兼題「冬凪」__金曜俳句への投句一覧
(12月26日号掲載=11月30日締切)
2025年12月14日2:07PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
風が強いことが多い冬でも、穏やかな日もありますね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年12月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【冬凪】
冬凪や沖に渺茫日矢射しぬ
冬凪の天の遥かを鳶舞えり
冬凪の天末線のたおやかさ
冬凪や置きたるごとく鷺一羽
残照の冬凪に立つ鳥居かな
冬凪や蒼空深く涯陰り
冬凪の出航船へ旗振る子
冬凪にまた巻き直す腕時計
冬凪の音のみ動きゐたるかな
冬凪の一番漁の帰り船
冬凪へ落語の余韻まだ温し
冬凪や退屈を拾つて歩く
冬凪の小島の夜明け神話めく
冬凪に就航記念植樹果つ
大川のほとりに迷う冬凧よ
冬凪や岬を回る販売車
アメリは冬凪面積広かろう
冬凪やぬらりひたりと島渡る
冬凪の日の香を放つ舟だまり
冬凪や容疑者と同じ高校
冬凪の闇に新聞身を投げる
冬凪の夕陽の染めし橋新た
冬凪や今日はお休み永田町
冬凪に雪の気配の残りけり
冬凪やロープの緩む舫ひ船
寒凪や沖の小島の松ふとし
冬凪や逆立つ産毛起こる火事
冬凪に調弦の音の青々と
冬凪の帆に鳥影のくきやかに
冬凪や母の背丸さ強めてる
冬凪の時計に人を待つ時間
冬凪やひそかに寄り来黄泉の波
冬凪の景色のためにここに来た
冬凪ぎて杖つく人の進むなり
冬凪や浜のきらめきシーグラス
冬凪の隈々烏群騒ぐ
冬凪でうみぼうず眠り船を漕ぐ
冬凪の波一枚になりにけり
冬凪や恋の位置情報は海
冬凪や永く連れ添ふこととなり
冬凪の海のにはかに恐ろしき
冬凪を飽かず眺むる老夫婦
逆光に黒子めく船冬の凪
冬凪に向こうの島をながめおり
冬凪の底は見えない詩を記す
冬凪の不気味な昼でありにけり
冬の凪鴎の群れも鎮まりて
冬凪や触れてざらりとシーグラス
冬凪のグラデーションにとける朝
冬凪やホットミルクのラムスデン
冬凪の空は虚空や風見鶏
冬凪の足音に見つ白兎
冬凪の船窓に添ふ遠景色
残されし丸太櫓や冬凪げる
冬凪の沖に遥かなひかり射す
足揺らす冬凪線路工事の夜
孤高なる白き灯台冬の凪
冬凪や鹿島そびゆる斎灘
冬凪やギター片手に坂上る
冬凪の浜に干されし名無し魚
冬凪の浜に遺さる朽ちた舟
二人乗りすれば罰金冬凪ぎて
理髪屋の口数増えて冬の凪
冬凪や美貌整へ日本丸
冬凪や走り出せそな海面を
冬凪やかもめは原子炉の真上
揺るぎなき決心したり凍の凪
冬凪の夕日間近に瀬戸を航く
冬凪や黙して通る古鉄橋
冬凪に港の灯だけ深くあり
冬凪の浜に下りたる影二つ
冬凪や鎖骨にうすき手術痕
紫の唇集う冬凪や
冬凪や水面を歩く靴の欲し
冬凪の沖に白鳥やすらへり
冬凪や味わってみる目を閉じて
冬凪のひとつ島置く車窓かな
冬凪やリア王のごと諦めて
竜の棲む冬凪ぐ深き山の湖
冬凪やラーメンすする海岸線
冬凪や水平線に落つ夕日
一度目の妹の寛解冬の凪
寒凪や豊漁といふ兄の舟
冬凪と氣取らず人の急ぎ時
冬凪の 海のひらめき 消えしまま
冬凪の穏やかならぬ予感かな
冬凪の茅渟の海面蒸気船
冬凪や 網干す指の 荒れ深く
冬凪や立てば足元より暮るる
冬凪を 割る帰舟の 灯ひとつ
冬凪やマラソン五人ごぼう抜き
冬凪や白き骨撒く噴火湾
冬凪のニライカナイの晨かな
