きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「摘草」__金曜俳句への投句一覧(3月25日号掲載=2016年2月29日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年3月25日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
※掲載後に追加あります(「締切前にメールした」との連絡があったため)

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【摘草】
摘草やカンパネルラの小さき背
摘草の雑炊啜り暖まる
草摘むや祖母の畑の野にかえり
船頭に手を振つてまた草を摘む
よき草を摘み得意げな髪の揺る
悪童のころふと想ふ野蒜摘
夕焼けを背中に受けて芹を摘む
胎の子に草の名言ひて草摘めり
芹摘みや薫りたどりてここよここ
摘草やサンドイッチのハムチーズ
飼猫の耳にも似たる草を摘む
摘草の名を教わりし人何処
摘草に暮れて土手道とぼとぼと
摘草や遇う人はみな知己のごと
円墳を上りきつたる土筆摘
摘草や気づけば土手にひとりかな
摘草の行きどころなく乾きけり
摘草や頭上の雲に気づかずに
草摘みて袋に入れる除染かな
待ちわびる摘草の餅届けよう
ジェット機の時折過ぎる草を摘む
過疎の村草摘む人もなかりけり
摘草や踞めば香る磯の風
摘草や犬のリードを足で踏み
幼子が母の真似して草を摘み
指先を染めて摘みぬ蓬籠
舟の来るまでのひととき草を摘む
摘草や大橋鎭子語りつつ
摘草の鼻に甘し口に苦し
佐保川の岸に草摘む少女かな
土筆摘む丘は今でも心の帆
摘草や堤のかげはむかふぎし
摘草やまろき背中に陽のたまる
一生をここらで蓬摘んでをり
摘草に薬草なると教へし子
土筆摘む手は休みなく口動く
摘草や祖母を色濃く受継げり
摘草や訛りのちがふくにざかひ
蓬摘む怪我の恐れを忘れたり
摘草や寡黙の中で虫になる
白き杖もどかしく指摘草を
摘草やきりたんぽには芹入れよ
摘草の原寝ころびて雲雀聞く
摘草や萬葉人の心地して
亡き母に尋ねつつ草摘みおりし
世の平和摘み草競う子らの声
子が笑い母も笑いて草を摘む
摘草の野と変はりたる宮址かな
摘草やみみずにょろにょろ這い出した
何事に目の効くをんな蓬摘み
雲間から射す光背に摘草を
草摘みのあひだ動かぬ園児帽
あの橋に辿り着くまで草を摘む
草摘むや明日から牛の入る牧に
摘草や沿線歩き悟りけり
摘草や離れては寄るちぎれ雲
額田王舞い降りて摘む草ここに
摘草をかたくなに子の握りしめ
ゆうみくんはなちゃんたいちゃん草を摘む
畑来てなんとはなしに草を摘む
摘草や篭編む人も出でにけり
摘草や程良く道を迷いけり
ゆふぐれに家のほとりの草摘めり
摘草や残りし姉の郷便り
摘草や適当に摘み叱られし
ひとときの妻の忘我や蓬摘む
摘草に無断侵入国有地
摘草やどもりの妹の頬を敲つ
摘草や小さく見ゆる馬二頭
戯れが本気となりて草を摘む
海からのひかり膨らみ草を摘む
摘草の子らはいつしか散り散りに
摘み草や一草口にくわえけり
照り返す光もろとも草を摘む
摘草や光啄むはぐれ鳥
草摘めば鉄路の匂ひ漂ひ来
摘草や立つも屈むもどつこいしよ
摘草や母屋分家と隣合ひ
摘草せしどてくまなくに護岸壁
