きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

効かぬなら効くまで打ちましょう、広告を。

身近な読者というかウォッチャーから、次はいつだとおしかりをうけているのにも馴れてしまい、これはマズイとひさびさのマカロニです。実はいつも原稿を書いているのですが、校正をもたついている間にネタが古くなったりして落としているのである。今回も2週落としてしまったネタですが、面白いと思うので強行に掲載します。

最近、本誌で日本最大の広告代理店「電通」の特集をやっている。
この電通という会社は戦後生まれた民放テレビとともに膨張した会社である。テレビCMの手数料が大きな収入源だからである。

さてそんなこともあり今回は、ボクもテレビと広告について考えてみた。

「このテレビ番組って、どのような狙いでつくったのかな」と、ときおり考えつつ眺めると、それなりに浮かび上がって見えてくるものがあります(別にTBSがオウムでやっちゃったアサハラ教祖のサブリミナルとは違いますよ。あっ、ちなみに最近受けている某芸人のトランプマジックってHDレコーダーでコマ送り再生するとネタバレします。わざとバラしているような気もしますが)。

そこで、広告業界の知人と話していると、やっぱりそうでしょうってことが最近ありました! 
プロジェクトXではないけど、NHKだっけ? 日本公共放送の。あそこの商売人ぶりは目立ちます(注1)。子会社ばんばん作って、金を儲けているけど、金をもらわないギリギリのところでバーターすらやっていそうだ。
そんなNHKも絡んだ「カネのかかったキャンペーンじゃない」、と最近噂になったのが、先々週のF1日本グランプリです。タイアップ三段跳び。

まずは10月5日、NHKのゴールデン枠「プロジェクトX」放映。中身はホンダとF1の大宣伝。
それから10月7日、全国紙で見開き広告でホンダのF1紹介
ついでに10月8日、全国紙で新聞で見開きトヨタのF1広告および新聞社のタイアップよいしょ記事で、日本グランプリ開幕
ほいきた10月10日本戦。佐藤琢磨が表彰台! とはらならず4位……。

どうせ広告出すならできるだけ効果的にというのは、ごもっとも。中途半端な広告は、もはやききません。大きな企業が大きく投資して大きく儲ける。これに乗っかるのが、おいしい広告産業の仕組みです。しかしながら、NHKのコラボレーション(タイアップ)はいやらしい手口だ。広告を打たないというふりをして、脱法的にもぐりこませているわけですから。

そうえいば、『アンダー・ザ・レーダー型広告手法』(ジョナサン・ボンド著)という本をご存知だろうか。
この本は3年くらい前に広告マンの間で密かに流行った本だ。レーダーとは、消費者のはりめぐらすレーダーのこと。このレーダーをかいくぐって、広告やPRをうてという本であり、米国の広告マンが自分の経験に基づいて書いている。つまり、「消費者」はもはや素朴さを失い、広告と知れば逆に抵抗感をもってしまう。そこで企業は好感をもってもらいたいなら、おれらみたいにメッセージをうまく潜り込ませな! と書いているのである(翻訳本ゆえ、硬い文体にひっかかり途中で挫折しましたがエッセンスはこんなもんだと思います)

いまでも直球で広告を打っているのは、東京圏では、電気量販店のコジマとか、マツモトキヨシなどでしょうか。
それと反対に、社会的にイメージが悪くなる一方のタバコや、いまや銀行の系列になりつつあるサラ金などは、子犬や女性タレントを使い商品などの説明はほとんどなくイメージ広告ばかり打っている。
サラ金などは、電通系のビーコンがアイフルをやって大反響。業界的にはイメージ路線変更で成功したと思われていることでしょう。
ちなみにマイルドセブンの広告代理店は、「白」と「青」で広告をつくるのが必殺パターンだそうだ。そのためにCM制作チームは天然の「青」と「白」を求めて世界中の海や山を旅していると聞く。タバコのCMには関心ないが、旅すること自体はうらやましいですね。

しかし、西武鉄道も企業としての力が落ちてくると、メディアには叩かれ、脱税は発覚し、「総会屋事件」が出て大変だな。今年の「総会屋事件」で家宅捜査を受けて、その際には内部資料をどっさりもっていかれているから、その筋で今回の事件も発覚したんでしょうかね。

(注1)NHKはかつて、おれたちもBBC(英国国営放送)になれるのか! と研究プロジェクトに金をかけたんだけど、結果、日本と英国はお国の事情が違うのよね、と言って、挫折している。そんなことないですよ、がんばろうよー。だからNHK政治部は「自民党の犬!」とかいわれるんだよ。交際費も結構多いらしいじゃない。記者連中の間では有名ですよ。ある「NHKスペシャル」のディレクターなんて、半年くらい外国に滞在して「取材」したり、なんてリッチなんだろうと思いますよ。
(注2) 『アンダー・ザ・レーダー』の一昔前には『メディアセックス』という本は、CMで用いられるサブリミナル効果を精神医学の手法を用いて解き明かしている。広告に根本的に依存していて、どこまで「広告批評」なんてできるのかと思いつつ、博報堂出身「風とロック」の箭内道彦氏の対談集が面白かった。一見脱力系だがクールに足元を見つめる上でのトーク。最近の広告本ではもっとも面白かった、ふに落ちる本でした。

『掘るまいか』の山古志村

↑こんなことを書いているうちに、新潟で地震災害が起きた。阪神淡路大震災以来の規模の地震だそうだ。死者も出た。
ボクの親戚筋も震源地に近い長岡市に結構な数が住んでいる。だが、実はボクが気になるのは月曜日に全国紙で一面で報道された山古志村である。

山古志村は長岡市などとは一本のトンネルで結ばれているだけの周囲を山に囲まれた村である。今回の地震によって、生命線であるトンネルが崩壊したため、村民約2000人が隔離されてしまった。
ボクは昨年からこの村に行きたいと想っていて、今年の夏もオートバイで訪ねようと狙っていたのだが、休みがうまくとれず実現しなかった。
なぜ、この村に興味が湧いていたワケは、昨年、山古志村を描いた映画を観たからである。その顛末は昨年10月24日号当コラム「『掘るまいか』~」で紹介している。
『掘るまいか』(橋本信一監督)とは、かつて陸の孤島となっていた村を外地とつなごうと、中山遂道という長いトンネルを手で掘り抜いたというドラマを描いた準ドキュメンタリーである。もともとあった中山遂道は軽トラ一台が通れる程度の小さなトンネルであるが、最近は二車線あるトンネルが開通している。

昨年は、そのドキュメンタリー映画が完成して、上映会が各地で開かれた。山古志村の住民もかけつけていた。
過疎の村ではあるが、お年寄りが非常に元気でたくましく、上映会に訪れた人も元気をもらうほどだった。それもこれも山古志村で生活しているからである。映画ができたことで、村人はさらに元気づいたようだった。そんな姿を見て、ボクもぜひとも現地に行きたくなったのだ。

これから新潟は冬を迎える。村の名産品のひとつである錦鯉はほぼ全滅だと報道されていたが、築土構木(いわゆる土木)の象徴として保存されていた手掘りの中山遂道も潰れてしまっただろう。復旧が進まなければ村自体が崩壊してしまいかねない。そうなれば村民、特にお年寄りに与える影響は深刻だ。

26日の報道によれば、家畜や鯉の世話をするために、再び自衛隊のヘリコプターに乗り込み、村に戻った村民が5人ほどいるという。