きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「蕗の薹」__金曜俳句への投句一覧
(2月28日号掲載=1月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

ほろ苦く風味がある「蕗の薹」は、蕗味噌や天ぷらなどにする「春の味」ですね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年2月28日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【蕗の薹】
蕗の薹美味しそうねと吾子が云い
スケボーでふざける人あり蕗の薹
蕗の薹川へ支流の合ふあたり
捨缶の崖にあまたや蕗の薹
トラクターの覆ひの埃蕗のたう
蕗の薹一つ見つけて次々に
金色の朝日差しけり蕗の薹
料亭の土下座や苦き蕗の薹
寿がいびと蕗の薹煮る門にかな
かんでまた春の音する蕗の薹
畦道に寄り添い芽吹く蕗の薹
人住まぬ心の景色蕗の薹
手ごたえの紛うことなき蕗の薹
みちのくの渓深ければ蕗の薹
マラソンのコース決まりし蕗の薹
蕗の薹揚げて確かな春となる
蕗の薹波の音なき海見えて
蕗の薹地力がこもる苦みかな
朝陽さす土手に顔出す蕗の薹
東京へ戻りしバスや蕗の薹
その色を何に例へむ蕗の薹
蕗の薹育たぬ土や分譲地
鎌倉に寄り添ふやうに蕗の薹
人声のかむさる日中蕗の薹
初物も子供苦手な蕗の薹
ころころと日差しまろびぬ蕗の薹
手土産はかごに三つ四つ蕗の薹
よるべなき身でありはつる蕗の薹
二冊目の交換日記蕗の薹
蕗の薹摘みし手のひら香りけり
蕗の薹至福の時は長くなく
星のごと庭一面に蕗の薹
蕗のたう空の広さを知りたくて
よく喋る子供だったよ蕗の薹
蕗の薹義絶せしまま父逝きぬ
清冽が一言いへば蕗の薹
中日新聞でつつむ蕗の薹
やさしさを少しづつ出す蕗の薹
ぴーひょろろそこにあるがねふきのとう
奥入瀬の湖に開けて蕗の薹
蕗のたう土のついでに触れにけり
蕗の薹差す日を春の日と名づけ
湿原を流るる雲や蕗の薹
スーパーの蕗の薹パック素通りし
市民マラソン応援とぎれ蕗のとう
奇岩立つ岬の土手のふきのとう
日本海風のすさぶや蕗の薹
蕗の薹散歩の父の手の中に
ひよこ抱く両手蕗の薹の朝
雪崩跡の崖に芽吹くや蕗の薹
餞を伝言板に蕗の薹
ぬくき葉の芯の冷たき蕗の薹
蕗のたうはこべの側で堂々と
張り詰めたるこゝろ緩めし蕗の薹
千昌夫の歌なつかしき蕗の薹
ふるさとを持ち上げたるや蕗の薹
蕗の薹苦さ好みし人は今
山間に蕗の薹ありと直感す
蕗の薹海抜ゼロの土手の下
宵の雨明日はきっと蕗のたう
蕗のたう目星き星の在り処
蕗の薹山道もたげる遍路旅
蕗の薹ふたつ目からはおちこちに
蕗の薹母の残した日記帳
子どもより大人楽しき蕗の薹
蕗の薹女の声のよくとほる
雪割れて顔を出してる蕗の薹
蕗の薹からりと揚げて妻の顔
揺らぎたるゴンドラの影蕗の薹
蕗の薹緑大事の料理かな
蕗の薹宝のごとく掌に
蕗の薹系図の中に我もをり
東京が遠くて蕗の薹苦し
蕗の薹採る足腰のままならず