恋の歌妻にささげんと草を摘む
大空を暫し仰いで草を摘み
今年から二人になりて草を摘む
摘草の老人いつもひとりごと
摘草の地に見つけたる焼夷弾
摘草や股のあひだに丸き雲
摘草の萎れて吾子のポケットに
摘草の少しばかりが山となり
草摘めばテニスコートの歓声が
ごつごつとした手の父の野草摘み
摘草や離ればなれになるふたり
摘草の天婦羅つつく夕餉かな
摘草や遠く眠れる媼たち
摘草をする草もなき焦土なり
草を摘む見目よき花は野に残し
摘草やいつしか夕べ迫りきて
摘草や隣りは何を摘む人ぞ
蓬摘葉脈柔和土真黒
恍惚の母と野に出で草を摘む
虚を捨てし摘み草生ける牛乳瓶
地下足袋の母の摘みきし蓬かな
摘草や戦後貧しき食思ふ
摘草や掌に移香のありにけり
孫と摘む草の種類を争そえり
草摘みの声の飛び交ふ小川かな
母の裏庭より摘みし草捨てる
草摘んで誰にあげるか思案せり
山羊乳の青き甘さよ草を摘む
摘草の幼女の背なに光降る
摘草や変らぬ姿古代より
先客を追い越さぬよう草を摘む
摘草や玉川の土手さかのぼり
摘草に散歩の道を変更す
摘草や筑紫次郎は海に入る
摘草の二人揃いのスニーカー
摘草や貨物列車の過ぐる昼
摘草で曲がった腰や伸びきらず
礎石のみ残りし城址草を摘む
立ち話ばかり摘み草失せりけり
摘み草や子らはそこらを跳ね回る
摘草や大河をとなくながれをり
摘草や万葉集の昔より
摘草に大きな空のありにけり
子のこころ離れ初めたり蓬摘む
摘草や本気の母の腕まくり
背を丸め詫びるがように草を摘み
また妻と同じところ草を摘む
摘草の母子かへりもさがしけり
嬉しげに摘み草抱え母帰る
蓬籠あふれるほどに笑みもそう
摘みきたる土筆小鉢に分かち合ふ
摘み草や思い描くは晩の酒
摘草や古代王都の石畳
草摘みて百円玉と出会へけり
摘草や草にも茎にも汁があり
摘草や夢は畦道かけめぐり
踏みしめて摘んだ草なり父にほう
摘み草の残心として花摘みぬ
摘草や卓に並べし夕想う
摘み草や古き唱歌をそのままに
除染後の土の名知らぬ草を摘む
ためらひをためらひのまま草を摘む
摘草の昼餉よもぎの匂う手で
人の世の不始末責めず摘草は
つくし摘みいつしか川に溶けゆく子
シベリアの大草原の草を摘む
草摘のうしろを走る澤の水
摘草やしづかに山の雲流れ
草摘みし昨日の土手を見ずに過ぐ
だんだんに本気になりて草を摘む
おもむろに山羊に摘草やる子かな
摘草や摘み残したる野の広さ
摘草や平原をゆく雲の影
バス停に草摘む人やバス過ごす
摘草やいのちやわらか水ぬるみ
あと五年祖母の集めたる摘草
摘草の人に近づく人の妻
不変なる籠の重みや蓬摘む
夕飯の一品となりし芹を摘む
摘み草やよちよち動くクローバー
上京の姑と連れ立ち蓬摘
手押し車にあふるる程の芹を摘む
摘草や小川のゆるく流れをり
蓬摘む白き産毛のみつちりと
先客と連れのごとくに草摘めり
薬効のありげに匂ふ草を摘む
いい草とそこそこの草摘みにけり
萌え出ずる摘草の肌艶めかし
摘草の夜はみどりの爪の色
名を知ればなほ楽しきと草を摘む
摘草に大きな空のありにけり
摘草や幼き頃の香りして
摘草やひとつの悔ひがつきまとひ
草摘んで別れの言葉言ひ淀む
摘草のにほひの父の帰りけり
故郷の山をおほきく草を摘む
清流の音もろともに草を摘む
草摘にいつしか混じり下校の子
それぞれの奥へと草を摘みにけり