きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「種物」__金曜俳句への投句一覧(2月27日号掲載=2015年2月2日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2015年2月27日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【種物】
種物屋探す新たに居を定め
母ありて種物にさへかける声
北国の種物の店閉じたまま
種物屋市場の隅に生き残る
潮風を招き入れたる種物屋
種物やイギリスみやげに届けられ
種袋買ひてフェリーの客となる
物の種に声かけて蒔くあまた蒔く
小松菜や微小種物頼りなき
種物の袋並んで日受けたり
売る気などなくてそれでも種物屋
種物を買って当てようハワイ旅行
種物やボッティチェリ思い袋見る
花種の欠片に小さく息をかけ
引き出しの種物これは何だっけ
古書店の主人にもらふ花の種
荒物屋のおまけ婆より物の種
種袋配られミサの終わり告ぐ
大輪の写真を並べ種物屋
ポケットに軽き種物買い求む
園児等の種物買ひの列長し
種物屋とだけ言ひたる店構へ
種物やジャックの豆の木夢を見て
繰り返す日々の余白や花の種
生きている気配の音や種袋
種物屋その両側は花の道
蒔く宛も無きままに買ふ種袋
種物屋素通りすれば運悪し
売れ筋の種物はレジすぐ隣
種袋移転激しく無くなりぬ
虫を喰ふ花の種売る女かな
蒔き終えて目印となる種袋
咲き誇る写真を指して種物屋
種袋根も葉もなきを封じ込む
堆肥混ぜ種物買うや空青し
花種の未来予想図走り出す
ひと振りに千のいのちや種物屋
もの種を選び幼くなりにけり
種袋耳朶に聞く物語
去年までは種芋を手に笑顔あり
種物や微塵の影のまた微塵
花の種蒔く横顔を見られけり
麺はしめ出汁は熱つい種物に
種物も配達便に包まれる
種物屋留守番役の婆と猫
億年の進化の果てのものの種
種袋いちおう振つて封を切る
古民具に吊り下げられし種袋
種売を他人に任せる事に違和
花壇から逆さに生ゆる種袋
とりどりの種物選ぶ教師かな
種袋徒手空拳といふ力
種物や保存食より愛しかり
迷ひ猫の写真も貼られ種物屋
葉と花と実も写真にす種物屋
粉もんの店にはさまれ種物屋
マンボなら不意にマラカス種物屋
種袋入りの封書の届きけり
店頭は百花爛漫物の種
一袋は屋根裏にあり種袋
種袋振るまでもないが振る振る
種物や夢が詰まってゐるやうな
呟きて母の蒔きたる花の種
種物や京野菜たち復活す
店頭に少しふくらむ種袋
物の種蒔きし日の夜の雨やさし
種物屋街から遠き場所にあり
黒い粒ヘソから出して種物に
子が親を親が子を殺す種物史
トイレットペーパー種物特売に
幾百年城下彩る種物屋
物の種祖より受け継ぐ命秘め
花種を声かけながら撒きにけり
音もせずまことにかろき種袋
日溜まりの戸板に広げ種袋
種袋折りて挿したりプランター
種物屋天然色の目録よ
本年はこの種物に望みかけ
暖かき日差しに脹る種袋
万物の創にありき物の種
種物屋旧街道の宿場町
星屑を集め種袋に入れぬ
種蒔く子慈心もともに育ちけり
種物の並ぶ店先華やげり
花種に知らない花の名を選ぶ
種物屋モーツアルトの次ショパン
吾が湿り種物目覚めさせたるや
暗黒を耐えているのよ種物は
チョコレートの箱に種物仕切られし
種物や秘めたる命吾に恵め
看板の「種」一文字の老舗かな
種物や明日の風向き気に掛り
マッチ箱に数年前の物の種
八百万の神様のいる種物屋
毛筆で書かれた種物の名前
老女(ばば)せ(急)かず吊し忘れた花の種
ビルとビルはざま動かず種物屋
松島の小島より来し種物屋
神々は種物なりや種子島
千歳てふ屋号守りて種物屋
店ぢゆうが褪せたるやうな種物屋
種物になりたい自分聞いてみる
種袋羊頭狗肉四字熟語
種物と写真写りのいい女
種物は何でだいたい黒い粒
種物がおじいちゃんの引き出しから
物種の眠れぬ夜は音立てて
花好きの住む人多し種物屋
花種を買ふや人の死遠くなり
種屋前といふバス停次は車庫
惜しむらくは播種を逸して逝かん事
【その他】
天孫降臨の地より蕎麦くる寒見舞
嫁ぎ来て覚えしことを今語る
老いてなお潜るの他は落ちつかず
玉藻刈るあの大腿に照る光
濡れそぼち磯ではなしに香る袖