兼題「鶺鴒(せきれい)」__金曜俳句への投句一覧
(9月26日号掲載=8月31日締切)
2025年9月15日2:50PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
鶺鴒は、セキレイ科の鳥の総称です。長い尾を上下に振ることから、石たたきや庭たたきとも呼ばれます。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年9月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【鶺鴒】
初めての路地にセキレイ案内顔
額づきて何謝るや鶺鴒は
源流を告ぐる木札に黄鶺鴒
鶺鴒の翔ちし一瞬瀬音止む
渡し舟呼べば鶺鴒応へけり
鶺鴒の囀り響き立ち止まる
鶺鴒の石を叩いて去りにけり
勧誘の声と白鶺鴒の声
鶺鴒のただ浮かびをる沼沢湖
縮まらぬ鶺鴒までの五メートル
ゆりかごの娘と鶺鴒のおままごと
仕方なくチチと飛び立つ石叩
糶終へて鶺鴒嬉々と尾を振れり
病人の待つ路地裏に庭叩き
陰翳を濃くしてをりぬ庭たたき
鶺鴒の地面叩いて飛び立ちぬ
待ち人の路地に鶺鴒尾を上下
石切りの果てに鶺鴒飛び立ちぬ
猫の伸び汲み上げ井戸に鶺鴒来
踏切を渡れば鶺鴒居る予感
鶺鴒の尾の何拍子とも言へず
鶺鴒のスタイリッシュに軽やかに
裏庭に鶺鴒の声留まれり
セキレイや石橋叩く忙しなさ
叩く尾にリズムもありぬ石たたき
鶺鴒や小風携へかずら橋
愛嬌を振りまく如し石叩
巡礼の道先達の黄鶺鴒
張扇拍子取る尾や黄鶺鴒
せきれいの日影とともに歩きけり
鶺鴒の遊ぶ市場は糶の後
鶺鴒に追はるる男野に一人
洋館に人気なくせきれいの声
鶺鴒や石をたたきてわたる橋
鶺鴒の人も車も好きと見え
路地の奥人待ち顔に庭叩き
鶺鴒の此岸彼岸を行き来して
身を守る仕草教える石たたき
急流に遊ぶ鶺鴒スリルあり
軽やかにつつつと走る石叩
音楽隊通り過ぎれば鶺鴒来
鶺鴒の尾のしなやかに水を切る
鶺鴒の丈の半分揺れており
蹲の縁に鶺鴒放りにけり
鶺鴒の付かず離れず走りけり
鶺鴒や正午を告ぐる時の鐘
鶺鴒が尻尾ふりふり鳴く水辺
水に草白鶺鴒の餌場かな
鶺鴒や天空橋の名前負け
朝風や鶺鴒の尾を染め分ける
音もなく辷る一匹石叩き
探し物探してをれば鶺鴒くる
妣死ねどどこかで鶺鴒尾を振りぬ
やさしくやさしくやさしく石たたき
鶺鴒は葡萄牙にも飛んでゐる
水路から鶺鴒が出て線路見る
鶺鴒は照魔鏡めく湖に帰す
鶺鴒の道案内か吾を待てり
鶺鴒や川辺のせせらぎ迷ひゆく
鶺鴒の遊びし水に浸す足
鶺鴒や幼馴染の大人びて
鶺鴒や遠くで山のこだまして
市場に人消へて鶺鴒踊り初む
鶺鴒や餌が飛び立つ事も有り
石橋を叩き渡らぬ黄鶺鴒
鶺鴒や早口になる祖母の癖
鶺鴒や歩き初めの子オムツの子
光陰は鶺鴒の尾の叩く間に
鶺鴒の地中へ致す尾のノック
鶺鴒のよぎる露地あり忍び足
鶺鴒の止められぬ性尾のロック
鶺鴒や喉まで出掛かった別れ
鶺鴒の川面を叩くこともがな
鶺鴒来アザラシショーのステージに
鶺鴒の二羽そろひけり瀬のひかり
鶺鴒の腹うつくしく付ききたり
鶺鴒やブルグミュラーの名もヨハン
鶺鴒の逆走阿賀野川ライン
庭たたき見て喜べり無為の日々
鶺鴒の小石の上を走りけり
鶺鴒や不正を叩けと尾を振って
