兼題「通草」__金曜俳句への投句一覧
(11月24日号掲載=10月31日締切)
2023年11月20日11:16AM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
通草は、山野に生えている蔓性の植物の実です。郷愁を感じますね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2023年11月24日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです。
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予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【通草】
餓鬼大将みすごしてゐる木通かな
かたちより匂ひでさがす通草の実
思い切り裂けば通草の呻く声
通草弾け少年の鬱粉々に
アトリエに昏く置かれる通草かな
通草見て公園抜けられぬかもしれず
通草の実餓鬼大将を懐かしみ
列離れ通草見つけて寄りにけり
この上は鳥の分け前木通の実
移植した本人逝きて通草なる
垂れ合ひて樹間彩る通草かな
採り頃の通草見定め通学路
この上の通草取らねば地に吸はる
少年の日の山歩き通草の実
雅なる紫色にあけび熟れ
棚作り通草植ゑたき都市の庭
教室はあけびの蔓の籠作り
通草採り種吹きながら帰路遠し
凄凄と空をひらいて通草の実
一センチ右手届かぬ通草かな
通草の実遠きかの日を手に抱く
正直になれと通草が割れている
通草てふ巻こそ源氏物語
祖父や径それて通草をもいでをり
通草の実システムキッチン曇りたる
エントランス飛び出すあけびシュールかな
うつくしき偽筆の傍に通草置く
猿の奴今年も先採る通草かな
この村は消滅するといふ通草
通草垂れが~まるちょばという名前
通草食べられないのかも鈍る足
通草垂れ山処の子等の案内好き
湯の宿の呼び鈴めきぬ通草かな
来ぬ鳥を待って通草の実の笑う
みちくさを誘ふが如く通草かな
指細き少女の眠り通草かな
異母妹と契る秘密や通草の実
夕空の淡し通草をうしろ手に
暗がりに開く通草の白き口
裂けて叫ぶ木通ムンクの木通よ
故郷の友の便りやあけびの絵
通草の実たまたま今日は雨である
恋の句は朱筆を入れず通草熟る
通草食う種は危うき房なして
通草喰ひ遊びこころに種子飛ばす
通草食ふ舌に残るは異なる種
誘はれて海の子山へ通草採り
主事さんに通草を三個もらひけり
静かなる山家に通草育つ日々
山頂を麓に仰ぐあけびけり
兄すべて亡くせば軽し通草の実
抱き上げて笑顔の吾子へ通草割れ
街中でひょっこり出会いし通草かな
媼らは通草さがして山に入る
生垣に絡む通草や白き口
ティラノサウルスの口のごとアケビ裂く
山里に一輪車行くあけびかな
垂れて居る通草触れたら先は無し
店先に通草のむらさき残りたる
会報に友の一言木通開く
覗かるるために割れたる通草かな
口開けてにぃーと笑うあけびの実
手仕事の籠皿机通草食ぶ
通草裂け本音を腹に貯むる種
出来立ての傷を見下ろす通草かな
盃に揺るる木漏れ日木通棚
待ち侘びる末は笑はぬ通草かな
通草の実あまさは原罪の如く
あきらめし頃に見つかる通草採
さて木通一組のみの泊り客
口づけのやうに啜るや通草の実
別れても別れぬ心通草熟る
通草採り見覚えの道戻りゆき
献上の通草選ばれ桐箱に
児は恐る恐る噛みたる通草かな
ゲリラのごと通草ひそめる山歩く
木通熟れ猫のおなかの心地かな
