兼題「熊」__金曜俳句への投句一覧
(12月26日号掲載=11月30日締切)
2025年12月14日2:04PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
日本には、月の輪熊と羆(ひぐま)が生息しています。今年は、熊の被害に悩まされました。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年12月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【熊】
神託に抗ふ夜や熊の胆
よくたわむ枝に子熊の丸き尻
橅老いて熊の爪痕新しき
折り合ひをつけられず熊里に下る
木彫り熊玄関から消え物置へ
彷徨ひて眠らぬ熊の恐ろしき
熊暮らし人暮らしゐて風の音
人類を継ぐ種となるか熊立てり
一昨日の熊目撃の告知板
熊の胆の苦い黒さを飲む孤独
人里を振り返りつつ熊帰る
穴に入り死にゆく如く熊眠る
熊いづる 雪踏む音の 深さかな
熊穴へ人の気配を置き去りに
山よ熊抱き給へと呟きぬ
熊眠れ人里遠く熊眠れ
プーさんも撃たるるのかと子の問ひぬ
羆棲むコタンの山の深さかな
貧しさの食ひやすしとは熊も知る
熊装備点検し合って山登る
銃弾の至近距離ゆく親父熊
電気柵掘って潜って熊の尻
熊餓へて市中徘徊して撃たれ
冬眠を忘れた熊のゴミ漁り
遠距離で恐々眺む熊の檻
熊飢えて恩寵の里統べるかや
罪深き味を覚えた熊哀れ
蕃族のごとく熊どもやって来る
樹々の間を消ゆ熊の尻猟銃音
屠られし熊の胆の腑なほ温し
共存はできるだろうか人と熊
山下りし熊銃眼をさまよえり
雑踏に紛れ込む熊何処へやら
熊棚や深入りしたる橅の森
熊打ちの返るこだまや郷の村
バスを待つ山やどこかに熊気配
熊注意看板に会ひ引き返す
幾たびも熊の気配に立ち止まり
撃たれたる羆の牙の黄ばみ濃し
自衛隊戦争よりも熊を撃て
熊撃ちの重き足取り漫ろ雨
黒峠越えて子熊の道険し
生贄の母熊を呼ぶ小さき声
親不知熊の子登る家の果樹
どつと接近熊との境界線
どの樹にも熊の爪痕楢の森
立ち止まり耳そばだたす羆かな
熊の皮三枚持ちたる家の過去
熊眠る安堵の村に戻りけり
熊のいて大回りする登下校
コンビニに学び舎に熊容赦なく
熊の跡収穫間近の次郎柿
熊の息や森の底より霧ひらく
気配だけ漂う深き熊の森
熊の出る村にひとつの無縁墓
人消えて熊に明け渡されし街
遊歩道熊注意の字をしかと見て
親子熊貧しき山を降りにけり
熊は熊で人間までも食ひ散らす
柔らかき掌跖抱いて熊眠る
熊食ふ民族絶えて餌となる
脳髄の痛み熊スプレー浴びて
故郷の立て看板や熊注意
柿の実はいくつ食べるや熊巨体
ここにきて熊の居所寒くなり
落葉松の幹に熊の毛わびしらに
熊撃ちし話をあてに酌み交はす
熊走る老ハンターの銃光る
人間の老いへの遠慮熊になし
熊を追ふ片耳の犬名はハヤテ
通学路電信柱に熊とまる
親子熊生きて生きると里にくる
月光のきざはし垂るる檻の熊
戦争も熊も身近に冬隣
熊撃つな尊きものぞ命とは
熊の子の声晴れわたる夜にかなし
にんげんを恐れぬ熊におののきぬ
穴持たず人は怖いが然れども
吹つ切れぬ些事あり檻の熊嗤ふ
里山で彷徨ふ熊に立ち竦む
足の跡熊の親子がいたらしく
市街地に熊さんと会ふ昨日今日
剥製の熊の目何を見ておりぬ
親と子の熊に弾丸突き刺さる
熊に告ぐ駆除の反対語は保護と
立ち上がる熊向き合ひてゐる巡査
人間の様に椅子には熊が座し
鉄の檻前で見つめる親子熊
熊の跡動物園の中にまで
胡乱也共生能ふ熊愛護
納屋からは熊の気配やくおと鳴き
熊冬眠促す曲の無き初冬
熊の出る日本入国禁止令
美味そうに掌嘗めつ熊胡坐
じやれ合つて仕草可愛いや熊親子
人喰ひの神獣として熊を屠る
朝まだき道を退く熊親子
温暖化山から里へ熊移る
山眠る眠らぬものに飢えし熊
熊食つて一人前になつたとか
罠さけて熊またしても捕まらず
雲低く流れて熊の寝床かな
人の食べ残し熊には蜜の味