昨日から行方不明の冬凧よ
進み行く皆水平に冬凪へ
冬凪の彼方に黒く雲浮かぶ
冬凪や移動販売車近付く
冬凪や水平線に鷗舞ふ
冬凪や真新しきは友の墓
冬凪や根抵当権付き浜辺
凍凪や岬の外まで光る海
冬凪と並びて海辺露天風呂
寒凪のかつて風待ち湊とや
冬凪の海に影なく舟ひとつ
冬凪を南へ航す「しらせ」かな
冬凪のデッキ行き交ふ杖の音
冬凪や赤灯台の統べる湾
冬凪や動かぬものらうつくしく
巡回の研ぎ屋と出会ふ冬凪て
冬凪の海つかの間の夢見たり
冬凪を切り裂く立ち漕ぎの軋み
冬凪や星と分け合ふかけ饂飩
冬凪やおちば重力どおり舞う
戦後八十年遠き冬の凪
何万歩歩けばさらに冬凪げる
冬凪の橋をあるいていく鳥か
冬凪やスワンボートの笑い声
冬凪や出航の銅鑼クルーズ船
賜りし冬凪一日晴れわたる
冬凪といへども空気うごきけり
冬凪や沖に時間のわだかまり
冬凪や漁師いよいよ威勢よく
冬凪の海にとどまる舟の影
冬凪や船を待つ間の百ページ
冬凪の完全黙秘やめなされ
冬凪にとまどう心捨ててみる
冬凪や嗄声うるわし旅舞台
冬凪やいつも変わらず飲む紅茶
冬凪のなかを曳航さるるもの
冬凪の百年に一度浮かぶ城
冬凪や歌をハミング虹ふたつ
冬凪や流人の待ちし赦免船
冬凪や軽トラックの過積載
冬凪や出航を待つ外国船
冬凪ぎて集落ひとつ人知れず
冬凪や声なき漁火ただ瞬く
一点の曇りもなくて冬の凪
冬凪をラップに包みしばし置く
冬凪の浦に青葉の笛いかに
冬凪や網を干す手の止まる町
冬凪をしづかに眠る魚群あり
冬凪や離島に小さき天文台
冬凪や海に憧れ海を恋ふ
冬凪や網干す指の静けさよ
冬凪や胸に沁み入る汽笛消ゆ
冬凪に 汽笛ひと息 返らざる
投網の修理完了冬の凪
冬凪の水平線が胸に刺さる
冬凪を商つてゐる道の駅
金婚とは冬凪に貝拾ふこと
冬凪の沖を進みの遅き船
冬凪や冷ます怒りと恋心
冬凪の鑑定留置の容疑者
冬凪ぎてゆつたりバスを待ちゐたり
人送り来し冬凪の運河べり
冬凪の思ひだしたくなき記憶
冬凧よどこまで逃げて飛んで行く
冬凪の沖へ白鴎ひかり踏む
韓国へ渡るフェリーや冬凪げる
冬凪は流線型で優しくて
黒い影冬凪に落とす鳥の群れ
冬凪や靴脱いでゆく磯だまり
冬凪やスナック順子早仕舞ひ
冬凪や喝采のごと海光る
風に舞う転がり已まず冬の凧
冬凪や 舟の輪郭 動かざる
水鳥の長い引き波冬凪る
桟橋の端の花束冬の凪
冬凪を語る老人またここで
二日目のジーパン柔し冬の凪
船尾にはぽつんと国旗冬の凪
冬凪の浜に遊べし足跡や
冬凪や対岸の島輝きて
冬凪という道歩き一人旅
冬凪を湾の外へと小さき船
冬凪や鴎に沸きし遊覧船
冬凪をこれより小さくなれぬ船
脱皮後の地球のぬらり冬の凪
冬凪や漁舟の向きを同じうす
冬凪待ちて散骨の船出かな
冬凪やおしどりの距離触れる程
冬凪や倭寇の裔のしづかなる
冬凪やシーグラスとはまだ云へぬ
冬凪や斜陽のゆくえ紅色づく
冬凪や母外泊の二三日
冬凪の冨士の裾まで色の無し
冬凪や天心からの鳶の笛
凪ぐ冬を長くて低い影ふたつ
冬凪ぎて喫水線の赤さかな
冬凪を疑ふ人の横顔よ
堂々と国立公園冬凪げり
【熊・冬凪】
冬凪や熊の背中に雪ひかり
冬凪や熊の眼深く海を呑む
冬凪に熊の足跡消え残る
冬凪や熊の腹鼓星ひとつ
冬凪や熊は眠らず未来待つ
熊渡る冬凪の川鏡なり
冬凪に熊のいびきの響きけり
熊眠る未来の音なき冬凪に
冬凪の影を抱きし熊ひとつ
熊踊る冬凪の村に太鼓鳴る
【その他】
我が掟東寺に寄りて冬至粥
銭湯に一番風呂を冬至の日
