きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

テレビCM幻想

週刊経済誌『日経ビジネス』が11月8日号で「もうCMでは売れない テレビ万能のウソ」という特集を打っている。
もはやテレビCMが効かなくなっているという趣旨であり、このテーマをビジネス誌でやることは画期的であり大賛成なのだが、ちょっと取材が足りなくないか。心意気は買うので、やるなら徹底的に批判してほしいものだ。

さて、ここに主要雑誌1ページ料金の表がある。電通手帳の後についている付録だが、これを見ると、雑誌の力関係がよくわかる。
そしてその料金表でトップはなんと前出の『日経ビジネス』の表4で380万円である。ああなるほど! つまり、テレビはだめだけど御誌に広告を出したほうが効くってことですか? なんて思ってしまう。今度は雑誌広告が効くのか費用対効果を検証して報告してほしい。

ほかの雑誌媒体では『週刊ポスト』が260万円で総合週刊誌ではトップ。『週刊現代』が245万円で第2位。次いで『週刊文春』が240万円、『週刊新潮』が220万円だから、その高さはレベルが違う。週刊漫画では『少年ジャンプ』が350万円、女性誌では『VOGUE NIPPON』が450万円。ダントツなのは、『JAF MATE』でなんと1400万円。発行部数が多いのだろう。
もちろんこの料金はあくまでも上限であり、需給関係で値段は決まってくる。

さて、電通特集に対して広告関係者からメールをいただいた。テレビ編を補足するし、広告幻想を考える上でひじょうに役立つと考えたので転載を許可していただいた(下の文中にある「スポット」とは視聴率に応じて売買され、番組の合間に流される15秒のスポットCMのこと)。

以下、

「ところで、今年の年末商戦に向けての、地上波スポット枠は既に完売らしいです。
けっこうBSデジタル枠まで広告費が流れてきているみたいで、このあたり、まだ広告幻想というか、電通主導の商売がうまく行っているのだなと思います。

本文中で紹介する業界作成冊子で「(スポット売買は)言ってみれば『一見さんお断り』の市場」とありますが、私はむしろ逆だと思っています。
まず、テレビ広告は一見さんにわかりにくい商品であることは確かです。
正札はあるものの9割引当たり前(というか、そこから交渉開始)の価格なので、事情を知らないクライアントはぼったくられる怖い世界です。
「かなりの目利きでなければ、不利な売買を強いられることになってしまう」のは本誌の通りです。
しかし、そうであるが故に、電通始め広告代理店は事情をよく知らない広告主にスポット広告を勧めるのです。
以前の特集にあった怪しげなクライアントがスポット広告を大量に出稿できたのは、「一見さんお断り」でない証拠だと思います。
(まあ、京都でいうところの「一見さんお断り」と同様、金さえ積めば適当な人が間に入って取引できると言う意味では本誌の通りですが)
電通は確信犯として、こうしたクライアントにスポットを高い単価で売りつけて儲けているのです。

本来、スポットは誰でも買える枠です。
だから、欧米ではメディア・バイイングの専門会社が担当する「非付加価値業務」です。
スポットの枠取りなんて、新幹線や飛行機の座席取りとしくみは同じですから。
ところが、電通は買い切り枠という買い占めで、自由な取引を疎外しています。
一見さんお断りにしているのは電通です。

電通の強さの源泉は「スポット含めCF枠の買い切り」→「電通を通さなければ良い枠が買えない(電通さえ通せば怪しいクライアントでも買える)」→「だから高く売ることができる」というトライアングルにあると思います。
こうした買い占めによる高値販売が電通の高収益の秘訣(の一つ)でしょう。
スポットの料金はどの代理店を経由しても共通ですが、買い切り枠は電通がいかようにも値段をつけることができますから」

●前回の補足
前回、新潟県古志郡山古志村の中山トンネルが崩落か? とのコラムを書きましたが、大丈夫でした。小さなトンネルなのでもちこたえたようです。しかし、村にアクセス道路は完全に崩壊していたり、土砂が流入していたり、倒木でふさがれたりしていました。
(平井康嗣)