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兼題「紫陽花」__金曜俳句への投句一覧
(5月31日号掲載=5月6日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

「紫陽花」は梅雨に似合う花ですね。咲き始めは白で次第に色が変わるから「七変化」とも呼ばれます。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2019年5月31日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【紫陽花】
紫陽花やはじめて話すクラスの子
紫陽花の白々照らす始発駅
モネの色を小さくまとめ濃紫陽花
或る人に雨の匂ひや四葩かな
紫陽花に囲まれ土門記念館
紫陽花を千切りし指の慙愧かな
あぢさゐの毬をうかぶる銀ボウル
紫陽花の雨の闇夜となりにけり
葉の緑紫陽花の青際立てり
紫陽花や路面電車の帰る宵
班ごとに食べる弁当濃紫陽花
紫陽花の揺れて触れざる鞠二つ
紫陽花のひとひら赤子一握す
あぢさゐや糸つけしまま仕舞ふ針
紫陽花の下に渓流渦を巻き
紫陽花の一枝ずつを墓に挿す
紫陽花に埋もるるポストうす曇
紫陽花や漢三日で貌変わる
紫陽花の群れへ鐘の音高野山
紫陽花の青や胎の子さすりけり
車椅子連ねて紫陽花の小径
雨にまた一人上手の濃紫陽花
紫陽花のひとつひとつの影日向
あぢさゐや読み耽る本きのふけふ
紫陽花の色わけてゐる遊歩道
紫陽花の露に触るれば染まるらむ
人嫌ひでとほす一日濃紫陽花
七変化八百屋お七の墓に咲く
三度目の恋はあぢさゐ色放つ
紫陽花の控へ目な色目立つ色
水彩をはじくクレヨン濃紫陽花
紫陽花や石段駆ける剣道部
紫陽花の水に映してなほ藍し
紫陽花や汲むことのなき井戸の水
紫陽花や隣人なべて話好き
紫陽花の待つ雨やさし恋便り
銅鐸をうづめ紫陽花島おほふ
雨の日にはあじさゐ雨の色になる
紫陽花やウグイス嬢の声薄く
制服に囲まれ孤独濃紫陽花
雨の弾力あじさいの独り言
紫陽花や離婚話が宙に浮く
紫陽花の屋敷いま純潔を捨て
晴天を紫陽花の花恨みをり
紫陽花や夜行バス着く上野駅
紫陽花園牧師と僧侶が会話する
遺伝子を組替える色濃紫陽花
ぬかるみの紫陽花の横最徐行
化粧する雨のシグナル濃紫陽花
あじさいの蹴りやすそうな位置にあり
紫陽花の色鮮やかに目眩く
婆の島あぢさゐ色の声を掛け
白紫陽花明るく招く力秘め
紫陽花の考へてゐるごとく濡る
紫陽花を手向け和らぐ人の罪
荒庭に新星のごと白紫陽花
紫陽花の雨に景色を入れたがり
紫陽花を褒めし人きょう三人目
紫陽花の飲み干すように水欲る
紫陽花やつむじ頭の群くづる
手拭ひのすぐに濡れたる四葩かな
紫陽花やしじまの深き東慶寺
写真みな直立不動七変化
紫陽花の色ゆれてゐる路地の風
紫陽花や町の余白となる空家
紫陽花と微笑み交わす雨上がり
紫陽花に墜つる光の容赦なく
ジョギングのをみな乳振り七変化
紫陽花を愛するひとを妻にして
悲しみに寄り添ふ雨の濃紫陽花
紫陽花や昭和の母は眉太く
紫陽花や寺の始まる所濃く
あぢさゐや幻視紀行の始まりぬ
裏木戸や紫陽花の青滴れり
七十を超えて一線四葩咲く
紫陽花の紫だけを生けてをり
紫陽花の葉を水滴の零れゆく
六甲の谷間に咲けるシチダンカ
両岸の紫陽花飛ばす渡し船
あぢさゐに指紋をひとつ置いてゆく
七変化つひにをとこを手放さず
おしゃべりな末の妹七変化
紫陽花の中にブラックホールあり
