きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

花火大会騒乱絵図

先週の7月20日に、今年最初の花火大会に足を運んだ。
僕の住む政令指定都市は、このシーズンに4回は花火大会を開く。そのため例年、ありがたみを感じず、暑さと混雑が苦手なこともあり、わざわざ出かけたのは2、3年ぶりだった。

この花火大会では毎年、埠頭の倉庫街に特等席を陣取っている地元の友人たちがいる。当日もそれを当て込んでいたのだが、道路を埋め尽くして見物客が座り込んでいるためたどり着けなかった。
花火大会自体は、新作「タマちゃん」もはじけ、音が豪快に反響する倉庫街では大盛り上がりに盛り上がっていた。ここまでは、平和であった。

帰り道、ぞろぞろと群の中で歩いていると、スウェットを着た中年男性2人組が倉庫街を縦横無尽に走り回り、なにやら喧嘩をしていた。というか、坊主頭のおじさんが一方的にもう一人の男性を蹴り飛ばしていた。
蹴られた男性は、しぶしぶと消えていったが、坊主頭は一人でブツブツ呟いており相当カッカきているようだった。僕絡むなよと思いつつ、やりすごし、さらに5、6分ほど先を行くと笛の音が鋭く響いた。

なんだろうと目をやると、加速する白い旧型マークIIらしき車の運転席の窓に警察官がしがみついてエライスピードで併走している。事件か! と僕もなんとなく追ってみると、この車は右折しようとしたスクーターに激突して逃走。スクーターはフロントフォークが曲がり、運転手の男性は呆然として道路に倒れていた。

さらに車は暴走したが、大渋滞であえなく停車した。警察官は追いついたが、ピアスをした坊主頭の若者や作務衣を着た血の気の多そうな連中数人もエライ勢いで追って殴りかかっていた。

現場の事情は皆目わからなかったが、僕は事件に発展する場合をことを考え、野次馬半分ということもあるが、近づいてデジタルカメラで撮影した。
停車した車から引きずり出されたおじさんは真っ赤な顔をして、羽交い締めにしようとする警察官をグーで殴る威勢のよさだった。が、警察官4人がかりであっけなく組み伏せられた。若い連中も、おれにも殴らせろ的に突っ込んでいったが、警官に制止されていた。
だが、サングラス坊主の作務衣はフロントグリルが破壊された車のボンネットの上で、ボコンボコンと音を言わせて飛び跳ね、警察官に追っかけられていた。
 
いやいや荒れているなあ、と思いながら輪の中で撮影をしていたのだが、クラクションが激しくなって現場を離脱した。ふと、周りを見渡せば道路や歩道橋を埋め尽くすえらい数の野次馬であった。

この町には市民参加の大きな祭りはない。だから、花火大会が祭りの代替になっている。でも花火大会はあくまでも鑑賞で、参加度は薄い。集客目的の意味あいも強い。祭り的な雰囲気の中では、何かのきっかけではじけたがっている地元の人間は潜在的に結構いるのかもしれない。

ぼくが以前働いていた北関東のとある会社は、大型トラックの運転手上がりの荒っぽい社員が多かった。大型トラック出身者が全員あらっぽいわけではないだろうが、2、3回その手の人間ともめたことがある。さて、社員の中には祭りが近づくと頭をもみあげありの5分刈りにして口ヒゲを生やす人もいた。要は祭りでの喧嘩を想定して外見でなめられないように装うのだ。地元の祭りは闘犬場みたいなもんだろう。彼には共感しないが、それでも、なにやら指折り数えて楽しそうにしていたことは印象に残っている。
彼のような人間を見ると、祭りにケンカはつきものとはよく言うが、別に格好いいものじゃないなと思う。でも、ハレの文化ともいうし、祭りって昔からそんなものなのだろうか。

翌21日は花火大会の帰り途で発生した明石歩道橋事故3回忌だった。原発事故や震災も追っているジャーナリストの粟野仁雄さんが本誌でも明石歩道橋事故を取材・報告した。そのときこう言っていた。事件と事故は違う。事件と違って、事故は構造的なものでどこかで防げたはずだ。だから、原因があると。

ちなみに20日夜のできごとは、ある酔っぱらいが起こした迷惑な一事件だった。
翌々日、新聞の地方面は<職務質問を受けたが、飲酒運転のため逃走に及んだ。バスに激突して停車したところを取り押さえられた>と報じていた。典型的な検問突破のパターンだ。この日、県警は1000人を動員していたという。

新聞報道を知ってあっと閃いたが、事件を起こしたのは埠頭でケリを入れていた男性だった。
(平井康嗣)