いにしへの都のかほり蕗の薹
枯色の蕗の薹駆り猫走る
存へてあの里あの涯蕗の薹
蕗の薹愛がつまって椀の中
限界てふ集落に出づ蕗の薹
薬膳の迷い箸して蕗の薹
見え隠れする蕗の薹誰の物
里暮らし土地の人から蕗の薹
「気づいて」と声が聞こえる蕗の薹
庭石を持ち上ぐるかにふきのたふ
廃校の校庭に出づ蕗の薹
しなやかに関節を曲げ蕗の薹
ぬかるみのはじまるところ蕗の薹
腐葉土の黒きを抜けり蕗の薹
ふきのたう地球の底に海あると
子どもらのはじける笑ひ蕗の薹
蕗の薹忘れし鎌の柄のあたり
土手沿ひにダムまで行かむ蕗の薹
縁石にかくるスロープ蕗の薹
和らぎし日差しのなかの蕗の薹
蕗の薹先頭小さく前ならへ
そよ風にかすかな震へ蕗の薹
山峡に消ゆる汽笛や蕗のたう
初恋のほろ苦さあり蕗の薹
倒木の木っ端を笠に蕗の薹
学び舎の堅き蕾や蕗の薹
ほろ苦し昼の蕎麦屋の蕗の薹
蕗の薹割れば香りの広がりぬ
ふきのたうこのやさしさをなんとせむ
曲がる川今日蕗の薹見つけたる
堤の日向先駆の蕗の薹
束ねたる香の眠りをり蕗の薹
蕗の薹食べられなければ意味がない
蕗の薹葉山の風のおそろしき
ふきのとう手の飯つぶと膝の泥
飼い猫の帰還よろこぶ蕗の薹
しわぶきや竹ざる揺るる蕗の薹
震災の忌も九度目や蕗の薹
老いなどは捨ててみやうか蕗の薹
蕗の薹もらって始めた里暮らし
電波望遠鏡めきし蕗の薹
羽を丸め大空を見し蕗の薹
せせらぎのふるさと通ひ蕗の薹
一口で子供吐き出す蕗の薹
路地裏のそのまた路地のふきのとう
田舎にて柔らかい風蕗の薹
蕗の薹枯葉の上や水むるむ
蕗のたう去年とおなじ苦さあり
蕗の薹試験間近かき獣医生
我が影のしやがめば大き蕗の薹
裏山の父の遺産の蕗の薹
お土産と袋から出す蕗の薹
妖精は深夜勤務かふきのとう
蕗の薹姑になる覚悟あり
ごめんねと頭をかいて蕗のたう
ふきのたう風の流れの平らかに
蕗の薹たまにいいことありますね
誰も来ぬわれの居場所や蕗の薹
しろじろと広がる香り蕗の薹
ふきのたふ一筆箋の薄湿り
蕗の薹葉つぱのミルフィーユの下で
子どもらの宝探しか春の蕗
妙法の妙のあたりの蕗の薹
ふきのとう会津の人だけの秘湯
庭の端の秘密の在りか蕗の薹
声に耳塞げど止まず蕗の薹
別の道見つかる予感蕗の薹
腑に落ちて雅を失わず蕗の薹
臆病な匂ひありけり蕗の薹
廃村の水路づたいに蕗の薹
細水の堰にあふるる蕗の薹
ふきのたうバッタが原へつづく坂
街に来て買ふものと知る蕗の薹
里暮らし初の喜び蕗の薹
蕗の薹神の神位を気にし出す
蕗の薹食むか眺むか迷う吾れ
しんがりの走者見送る蕗の薹
蕗の薹椀の中にも古里の香
蕗のたう遠き太鼓に誘はれて
蕗の薹万世一系今年また
蕗の薹衣の内のうす緑
赴任地の朝の食卓蕗の薹
廃線のバス停在りし蕗の薹
結果として蕗の薹踏む化石探し
駆け廻る子どもらのごと蕗の薹
人よりも牛多き町ふきのとう
熊野道験者留まる蕗の薹
ほろ苦き風の武蔵野ふきのたふ
雨後の土手土をもたげる蕗の薹
試歩の母休ませてゐる蕗の薹
雑草にかくれんぼする蕗のとう
私語多き葬列行きぬ蕗の薹
葉隠れのさみどりひとつ蕗の薹
蕗の薹二つ見つけて空青し
蕗の薹水音とどく開墾碑