きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

金曜俳句への投句一覧(3月23日号掲載=2月末締切、兼題「桜貝」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』3月23日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。配送料は無料です。

【桜貝】
寄する波引く波を呑み桜貝
想い出は小さき箱の桜貝
桜貝かつて兵士の陸続と
叱りたる子にし拾はむ桜貝
岸からはわづかに遠し桜貝
大波の連れ損ねたる桜貝
桜貝やはり耳に当ててみる
桜貝海鳴り遠くなりにけり
柩車ゆく轍の跡や桜貝
幼子のおよびかはゆし桜貝
桜貝贈りし君にいつ逢わむ
桜貝より一滴の海が落つ
母からの詩歌の一片桜貝
花嫁の泪潜むる桜貝
遠き日やしのぶ恋あり桜貝
流木に絹糸の雨さくら貝
欠けた者同士となりぬ桜貝
もうなにも耳に届かぬ桜貝
空青くかけら一片桜貝
桜貝ハングル文字の注意書き
ゆらゆらと次の波待つ桜貝
海浜のへんな生きもの桜貝
由比ヶ浜二人で探す桜貝
獏が夢見てゐるやうな桜貝
さくら貝見つけるたびに走り来る
桜貝もう一枚は佳人なり
幼子の指先あわれ桜貝
血の通ふ腹で開けたる桜貝
あはあはと明けゆく波や桜貝
美しき裏の寂しさ桜貝
臍ピアスならば桜貝でだうか
さくらがい死ぬと生きるは紙一重
潮騒をもう忘れしか桜貝
桜貝天使の羽根は作り物
桜貝あの日の波の音を聴く
桜貝拾うはいつも片思い
桜貝と呼ぶ他はなし桜貝
妻に添う夫の歩幅や桜貝
桜貝去年と違ふ砂の色
桜貝千年のちも人類あれ
太初より色さだまれる桜貝
たはむれや酒器に残りて桜貝
コンタクトレンズになあれ桜貝
桜貝紅紅さし指に似ておりぬ
海いずこ机の中の桜貝
手のひらに少し幸せ桜貝
潮騒に目覚める朝桜貝
文に添え都の吾子へ桜貝
桜貝拾いし浜を一人ゆく
拾われてより定めなき桜貝
身のうへをかくも晒して桜貝
引く波を小さく分ける桜貝
波音はあの日と同じ桜貝
桜貝色褪せぬまま溥きまま
人生を始めし頃や桜貝
桜貝のやうなネイルでありにけり
穏やかにユーチューブ歌ふ桜貝
雲のいと高くにありて桜貝
幼子のにぎりしめたる桜貝
熱の子の夢の色なる桜貝
桜貝緩やかに風翻る
見せ呉れて風が奪ひて桜貝
桜貝掌に包み来し波の音
うす紅のはるけき想ひ桜貝
桜貝口ずさむ歌懐かしく
旧友のみな遠くなる桜貝
桜貝生れ生れ生れて殻残す
わたつみの夢の色して桜貝
桜貝拾へるひとのよく笑ふ
粉々に栞られてあり桜貝
桜貝掌に過ぎし日がそこにあり
桜貝ロールケーキを切り分ける
沖縄に一人の友や桜貝
桜貝ちさきよはひを積み重ね
捨てられしごと散りてあり桜貝
一日を晴れつくしたる桜貝