きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「葉桜」__金曜俳句への投句一覧
(4月24日号掲載=3月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

葉桜は夏の季語ですが、今年は花が早かったので葉桜となるのも早そうです。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年4月24日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【葉桜】
葉桜となりて突如の仲違ひ
葉桜や綴り始めたエピローグ
葉桜と塀のあはひを教誨師
葉桜に転じる一夜月明り
葉桜や紙で指切る会議室
葉桜や共に頑張る友があり
観覧車の今が頂点花は葉に
葉桜や若き日隠せしことありて
葉桜や空に鳥の映え木から木へ
葉桜や今宵の夢も緑(あを)に染む
葉桜や少年の耳朶透き通す
三分咲き可愛い乙女葉桜も
散りぎわに未来をのせて葉桜と
葉桜のさつきのことを忘れけり
葉桜にはじまる里の掲示板
葉桜や朝日に透けた瑠璃と玻璃
責任を背負って葉桜風に揺れ
葉桜にやさしい人のふりをする
葉桜の上に波ある伊東かな
葉桜の葉脈透ける陽やわらか
葉桜に平常心や木々の声
葉桜や赤き鳥居の連なりぬ
人間に上座と下座花は葉に
通せんぼ葉桜を待つ上野かな
葉桜やようやく慣れし通勤路
自販機のコールド増えて花は葉に
葉桜の陰濃き中の避病院
濠の色更に青みし花は葉に
葉桜や埴輪はいつも口開けて
葉桜の重なり合うて光る道
雨やみて葉桜のうへ輝けり
葉桜やきれいな言葉世に溢れ
葉桜や花見ぬままの藤の籠
満開は山が恥じらう葉桜よ
葉ざくらや螺鈿の箸を揃へ待つ
葉桜や化粧濃きひと横過ぎる
サイドミラー葉桜の道嫁ぐ道
葉桜の宵に手にとるグラスかな
葉桜や教室の窓開け放つ
葉桜を観て安らげり日本列島
葉桜に追われ畑の畔に立つ
葉桜を疾風刹那千の緑
葉桜を木戸にたつぷり武家屋敷
葉桜の花一片に鼓動あり
山彦や葉桜打っては山巓へ
葉桜や立山連峰どかと載せ
葉桜や熱を帯びたる土踏まず
葉桜や研修二日残りたる
籠り癖葉桜愛でるの歳となり
葉桜や馴染みの寿司屋代替り
缶珈琲呷る明け番花は葉に
葉桜のなかの小鳥の告げる朝
葉桜や友だち百人できぬまま
花は葉に捨てし肩書未練なし
酒飲んで地味な葉桜になる覚悟
葉桜や軽き葉影の石畳
葉桜や仕事いそしむのみとせし
花は葉に砂糖減らしてタルト焼く
葉桜の夜や魍魎の憩うなり
葉桜や膝の予報は今夜雨
葉桜となりてけふの日定まれり
葉桜の光ふるなり乳母車
葉桜のかすかに揺れてそよそよと
葉桜や国旗掲揚塔の空
葉桜やもう青春ではありません
葉桜や値引きシールを待つ時間
葉桜や横目で真似る太極拳
老いてなお葉桜となり生きんとす
葉桜や四条大路の突き当たり
葉桜や若き詩人は血を吐けり
葉桜を仰ぐあの人今日もいる
葉桜に落ちる金星後夜祭
いきなりの謝罪電話や花は葉に
葉桜や切手を貼つてから祈る
風の揉み合うて葉桜より光
人去りて幾許もなく花は葉に
葉桜やパントマイムに足停めて
葉桜に一輪咲きのあどけなさ
星空を青く葉桜くぐらしむ
葉桜になって必ず通る道
葉桜や源氏の訳を読み比べ
葉桜の奥に開ける楽譜かな
葉桜や自粛自粛の世の中に
葉桜の天蓋に立ち気息聴く
葉桜や齢重ねて今年また
ベッドごとうつす部屋替え花は葉に
雨となり葉桜の影地に潜む
葉桜の風を追ひこす一輪車
葉桜や修理幾年国宝寺
葉桜や踏切五分閉じたまま
葉桜や子の為に執る針と糸
葉桜のこのままずつとずつとだよ
葉桜や掛け声美しきランニング
廃校の門葉桜のねむたげに
葉桜や終活せよと急かさるる
葉桜の口遊みたるハ長調
葉桜やトランペットに映る空
葉桜や行き交ふ人も秘密めき
葉桜や老いた大型犬の昼
猫だけが知つてる穴場花は葉に
葉桜のころパンデミックの収まりしか
葉桜や二人乗りして通り抜け
葉桜や向ひの女のお引越し
葉桜やひと息つきし畳店
葉桜や音楽室のピアノ止む
葉桜の緑に染まり木霊となる
外せない伝言板や花は葉に
葉桜や手品師の鳩消えしまま
早すぎる葉桜そよぐ友の墓
葉桜や人影に鯉集まり来
アフリカの太鼓を股に花は葉に
葉桜や地味に大人になる喜び
葉桜や正体みせぬコロナウイルス
人波の誰も気づかず花は葉に
葉桜のそよぐ天狗の小さき羽根
葉桜のせせらぐ如く発光す
葉桜の坂を下りて伊豆の海
葉桜で心和らぐコロナショック
葉桜や半ばを過ぎた長い橋
幻花かや深山葉桜雲動く
大仏のそびらふくふく花は葉に
調伏の護摩焚く堂宇花は葉に
葉桜に水の絡まる登山道
良寛の庵訪ねん葉桜に
葉桜や花より好きと言ひしひと
葉桜や質に流れた腕時計
葉桜の揺れる音より透きとほる
葉桜のトンネル抜けて母の家
廃校の黒板に文字花は葉に
葉桜の不要不急の旅に出る
飛行機は雲無き空に花は葉に
波トタン朱に塗り直し花は葉に
山下る里の廃校花は葉に
ジェットコースター葉桜に見え隠れ
二人子をひとりで押して花は葉に
文庫より半券ひらり花は葉に
葉桜や椅子も机も縮みたる

【不明】
猫の子の親を離れて嘆息す
草の上春の虹とを比較する
春の虹ボール遊びが流行り出す
初めから今までの事春の虹
改善を促せないのが猫の子だ
大地には猫の子二匹欠伸する