眠らない熊眠らない都会へと
人様は保護だ駆除だと熊穴に
股旅や熊の目に一等星を
駆除といふ言葉冷し熊の屍に
アルカスに焦がれて熊の不眠あり
熊の背のまるし突つ伏す酔ひたんぼ
一弾に哀しき熊を仕留めやる
月の輪もあらはに立てり熊の胴
新世代熊らしあくまで堂々と
人里に来ればいいことだらけ熊
雪原の黒点迫る穴持たず
熊出でしニュースに開く里の地図
熊の掌に創たくましくありにけり
川を出て熊の毛並みよさらに濃く
赤黒き熊のロースやマヨネーズ
本職を抜けて出陣熊狩に
専門外の人たちが熊を撃つ
ちちははの魂と遊びぬ黄泉の熊
親子熊子守歌なりあらかしこ
熊を見て熊の黒さは穏やかに
駆除という言葉の刺さる熊被害
山痩せて細る老躯や穴熊に
冬の熊 眼の底まで 曇りなし
東京に熊生息のスポーツ紙
通夜帰り熊見しとふ怖き道
ゴミ箱を探る羆の両の足
母熊の星を眺めて穴に入る
熊よりも少ない村の警報音
圧強く熊出没のメール打つ
熊の背にしんしんとあり薪の火
熊の胆の野に下りるたび街に賣る
梢に進退窮まって熊惑う
市役所の自動ドアから入る熊
金輪際山に戻りたくなき熊
山宿の居間に敷かるる熊の皮
熊の肝おそるおそると食ひにけり
猟銃の音に怯まず熊吠える
故郷や熊除けの鈴鳴らしをり
人の世に神たりし熊の「駆除」さるる
列島を熊と陣取りせせこまし
熊潜む辿る雪跡息凝らす
熊除けを忘れて戻る通学子
マタギたち熊狩りをする授かり物
熊の息ひとつで森の色変わる
熊が居る予感に心に網を張る
山を出て生きる空なき熊のゆく
大都会迷い入る熊みつからず
羆出て羅臼は常と変はりなし
「熊出る」と園に街にも幟立つ
贄として気高き熊の供へらる
熊の爪人新生の痛みなり
月冴えて熊歩み出す影の濃さ
ゆめゆめ忘るるなかれ熊の命
痩せし熊遠巻きにして水飲み場
香辛料強め羆のハンバーグ
熊がいる鈴を鳴らして歩く道
半眼に微睡む山や熊穴に
冬篭り豊穰の森熊夢む
熊と生きるまたぎの瞳澄み切れり
食いだめて巣穴へ熊や親子して
山荒れて痩せ果て熊の彷徨いぬ
大き尻ひぐま大地を揺らしけり
鉄路走る熊黒々と身罷りぬ
熊のいふ吾も猟夫になりたしと
熊道へ 風のひと刷き 木の匂ひ
川下にまどろむ熊の影ふたつ
熊の瞳にも映るだらうか飛行機雲
雄熊の強き匂ひや風の声
箱罠の熊なほ山のもの食らふ
人間の出る林道に潜む熊
先行の熊鈴消ゆる峠越え
実の生らぬ針葉樹林熊の飢ゑ
熊啼いて峡の闇より風あがる
熊の背の雪いよいよと森の核
これよりは熊の森ぞと歩み入る
熊逝くや流竄の神を放ちつつ
みちのくの眠らぬ熊となりたるか
仕留めらる熊の涙と弾の跡
熊警報今日も子どもの通る道
果てしなき飢ゑに吠えたる穴持たず
食料少なし今年熊の掌旨くなし
熊除けの鈴を忘るる遅刻の子
絶対に出会ひたくなき親子熊
夜祭りの篝火の奥熊注意
この川は吊橋ひとつ熊の森
熊穴の 闇うごかずに 冬つづく
里山に銃声ひとつ羆追ふ
熊の手を掠めて風に日付印
熊穴の闇へひとひら雪こぼれ
赤き目に虫連れて熊が来てゐる
熊道のぬくみ消えゆく霜の朝
窓の板わが夕張は熊の町
この糞は熊かもしれず歩を緩め
箱罠の熊を惜しみて鶉なく
春遠し眠りも遠し親子熊
連日やいよいよ熊の恐ろしく
熊道の端に白骨 冬の月
食意地を張らせ枝より落ちし熊
熊の胃に無限に入る庭の柿
敗け知らず撃たるゝまでは山親父
純粋とはやや言えない熊かな
大木に熊の爪痕増えるまま
木の股に橙を熊喰つてゐる
月光の衣被て熊よ山奥へ
爆竹の音に動じぬ黒熊ぞ
月光に月の輪熊の影しづか
大荒れの津軽海峡熊隔つ
熊の背の 雪ただ落ちて 山しづむ
薄情や熊出る町に左遷され
熊除けの鈴を鳴らして吾一人
熊たちの住処哀しき時となり
札幌は街にも熊のいるのかと
食いはぐれ熊が眠らず里へ出る
熊撃てば遠く比叡の北に星
大漁の鮭を分け合う人と熊
送られてイヨマンテの夜の熊
校庭に迎への車列熊情報
熊気配ひとつ揺らして枯野鳴る
キャスターが熊のニュースをまた伝ふ
その腹でまだ食い足りぬか罠の熊
