物の甘藷洗い絵手紙に
さとうきびこんなホテルにも聖書
大男見上げる丈の甘蔗
海からのひかり甘蔗を飛びうつる
甘蔗刈り軍用機行く秋高し
いちめんの甘蔗畑に風のをと
甘蔗丈けてこども園児隠しけり
簡単に武器になります甘蔗
分け入ればよほど波音する甘蔗
エイサーの声を遠くに甘蔗刈る
風生える方へ伸びゆく甘蔗かな
甘蔗敵味方なく秘めてほし
甘蔗ヤマトンチュとふ罪が在る
涙して甘蔗食べをり母の横
新聞紙包む甘蔗の夜も更けて
甘蔗揺る離島フェリーのドラの音
潮風を抱いて甘蔗のよく伸びる
幾度でも頭を下げる甘蔗かな
かくれんぼ黍畑の声消えてゆく
甘蔗おばあの墓へ二三本
武蔵野の土の匂ひの甘藷かな
赤土を戦土とさすな甘蔗植う
甘蔗刈る土に戦の錆のあり
甘蔗刈つて小さき古祠飛び出せり
保護犬や甘蔗の里はもう忘れ
少年の甘蔗食らふは鷲掴み
甘蔗吸ふ灼けし陽射しの香と味覚
甘蔗畑刈り尽くしたる労苦あり
泥化粧落ちば紅顔甘藷かな
甘蔗刈るや基地のフェンスを通る風
折り合いをつけぬ一事や砂糖黍
ガキの頃一度齧った甘蔗かな
甘蔗噛むざんばら髪の子どもかな
弓なりのさとうきび子ら引きずりぬ
さたうきび畑に風の濾されけり
砂糖黍あなたの町は寒かろう
甘蔗剥くや沖行く笠戸丸
進路どうしようか甘蔗を噛む
甘蔗海風わたるうねりかな
ざわざわと甘蔗畑のこゑを聴く
一湾を統ぶるやさとうきび畑
甘蔗刈る奥に顔出すキジムナー
長々し水栽培の甘薯蔓
さとうきび強くかじれば真白き歯
刈り了へし甘蔗を洗ふ島の井戸
幼子を背負い甘蔗の影を踏み
甘蔗畑ジープに巨きキスマーク
この島の疲労補ふ甘蔗かな
二階建てバスより高し甘蔗
甘藷を懐紙につつみ婆野点
いい気味な空の鳥見て甘蔗かな
藷堀や畝に居並ぶ体操着
丈夫な歯甘蔗の茎を食いしばる
林立す甘蔗一列毎に刈る
あの頃からずつと貧乏甘蔗
甘蔗煮詰めて重き島の風
甘薯煮やレモンイエロー染まり出づ
基地の島茎まで甘き甘蔗
甘蔗食べ歩く気力が湧いて来る
甘蔗かじる丈夫な歯が欲しい
一島を剥がし了へたる甘蔗畑
砂糖黍畑黙つて歩きけり
熱風の甘蔗畑へ急な慈雨
一島を統べるがごとき甘蔗かな
反戦の畑に植えたき甘蔗かな
ほんとうは藷の天ぷら大好物
素通りのできぬ戦跡砂糖黍
乗り継ぎて父抱へ来し甘蔗
チャンバラに飽きて蹴倒す甘蔗かな
夕風を炙る大地の甘蔗かな
兵隊さんが通る砂糖黍畑
甘蔗刈るアメリカ世(ゆー)を知る嫗
昆陽の熱甘く結して甘蔗
甘蔗刈る姉さん被りのおばあどち
砂糖黍しがみて午後の骨惜しむ
火の酒の苦き強さや甘蔗