鶺鴒の餌を呑むときも尾を振れり
水切りの石探す父子石叩
マンホール静かに濡れて白鶺鴒
生身魂逝き鶺鴒は水辺飛ぶ
鶺鴒は川下へと水面切る
鶺鴒をとり零したる夕陽かな
猫たちは窓に犇き庭叩
とりどりの振舞い鶺鴒さながらに
せきれいの鳴いて米櫃空になり
うたた寝の入口ひびく石叩き
せきれいの尾の一ミリの震えけり
鶺鴒の姿見ずとも声わかる
飛び石を桂馬のごとく石叩
鶺鴒の番いて水の匂い立つ
鶺鴒の影は遅れて飛びにけり
鶺鴒の宇奈月谷を古稀と喜寿
鶺鴒の一羽を残す川の幅
鶺鴒の翔ちし一閃黄を点ず
鶺鴒や峰は彼岸のしるしにて
拍子とる講談師たる鶺鴒かな
鶺鴒の美しきほど性急な
鶺鴒の告ぐる茫漠たる悲報
鶺鴒の影すばやかに秋の砂
鶺鴒の川面掠めてやや乱る
付いてくる人なつつこい鶺鴒が
石橋を鶺鴒ささと渡り切る
せきれいの羽はモノトーン空たたく
橋上にしばし留まり石叩
隻脚やりりと鳴きける石叩き
鶺鴒やさようならって叫びやすい
落ち着きのない鶺鴒は我のよう
渓流に似合うせきれい空たたく
鶺鴒や神話のなかに石を叩く
窓開けてせきれい放つ断捨離や
開けたる空がなにより石叩き
鶺鴒の叩きし水や石切りす
石叩地下の空洞探しおり
鶺鴒とそこまで散歩病み上がり
コンビニの前をうろうろ石叩
鶺鴒の声まっすぐに突き刺さり
糶終へて軽くステップ踏む鶺鴒
鶺鴒の水切り石のごと飛べり
鶺鴒のよく通る声庭できく
鶺鴒や爪を切る音響きをり
霊園に鶺鴒尾を打つ日暮れかな
鶺鴒の空気の層を弾き飛ぶ
荒畑に鶺鴒一羽いま一羽
鶺鴒に耳傾ける午前五時
その先は奔流鶺鴒の不動
鶺鴒の軽く空気を動かして
縁側に鶺鴒寄りてまた離る
鶺鴒や寿命をまでも分け合ひて
顔なじみの白鶺鴒に挨拶す
鶺鴒やどこへも行かぬ水の音
鶺鴒の遊ぶ川瀬の水清ら
小流れの石を踏みつけ石たたき
鶺鴒の尾で招きたり祠まで
鶺鴒や整備のされし遊歩道
写真家のレンズの中の黄鶺鴒
鶺鴒や先へ先へと間を運ぶ
鶺鴒の宙の起伏に沿うて飛ぶ
鶺鴒のしぶきのやうな細き声
木の枝に花のおもかげ庭叩き
鶺鴒のしづかに流れゆく水辺
棟梁の足袋軽やかに庭叩
鶺鴒や本の置かれし山の駅
鶺鴒の尾のひらひらと水明り
鶺鴒の尾にもの告げる神おわす
生きるため鶺鴒の尾を動かしぬ
鶺鴒に急かされて発つ祖谷の朝
鶺鴒やリトルリーグの応援歌
鶺鴒の尾の誰を招きかつ拒む
鶺鴒の高く鳴くべく尾を振れり
鶺鴒を追うて川音深まりぬ
鶺鴒の一閃われに黄ののこる
鶺鴒の水路から出て石畳
鶺鴒が尾を振り生まれし子なり吾
鶺鴒も家路につくかお疲れさん
鶺鴒のだんだん狂う水時計
鶺鴒やトトロの森へ導かれ
鶺鴒やおのが尾の影ひき連れて
ゴリラ岩像岩も打ち石叩き
鶺鴒の道走るとき尾を立てる
鶺鴒の石橋叩く姿見し
空中をたたきせきれい波に乗る
みちに迷い見やれば鶺鴒の尾の上下
鶺鴒を追えばすなわちストーカー
鶺鴒の選びし石の器量よし
鶺鴒に今後の道を尋ねけり
鶺鴒の尾の揺らしをる小枝かな
鶺鴒の脊髄に梢の気魂
鶺鴒の声に機嫌のありにけり
コンビニを出て鶺鴒を少し追ひ
庭たたき山水の砂ならしをり
鶺鴒に頭を叩かるる地蔵かな
鶺鴒の羽ばたく姿癒される
石仏の笑むや鶺鴒くすぐりて
開発や保護も知らずや石たたき
今日もまた例のところの石たたき
鶺鴒の石橋叩き渡りゆく
鶺鴒や群を嫌うて人に寄る
