きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

金曜俳句への投句一覧(3月23日号掲載=2月末締切、兼題「野焼」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』3月23日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【野焼】
野を焼きて紛ふかたなき益荒男に
草千里割れて展ける野焼かな
冬眠の蛙追い立て野焼する
野焼して地面さまよう煙かな
寡黙なり老夫の杖は野焼追う
男らの影ゆらぎたる野焼かな
淀川を手負となりて野火走る
野焼くらしむらさき匂ふ夜となれり
用水に沿いて野を焼く匂いかな
野を焼くやぬくうなりたる昨日今日
いとけなき子ら走らせて堤焼く
爆ぜながら土手這いのぼる野焼きの火
信州の旅して野焼に出合いけり
稲の株残して燃やす野焼かな
異界めく堤焼く火の向う側
大声の野焼はじまりそうになる
野良着の背野火の匂ひの濃くなりぬ
野を焼いてわが言の葉のあたらしく
音のない野焼静かに見てをりぬ
野焼する人皆生々と弥生人
野焼して地球丸ごとアップデート
青空に野焼の如く焼かれたい
野焼する炎の向うに春の海
ちよろちよろののちに呵成の芝火かな
童らの地に足つかぬ野焼かな
消防車スタンバイして野焼きかな
暮れかかる川面流るる野火の屑
走り出す野火に獣の声生まる
おもむろに配置を決めて野火走る
野火伸びて伸びて縮んでまた伸びて
野焼きあと黒き不在のひろびろと
一山をくすぶらせたる野焼かな
畔を焼く人影長し佐久平
灸を据え土生き返る野焼かな
野火移りゆくを野仏見てをりぬ
途切れなく野焼の先へ行くダンプ
頬染めて野焼見し日の若さかな
二次元を横切って行く野焼かな
ローカル線野焼く煙の懐しき
焦燥の消えゆく如き野焼かな
地の虫よ野焼きそこまではよ逃げろ
萠の里夜空を染める野焼かな
追悼のごとく野を焼く男かな
いにしえの香り漂う野焼かな
畦を焼く黒々とした眼かな
季をめくる畦くろぐろと野焼かな
蝦夷地さてからくれなゐの野焼かな
末黒野に鳥降り何を探しをる
つぶやくやうにはじまれる野焼かな
かの野火はバトンリレーに失敗す
野火果てて火酒流し込む夜となりぬ
たちまちに雨のこぼるる野焼かな
道をなす野焼の先のダンプダンプ
野焼みる人影黒く山赤々と
始まりは煙りひとすじ野焼きかな
野を焼くや理髪店からひとが出る
川土手を舐めゆく炎野焼かな
黒黒と野焼正しく終りけり
山駆ける炎に祈る野焼かな