通草てふ童心回顧装置なり
鳥低く飛べり通草の黙る空
城までの道の険しき通草熟る
中指の先のみ届く通草かな
迷宮の出口だらうか通草の実
通草にも歌つてあげる「七つの子」
尻餅をついて見上げる通草かな
通草熟れ明日は床屋に行こうかと
口づけのように通草を食べている
軽トラの轍に裂けし通草かな
通草割れ人恋しきや里の山
通草垂れブルターニュめく丘陵地
通草の実豆腐小僧に運ばせろ
弧を描き宙へと伸びる通草かな
山路来て二つ三つと通草かな
野仏の腰の高さに通草積む
通草割れ大地のどこまでも広し
通草熟れ夜は濁酒の坊の宿
山遊び手に取る通草縦に割れ
夫れ通草年増の如く開きをり
通草熟る神の宿りし森深く
紫の宝石垂るる通草の実
銅山の坑道跡の通草かな
木通喰む小さき不平を漏らしつつ
これでもかこれでもかとさらす通草
通草の実食べられるのと山の子が
御八は無しと母激怒通草捥ぐ
道の駅店頭飾るやあけびの実
垣通草盗った幼年許されよ
むらさきにやうやう慣れし通草かな
死してのちくちびる光る通草かな
杣道に裂けはじめたる通草かな
迂回する公園内で見る通草
紫の冷たき通草割り切れず
通草の実清き半紙に包まるる
大口の開かば白い歯通草かな
段丘のやうに通草の割れにけり
通草熟る彼方に水素ステーション
夕闇にどこまで熟れる通草の実
口あいて木霊吐きたる通草かな
歌垣のめぐしもな見そ通草の実
通草爆ぜ怯む事なき烏かな
宙吊りの手榴弾やも通草かな
遠景に琵琶湖の町や通草濃く
薬莢を口に含んで通草かな
帰り道包んだ通草持ち直し
通草食ひながら宇宙の話など
二人して捥ぎし通草の谷に落つ
大雨の饐えし匂ひや通草熟る
父言ひし通草の色や今ここに
一張羅あけび色なる江戸小紋
通草の実仰げば朝の風の蔓
通草の実誘ひくる女のやうに
放念の高さに熟るる通草かな
都会捨て通草の村に住みにけり
他所行きの顔で一言通草落つ
通草の実手になじませてからのこと
あんぐりと日中子等待つ木通かな
通草揺る風の気配のあらねども
通草食む母乳の甘さ血の甘さ
季語と知り近くから見る通草かな
通草熟れ減便決まる連絡船
通草熟れ十六歳の得度式
精気失せ通草ごろんと店頭に
腹蔵なくとは通草はじけるごときこと
通草裂け自然に縦も横もなく
あっ通草いつもいつも君がみつける
糠雨が色をつけたる通草かな
奥羽路の道深ければ通草熟る
物言はぬ通草の口の一文字
指反りて文字書きづらき通草かな
あけびみておんなじやうにわろてみる
木通生る庚申塔を白く染め
木登りは御手の物なり木通採る
庭先で通草をもげば山の中
ゆゑもなく斜めに裂けて通草かな
ターザンは通草の蔓にぶら下がり
山中にわろてる通草見つけたり
あんぐりと口開け通草の実たわわ
ぱつかりともはや蛻の通草かな
それ以上何を曝すや通草の実
山入るる子らの両手に通草かな
絡むのはフェンスの通草除去できぬ
町の子に山の子教へ通草取る
黙念と苦い通草の種を?む
雲晴れて遠き通草に手が届く
青ざめし通草わが家は土臭く
昏れ方を知らぬ子どもの通草狩
通草もぐネイルの色の毒毒し
見えてゐて行けぬ所の通草かな
通草の実爆ぜて真昼の闇深し
もう一つ種吹きながら木通?ぐ
みちのくの入日に揺るる通草かな
罅ぜ通草夜の厠に吊るしをり
通草熟るなべて足場の悪き場所
目を付けし通草を鳥に攫はるる
青空に四の五の言はず通草熟る
宿坊の夕餉の膳の通草かな
通草熟れ鳥語の解る学と分け合う未亡人
【冬支度】
せかせかと頭の中だけ冬支度
移り行く野山色変ふ冬支度
【檸檬】
初成りの庭の檸檬を慈しむ
レモン噛む身縮めして顔しかむ