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兼題「海女(あま)」__金曜俳句への投句一覧(2月27日号掲載=2015年2月2日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2015年2月27日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【海女】
磯海女の息してをりぬ胸と肩
今生を海女と呼ばれて生きてをり
獲りて売る朝市の海女よく喋る
火を囲み海の話よ海女集ふ
磯と沖古代の息吹き海女の笛
若き海女長躯を陸にもて余す
わたつみの懐深く海女しづむ
蒼き海海女の蹴り足眩しけり
海女小屋に女三代集ひけり
水潜る海女は等しく少女なり
新参の海女貪欲に疲れ切る
磯嘆き運がいいとも悪いとも
憧れし空舞ふ天女人魚海女
夫の手を握りたつぷり磯なげき
好物は海女の手の中煌めけり
浜で焚く火の勢ひの海女の顔
波止で見し海女船宿の女将なり
聞かされて驚嘆の声海女の歳
海女たりてふどつと笑へる老女たち
海女の小屋あらき隙間のうすけむり
海女二人遂に増えない不思議かな
甚六の夫のをりけり海女の家
普段着のまま神の前海女の衆
舷に手伸べて海女の嚔せり
名うて海女祈るがごとく息を吸う
性格の不一致一蹴海女潜る
双眸にうなそこの色海女の長
伊勢海老を宙に掲げて海女の笛
浜では海女町では普通の女の子
原発の海あをあをと磯なげき
童顔の海女ベリーショートを梳る
沖よりの丈を競ひし磯なげき
海女の衆来るも帰るも無口なる
貝を剥く手つきも海女であればこそ
村ぢゆうが名で呼びあひぬ海女の道
髪解きて端へ新卒海女ひとり
海女の笛交互に答ふ夫と父
宙返りすれば大きな尻や海女
磯なげき悲哀まだ見ぬ乙女らの
豊饒の海の波間に磯なげき
引綱の男結びや安房の海女
海女の目に自然の掟滲むかに
浮く桶にうすき母の名海女二代
やはらかに沖より暮るる海女の笛
潜水着脱ぎたる海女の若からず
若き海女髪の乾ぬまま保育所へ
海女の村磯辺に庇寄せ集む
うなそこへ開きて閉づる海女の四肢
波たてず海女は蹠を白くみせ
海女小屋の歴史語りて命綱
海女笛に鼻歌もあり夫婦舟
海女着舞ふ水の深みや春浅き
海を出て海女は女に戻りけり
海女達のはなし筒ぬけ火の廻り
志摩の海みずやわらかに海女沈む
山畑の天まで届く海女の村
氏神に一礼をして海女潜る
炉にたぎる鍋に味噌溶く海女の昼
当節は老い人海女の多かりき
つまどひの色濃き村や海女あまた
揃ひたる海女のひざ小僧火を囲み
海女の漁しかとみられて幾星霜
浜に行く海女丹念に日焼け止め
飛び込みの姿勢見事や海女の海
怡土國の海女懐かしや潮満てば
竜宮は胎内のごと海女の笑む
潮染みの磯着干したる海女の小屋
二代目は外連味のなき若き海女
群青の風の満ちたり海女の桶
磯嘆きほんのちよつぴり女出す
高台の風呂賑やかな海女の声
海女小屋に火のくべらるる朝かな
獲れたての物並びをり海女の昼
海女の背や潮の香温し津波跡
夫婦喧嘩引きずる海女の命綱
潮騒や火を飛び越へて海女の胸
磯なげき陸の子どもに届きけり
海女頭多弁に海の怖さかな
夕映えて海女の母待つ子が一人
老いたれど桶持つ海女の背筋伸ぶ
朝食は海で調達する海女ら
あられなき海女のすがたよあをい海
龍宮に入りそびれて磯なげき
磯なげき真珠を海に沈めては
綱張ればまつさかさまに海女潜る
余所目にも海女の血脈布良の猫
鎮魂の海に響もす磯なげき
波音に海女の乳房の逆らわず
舳倉島四肢いと白き海女を見し
海女どちのことに火まろく仕立てけり
こまごまと野菜の育つ海女の畑
ひとしきり海女の笛聞く房州路
海女消えて波に磯樽ただよへり
岩陰に添へ乳の海女や昼下り
曳綱に全てを寄せて海女潜る
海女浮かぶ四囲眺めつつ安らげり
海女さんに会うためだけの伊勢の旅
砂蹴って気合を入れる海女等かな
磯海女の音を立てずに潜りけり
民宿の女将三代続く海女
お互ひにビンタして居る海女等かな
歩み来る海女の肢体のひかりかな
アンデルセンとて見紛ふや海女の鰭
碧海に貝追ふ海女や春近し
磯なげきにもみちのくの訛りかな
沖青く火色濃くして海女の小屋
この磯の漁場をつなぐ母娘海女
地上では饒舌にして海女の宿
海女と我孤立に耐える同志なり
寄せ貝に託されて居り海女の児等
子をなしてより深みけり海女の技
桶に泡海女の生命波揺らす
波連れて海女浮き上がる命綱
汐風に水滴ころぶ海女の肌
海女笑い肩たたきつつ現世へ
海女の笛潮ことごとく統ぶる如
海女髪を乾かす母に戻るべく
若き海女海のとりことなり潜る
木綿なる白をゆたかに海女潜る
糶り落とす海女直々の桶古りて
浮くたびに引綱延びて沖の海女
海女ほどの泳ぎに焦がれ南の海
海女の町鳥羽一郎の出身地
高台に小洒落た旅亭海女の町