きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「山葡萄」__金曜俳句への投句一覧
(9月26日号掲載=8月31日締切)

山葡萄の実は10月ごろに黒く熟し食べられますが、酸味が強いですね。果実酒やジュースに加工されます。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年9月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【山葡萄】
口元に野趣を残さむ山葡萄
裏富士の影や裾野の山葡萄
だみ声の村の男と山葡萄
みちのくの山たおやかや山葡萄
化粧箱に染みているや山葡萄
落ち延びし下人の行方山葡萄
山葡萄摘む爪先は日に暮れて
山葡萄ふとターザンのなつかしく
父と鳥食べごろ競ふ山ぶどう
油彩画の影の重さや山葡萄
野葡萄は道の駅にてジャムになる
ジュースにも野性味あふれる山ぶどう
あくまでも素朴な暮らし山葡萄
まどろみの淵より匂う山葡萄
したたかに蔓侍らせて山葡萄
懐かしき秘密の場所の山葡萄
老人につままれてゆく山葡萄
啄みし実のやぶれおり山ぶどう
はけの道の葉裏の謐や山葡萄
約束の地に揺れてをり山葡萄
山葡萄に写る笑顔の君は酔う
祖父の手の皺頼もしき山葡萄
山葡萄盛ればしずかな絵付皿
甲州に隠し湯ありて山葡萄
山葡萄葉をしりぞけて明るみへ
山葡萄肩に食ひ込むリュックかな
山葡萄近くに迫る開拓地
山葡萄牛舎裏山実りたる
山葡萄籠は高嶺の花なりき
色づける珠の光や山葡萄
割烹着しみの数だけ山ぶどう
山葡萄酢いも甘いも夫々に
プラチナは金より優り山葡萄
山ぶだう鳥の重さに揺れにけり
言葉のごと指をこぼれて山ぶどう
山葡萄藍を深めて熟れにけり
裏山の黒きダイヤや山葡萄
山葡萄圃場整備の第二案
野に迷い天の恵みか山葡萄
奥山の土に乾きし山葡萄
少年が手を引く先の山葡萄
山葡萄鈴なり獣道臭ふ
下を向いてひたすら歩く山葡萄
山葡萄熟る気まぐれの独り旅
山葡萄口に含みて失語症
山ぶだう雨の光を受け止める
山葡萄母喀血の日の憂い
山葡萄秘密を誓い合ふ二人
風邪薬摘まんで思う山葡萄
山葡萄蔓に揺られて見え隠れ
飴色のまだらなりけり山葡萄
霊山の失敬をせし山葡萄
唾液腺キューとしぼみぬ山ぶどう
名を知らぬ鳥鳴いてゐる山葡萄
粒々に太陽ぎゅっと山葡萄
まろやかに雨滴のつつむ山ぶどう
もう一歩踏み込んどけば山葡萄
子らばかり知れる抜け道山葡萄
巻きひげの他力本願山ぶどう
山葡萄平家伝説廃れし地
弟はましらの如し山葡萄
峠道しだいに細く山葡萄
戦闘機なきあをぞらよ山葡萄
月欠ける音するやうに山葡萄
ふるさとの空を貸し切る山ぶどう
山葡萄幼き日々の土の味
山葡萄雑木の里に戻りゆく
山葡萄爪の奥まで黒くして
黒でなく紫でなく山葡萄
山葡萄籠を揺らして峠越す
獣害の柵に絡まり山葡萄
水場探す急ぎのタスク山葡萄
竜神の御姿に似て山葡萄
山葡萄ペットボトルを黒く染め
山ぶどう空へらせんに昇り行く
風がまず見つけて舐める山葡萄
分け入って山葡萄また山葡萄
山葡萄じいじの伸ばす背中と腕
言ひ訳を覚えし吾子や山ぶだう
緑林のタトゥーのごとき山葡萄
湯治場の黄昏早き山葡萄
山葡萄分け入る人の甘露かな
古備前のでんと甕あり山葡萄
山葡萄たしかにあのあたりだつた
酸ゆき実を熊も喰らうか山葡萄
山葡萄矢印赤き道標
山葡萄道に迷へば角に地図
