きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「ラムネ」__金曜俳句への投句一覧
(4月24日号掲載=3月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

「ラムネ」の語源は、レモネードだそうです。独特の形状の瓶も懐かしいですね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年4月24日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【ラムネ】
昔から不思議でならぬラムネ玉
ラムネ呑み干す子宿題後回し
ラムネ飲み玩びけりチャラチャラと
水槽に沈むラムネと夕映えと
ラムネ乾す何色と問ふ碧と言ふ
ラムネ飲む空飲み込んだ心地する
ラムネ飲む子を視る側の子でありし
青春に寄り添つてゐるラムネ壜
水流の渦巻き殊にラムネ瓶
うつすらと傷の波打つラムネ瓶
ラムネ干しカチンの音はなお涼し
知らぬ間に押されて沈むラムネ玉
少年の顔を歪めてラムネ玉
ラムネ玉袴で帰る弓道部
ラムネ瓶もう一人の吾かざし見る
イヤホンを外して鳴らすラムネかな
ラムネ玉いつでも出せる離婚届
まだ一軒残る駄菓子屋ラムネ飲む
ラムネ歴破片は傷跡玉転転
よき眺めじゃぞ山城に子とラムネ
ラムネ飲む膨らんでゐる天守閣
ラムネ玉もどり猫の目吊り上がる
ラムネ瓶割って溶かして海の青
丸洗ひしたき地球やラムネ玉
参道の猫と金魚とラムネ売り
山登りラムネラムネと競ふ子ら
ラムネ飲むゴクゴク辛さ忘るまで
ラムネ抜くときなべて腰が引け
飲み干してなほ手に重きラムネ瓶
軽きかなプラスチックのラムネ玉
ラムネ瓶握る手の皺透き通る
ラムネ飲み細く吐く息雲を押す
これでもしずかなつもりよラムネ玉
ラムネ玉落つどうしても軋む椅子
鳴り方に悩むビー玉ラムネ水
兄の手にひかれラムネ屋までの道
口中に弾け燥ぐやソーダ水
ラムネ水かすかな甘み痛む胸
ラムネ玉いつも誰かとゐて淋し
かねてより街の誇りのラムネ乾す
都電乗り豆単開き手にラムネ
ビー玉が欲しくて強請る吾子ラムネ
少年はラムネを翳す喉仏
ラムネ飲むとき手に香る針葉樹
沢水にラムネ沈めし母の待つ
ラムネ抜く喪失の谺嶺に果つ
ラムネの子隈無く濡れてをりにけり
ラムネ飲む遊び仲間の顔がふと
高らかに瓶を鳴らしてラムネ乾す
子に返るためのまじなひラムネ抜く
ラムネ壜観音に見え下山あと
孫たちのねだる風呂上がりのラムネ
ラムネ玉弾けるように逝ったきり
酒ならぬ別れた夜のラムネかな
ラムネ手に七回裏七対七
お祭りのラムネをしゃぶる現代子
未だ押せぬエンターキーやラムネ水
おすましの慌てゝくはふラムネ瓶
星空にまだ鳴ってゐるラムネ玉
ラムネ飲む昭和の歌を思ひつつ
駄菓子屋の床に転がるラムネかな
稽古終ゆ今日はラムネで物足りぬ
かつ丼を平らげて飲むラムネかな
ラムネ水希望を封じ込むる玉
約束のラムネを交はす月命日
青空に突き出してゐるラムネ壜
意地悪なガラス玉めとラムネ飲む
おばちやんの訛り懐かしラムネ玉
ラムネ飲む明日はおそらく別の街
氷浮かべラムネ浮かべて売られをり
喉を刺すラムネ逢瀬は今日限り
三世代並びラムネや里の風
とんでもない世の中になるラムネ玉
危惧種かな目高雀にラムネ瓶
地球儀をラムネ持つ手で指さして
ビンの中海を臨むやラムネかな
あてどない思い堰き止めラムネ抜く
星空に音が響くよラムネ玉
飲み干せばラムネ壜より青い空
ラムネ玉幾度も止めしラムネ水
ジュワジュワと泡立ち溢るラムネ瓶
そっとふれラムネの瓶のくびれかな
ラムネ玉抜きたるほどの決意あり
顔面に力を込めてラムネ抜く
ラムネ瓶盥は水を溢れしむ
放課後の真中に鳴りぬラムネ玉
しゅっぽんとコロナ撃墜ラムネ抜く
退院を祝ふラムネのげっぷかな
海風やラムネ売る声路地眠る
転び方教わる蕩児ラムネ玉
白光にゆつくりラムネ瓶たふる
仁王立ち素敵ラムネを持てばなお
一刷毛の飛行機雲やラムネ乾す
ラムネ玉めぐらせ鳥を見てをりぬ
靴擦れをさすって飲み干すラムネかな
先生と化石巡検ラムネ飲む
若衆のラムネ飲み干す喉仏
光ごと盥に刺さるラムネかな
ラムネ瓶吹いて友待つ路地の裏
ラムネ水空にはなれぬ空の色
天頂やラムネ玉突く舌の先
ラムネ玉木立を青く覆す
人体は水とラムネで出来にけり
飲み干せばチャラと寂しきラムネ瓶
掘り立てのタイムカプセルラムネ水
喉より食道を落つラムネかな
ラムネ飲み足湯に媼足揃へ
目瞑りてラムネの色を身へ移す
首の骨こきと鳴らしてラムネかな
千メートル泳ぎし爺のラムネかな
手づかみの泡音たてしラムネかな
ラムネ玉を昔も今も鳴らしをり
ラムネ飲む兄を見上げし頃の事
じゃんけを止めて分け合ふラムネかな
湯上がりや珈琲牛乳よりラムネ
仰ぐとは山見ることよラムネ飲む
飲み込んだ空の青さやラムネ色
透き通る水の寥しやラムネ水
ラムネ玉ころり恋バナ切り上げる
ガンダムのやうな外観ラムネ瓶
ラムネ有り〼の張り紙朱書きにて
ラムネ飲む正面に山寺を据ゑ
井戸水に浸かりてラムネ甘味まし
ラムネ飲む権太の胸に悲哀の珠
感情の筋肉鍛えラムネ玉
特大のげっぷ幼き子にラムネ
ラムネ瓶ひと口ごとに日に翳す
単純は何より深いラムネかな
「ごめんね」と言えない二人ラムネ飲む
私にも父にもラムネ少年の日
流れたる夜汽車の煙ラムネ玉
弁天で洗ひし銭でラムネ買ふ
ラムネ置くラジオの中の子の問ひに
椅子深くラムネ飲みほす老夫婦