きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「春の服」__金曜俳句への投句一覧(3月25日号掲載=2016年2月29日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年3月25日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
※掲載後に追加あります(「締切前にメールした」との連絡があったため)

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

【春の服】
姉作るしみじみ嬉し春の服
珍しく行き先訊かれ春の服
絶好の家出日和や春の服
春の服風に遊ばれ風を吸う
月曜の覚悟を決めし春の服
お下がりと言へど嬉しき春の服
春服の貴女にもはや追ひ付けぬ
散歩道春服男女隙間有
ポケットの数は変らず春の服
樟脳の嗅いが残る春の服
肌の水弾く娘の春の服
春の服緊張包み式終える
春服や化粧を少し変へもして
春服のかろきに胸の重さ知る
春の服寄り道せんと独り言ち
春の服いま高らかにファンファーレ
風の中放射能ふわふわ春の服
春服の背にかけるなり散ってゆく
ポケットに小銭一枚春の服
春服の身の軽きかな独り旅
もつとも妻の妻らしくなる春の服
何やらと着ていないよな春の服
いつまでもなにも触らぬ春手套
春の服平和の謂として求む
船進み岸に明るき春の服
何がしか弾くる心春の服
ときめきは着る頃失せり春の服
春の服楽譜を捲る風の生る
春コート掛ったままで一週間
娘らは寒さこらえて春の服
あのひとのための水色春セータ
病得て春服の袖通さまじ
そうそう簡単でもない春の服
陽が沈み死出の旅かな春の服
公園をランチタイムの春の服
姿見に視られておりし春の服
春装や待ち時間でも俳句読み
脂くさき肌は拭えず春の服
春服の人妻そつと角曲がる
白き皿春服の蝶次々と
野島崎髪なびかせて春の服
春の服吾は今年も生きており
春装や一書のほかは手ぶらにて
冬惜しみ寂しき午后に春の服
玄関をすつと抜けゆく春の服
春服やはじめて見たるネックレス
春の服メール便にて届きけり
春服が渋谷の街を闊歩する
春の服選び選びて年を知る
口笛のアルペッジオや春の服
春の服孔雀のやうに歩きをり
恋をする色であらはる春の服
春服と余生いづれの丈長し
春服の変われば替へる紅の色
久方に友の集へる春の服
春の服痒みの為に穴が空き
春服で箪笥華やぎ肥やしかな
新しき社章を胸に春の服
どうでもいい無職の人の春の服
春服の匂いの通り過ぎる夜
春の服着て袖口の広さかな
汽車降りるやや早過ぎし春の服
竹棹に並べて楽し春の服
春服の風よろこばす橋の上
装へば孫膝に来る春の服
退院は自分の足で春の服
春の服帽子の庇上に向け
教壇に深く一礼春の服
ポケットに夢の切れ端春の服
きりり立つ今日の決意の春の服
春の服三面鏡の奥までも
教会の最前列や春の服
いくたびも鏡にむかふ春の服
歯の痛し我も歯医者も春の服
春服に合わぬや今朝の無精髭
春服や一枚皮を剥ぎしさま
富士迫る心許なき春の服
春の服今朝の寒さに出しそびれ
転勤もはや慣れてきし春コート
曇り陽は白くたおやかに春の服
ふわふわと風と遊ぶや春の服
すれ違ふ喪服冥めて春の服
マネキンやさも軽さうに春の服
春服や青年ひとり朝に満ち
春服になる街中の喫茶店
大阪や春服の犬ありきをり
春の服自我のとかくも替へたけれ
春服の三人いよよ姦しく
春服に非戦非核の十八歳
逢ひに行く言葉も軽し春の服
古びたる懺悔室より春の服
人波に期してまじるや春の服
予防接種の児に水玉の春の服
すれ違ふたびに揺れたる春の服
今日はひとり去年の春服を着よう
春雪をドレスとまとう椿かな
応援へ淡いピンクの春の服
愛猫を抱くべからず春の服
娘等は一歩先行く春の服
モノトーン伸びる影には春の服
今年着る去年はキツイ春の服
牧神が春服まとひ笛奏づ
平然と春服で遅れ来し
玄関に誰の足音春の服
滑らかに鎖骨あらはる春の服
もう会わぬ春色の服風に舞う
園児らのスキップ軽し春の服
春の服友達百人出来るかな
春服のまだ控へめな膝頭
新線の列車に映へし春の服
春服の靴下補修されて生き
やせ我慢して春服の一番乗り
後手に髪束ねをり春の服
箪笥から出すこともなし春の服
春の服大きいボタンで穴隠し
春の服今年流行りの紅をひく
春服の仕立て屋にある万華鏡
春服をひるがへらせて着任す
母と娘で取り換えっこする春の服
春服に恋する色の出でにけり
春服を送り出したる坂の家
黒髪の作家志望や春の服
不調和な体と心春の服
亡き人の年越す娘春の服
風吹いてこれが最期の春の服
春の服少しレースのついてをり
春の服喫茶店の後の電気店
一行の名刺出さるる春の服
若き声集いて散りて春の服
遺されし品々あまた春の服
春の服着けて娘の輝きぬ
春の服まぶたに残る顔に着せ
春の服なんの色かと尋ねられ
春の服色とりどりに並びをり
春の服着て声高くなりにけり
娘等ははや抜け出でぬ春の服
幼子も目を瞠りたる春の服
春の服一歩大きく前に出て
退院の子に誂へる春の服
花の名に詳しきひとの春コート
春の服スカートひらり
春の服孫は希望をまといけり
足早に改札抜ける春の服
往還に影すっきりと春の服
『銀座百点』頂きますと春の服
春の服モンブラン食べ手を汚し
春の服明日のために吊られゐる
ことでんの色と同じく春の服
去年娘(こ)着る今年母着る春の服
春の服鏡の精をあきれさせ
春の服通勤電車を淡く染め
ひとつ目の釦外して春の服
春服の色とりどりにオフィス街
春の服視覚の元気分け与ふ
消え残る記憶のひとつ春の服
地下街に生まれる微風春の服
春服のひらり美脚ののぞきけり
春服を纏ひ君発つ駅舎かな
春の服いたづらな風吹きにけり
春服の子を花束のやうに抱く
日も風も集めて春の服となる
春服の天使の羽根のやうな色
騙し絵をじつと見てゐる春の服