山葡萄戦渦を逃れ崖路行く
トレイルラン道をそれての山葡萄
子のかごに母少し摘む山ぶどう
山の蝶吸ひて色めく山葡萄
まほろばの大和の古道山ぶどう
夏バテに苦味もとめて山葡萄
山葡萄の蔓のつやめく峡の風
過疎の村と呼ばれてひさし山葡萄
むらさきに熟れてこぼるる山葡萄
水音のひたすら駆けて山葡萄
星辰のむまれ散る影山葡萄
迷走の果てに高嶺の山葡萄
山葡萄くちびる噛んで蒼天へ
山葡萄子熊の腹に納まらむ
戒名を覚えられずに山葡萄
山葡萄幼きどちの酸味甘み
山葡萄溢れ一会の下山道
ぽつぽつと日の当たりたる山葡萄
山葡萄分け合ふ猿と小鬼とぞ
山葡萄一枝を瓶に小学校
夕空や梢に絡む山葡萄
蔓引かば森の騒めく山葡萄
山の子におやつ代わりや山葡萄
甲斐に入る信濃の風や山葡萄
山葡萄あなたの瞳に海あらば
山葡萄乾ききるまで芳しく
山道に海の色して山葡萄
捨て窯の屋根の破れや山葡萄
遠い日の舌の記憶や山葡萄
山葡萄籠を抱えて道の駅
山葡萄この里好きと疎開の子
真つ黒になるまで熟れる山葡萄
やまぶどう祖母の形見の籠レトロ
山葡萄手折られぬまま熟れてをり
山道は山葡萄有る予感して
洗っても染みの抜けない山葡萄
青空の怖さを知らず山葡萄
山ぶだう歌声喫茶てふ泉
虫喰ひの葉こそまぶしき山葡萄
山ぶどう弦の絡まる道標
山葡萄人の心に色のあり
山葡萄ワイン香の中ウオーキング
山襞のやをらに老いて山葡萄
山葡萄〓の淵の上にかな(魚偏に鬼と書く。「イトウ」)
五合目に一息入れて山葡萄
野葡萄やたそがれ前に道四すぢ
山葡萄ほのかに赤く祖谷の道
熊の胃を捌けば温い山葡萄
ザイルワーク以ち山葡萄採る岩場
口中を見せ合ふ二人山葡萄
靴底にひょんなおみやげ山葡萄
山葡萄渚の夢を見るらむか
山葡萄入りのパンてう温く重し
山葡萄断固と酸味主張せり
山葡萄摘む子の爪の染まりけり
艶やかな色して誘う山葡萄
人跡の途切れて香る山葡萄
山葡萄ひそやかに熟れ谷の闇
眠りたる野性を山葡萄覚ます
ハイカーのにぎはひ葉影の山葡萄
山葡萄空たわませて鈴なりに
山葡萄しづかに暮るる八幡平
山葡萄ワインでカンパイ家族会
踏み跡の途絶えるところ山葡萄
山葡萄お天道様の色を染め
山葡萄秘密基地なる野戦食
山葡萄ガソリン節約歩くべし
鯉の川山葡萄食べる鳥は無し
一粒の青空宿す山葡萄
山葡萄手繰れば蟻に守られし
山葡萄アニメの聖地てふ人出
湧き水は冷たし山葡萄黒し
山葡萄煮るまばたきの遠さかな
野葡萄を潰した指を母に拭かれる
妹の口を染めける山葡萄
山葡萄ジャムジャムと朝食(あさしょく)パン
迎え撃つ秘密の基地に山葡萄
山葡萄に悠久の日を置きにけり
山葡萄手折るや風のみち残る
山荘の卓の弦かご山葡萄
野葡萄や蒼を研ぎゆく峰の空
光秀も三成も逝き山葡萄
黙祷を終へてひと口山葡萄
動物のためにとらずや山葡萄
一隅の幸を集めて山ぶどう
掌に盛れば余生の重さ山葡萄
山葡萄一つ房へと絆の実
山葡萄瀬音の小さき杣の道
旅人のわれにやさしく山葡萄
パイアール二乗の陣地山葡萄
歌声は天狗のヘルツ山葡萄
車降り山の何処かに山葡萄
過ぎた日がここにあるかも山葡萄
みやこより遠し鞍馬の山葡萄
沢音が招く山ぶだうの奥へ
熊食うと聞きて冷汗山葡萄
野葡萄の蔓の先端隠れけり
粒々に日の重み熟れ山ぶどう
山葡萄一粒試す苦みかな
酒醸す水と大気と山葡萄
樹々の間に蒼き空あり山葡萄
山葡萄隠れてないで出ておいで
水鏡に色を残して山葡萄
怒りもて噛み潰しけり山葡萄