紫陽花の他皆捨てよわが家から
紫陽花や小さな嘘の重なれり
ブーケトス幸多かれと七変化
その寺の紫陽花検索何回も
古寺に隠し階段七変化
濃き薄き心の色や七変化
紫陽花の青深みゆく古き寺
紫陽花の雫を払ひ逢ひに行く
紫陽花が咲けば墓参の日を決める
サイフォンで淹れるコーヒー濃紫陽花
この恋はきつと変はらず濃紫陽花
あぢさゐや乙女のうなじしなやかに
紫陽花の世の移ろひを映しけり
シーボルト運びし四葩艶やかに
紫陽花や露の雫も無駄にせず
紫陽花に七堂伽藍埋もれて
紫陽花の灯台囲む竜飛崎
紫陽花や日影を好み路地の奥
オランダの書館の鍵や濃紫陽花
紫陽花の庭の離れや佳人住む
囁いて囁きあつて濃あぢさゐ
紫陽花や紫煙に嫌な貌もせず
紫陽花の青に染まれる放射能
七変化恋を覚えし色男
紫陽花も地球も水で出来てゐる
あぢさゐや確かあなたはお母さん
紫陽花の庭におどけし仔犬かな
紫陽花や墓へ二三のワンカップ
紫陽花や付け爪色を変える朝
紫陽花や遂に結論出ぬ会議
紫陽花やドレスの色を決め兼ねて
消火栓ふさぐ紫陽花けふ手折る
たまりゆく疲れあぢさゐ色をして
紫陽花にジャズカルテット音絞り
紫陽花の色や晴れても曇つても
雨なかに干さるる手巾濃紫陽花
あぢさゐが隣家のブロック塀を越ゆ
微睡めど紫陽花無情色変えず
紫陽花のそよぎにしとど濡れにけり
尋ねてふ何色なるか七変化
あぢさゐの朽ちゆくことも生きること
カタカナのあふる寺町四葩濃し
紫陽花の暗がりいづる無音かな
犬小屋を仕舞い白紫陽花まぶし
紫陽花やをんなごころの変はりやう
吾より長くゐる紫陽花の驕りかな
紫陽花の仕切りを超えて花いくつ
紫陽花のやはらかに色失へり
母異変紫陽花乱す救急車
紫陽花の淡きを選び母墓参
廃校の花壇そのまま濃紫陽花
紫陽花を離れ虚空へ青い蝶
紫陽花の藍より憂ひふつふつと
折れ朽ちた紫陽花枝に芽吹きあり
ひと群の紫陽花だけの我が家かな
紫陽花の今日の色には迷ひなし
紫陽花や猫らあつまる夜の園
あじさゐの毬いやになるほど重し
紫陽花の凭るる窓の薄暮かな
生きる事自体が美学四片かな
一周忌に呼ばれし宵や濃紫陽花
水溜り紫陽花ぬれて映りをり
公民館陶芸展や濃紫陽花
紫陽花の嬉しき朝とさせし色
紫陽花を見守る騎士めける狛犬
紫陽花のこの色をとて母に剪る
即席の手書き看板紫陽花へ
古墳跡紫陽花園となりにけり
紫陽花の切り口の脇咲く花や
紫陽花の八方美人を誹らるる
紫陽花の毬よ爆発五秒前
紫陽花や形が似たりUFO
紫陽花の旅によろしき雨予報
バス停の椅子紫陽花に隠れをり
紫陽花に埋もれし棺の蓋を閉ず
さびしさのうつむきかげん濃紫陽花
紫陽花や愛の名をもつ管楽器
紫陽花のけふはどなたと逢ふ色に
はれわたり枯れあぢさゐの太き骨
紫陽花の迫る石段杖の音
紫陽花や信濃の恋の水鏡
風に鳴るにはとりの小屋濃紫陽花
あぢさゐを描かば青の色とりどり
長谷寺や石仏抱く濃紫陽花
あぢさゐの重みにかさぬけふの幸
紫陽花の上の学帽光る紋
あぢさゐの藍にじみ出づ夕闇に
紫陽花や顔寄せ合うも孤高なり
あぢさゐや硝子にうつる居間淡し
紫陽花のどれも可もなく不可もなく
紫陽花を描きて浸かる露天風呂
紫陽花や老齢候補辻立ちす
吾子をおくやうにあぢさゐ活けにけり
紫陽花や舟の傾くときしづか
まなうらに紫陽花の波夢路果つ
雨続きもたげ難しや刺繍花
紫陽花や山門過ぎて手水舎に
紫陽花やデシケーターにリトマス紙
紫陽花の埋めしところより降る
四葩咲く中性の猫ばかり飼い
試し撮り紫陽花よりのカメラかな
紫陽花や色を変へつつ雨を待つ
紫陽花や浄土潤す小糠雨