きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「水盗む」__金曜俳句への投句一覧(5月29日号掲載=2015年4月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2015年5月29日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

【水盗む】
水盗むお寺の鐘が早く鳴る
水盗む酒量いささか増えにけり
水盗む棚田の長き細き畦
雨乞いにかたりし夜に水盗む
もう誰も水盗人の名を言はず
水番に監視カメラを導入す
後継者なき農業や水盗む
出勤前急ぐ田廻り水盗む
水盗む闇まで闇の中で待つ
水盗む海苔を巻かない握り飯
水盗む己の様や星明かり
浮かびをる月は残して水盗む
水盗む生きる流儀のひとつふたつ
水盗む蛙よしばし鳴き止むな
水盗む道の半ばに地蔵かな
水盗む闇に紛れる不文律
火酒をもて焚きつけ水を盗ませる
天日を悪魔と決めて水盗む
守りたき命ありけり水盗む
残業や帰宅途中に水盗む
鉢合わせ水盗人の闇夜かな
水盗む過疎の部落に生き続け
水盗む敵は何処にも見当たらず
水盗む村の水路の右左
水番の交代告ぐる小声かな
薄明かり二人が回る水の番
いくたびも水番小屋と知らず過ぐ
お大師の満濃池の水守る
五月女に水盗み来る若者よ
野に臥すや水盗人を夢想して
水盗む瑞穂の流れ変へられず
水番や戦前の闇美しく
盗まるる水の拡ぐる堰の穴
立ち枯れて四公六民水盗む
大法螺や太平洋の水盗みたし
水番やパンク修理の腕捲り
溢れ出る母乳讃へし水盗む
水盗む猫に目撃されており
昔なら義民ともなる水盗み
水盗む夜は星座を仰ぎ見ず
水盗む妻子の寝顔思ひつつ
水盗む奴も亡くなり幾年ぞ
身構えてあかはら守る取水口
まだ若き水番の急く夜明かな
うらむなら天をうらめと水盗む
水盗む人もおらずや過疎の村
名水や盗むがごとく掬い飲み
捕まえて水盗人の若さかな
水盗むことのひとつに汚染水
盗みたる水に追はれて逃げ帰る
水盗む新月の夜に星満てり
水盗む控えしタバコ手の中に
取水口守りいもりの身構へて
水盗む心の隙はおのがじし
上の田へ上の田へ水盗めずに
水守もときに背に腹かえられず
水盗む気持ちが分かる哲医師は
我が溝へ水盗みたや足を拭く
詫びるよに静かに水戸開け水盗む
高鳴るは盗みし水の立つる音
水口の軋む晴夜に水盗む
水番や眠りいざなふ筵の香
水盗むほどの丹精切なかり
父の愚痴日参しても水盗まれ
百姓の言葉も死語や水盗む
せき板のゴミ取り上げる水の番
水盗む犬ならOKと言ふ不幸
新月に水盗人の陰二つ
水盗む民の末裔かも知れず
水盗むことも生き抜く農の知恵
世界から水盗むごと食輸入
水番の語るが如き莨の火
非常時の蓄へとして水盗む
水盗む手掘り隧道造りても
水盗人見て見ぬふりの夜が白む
水盗むかつて水呑百姓と
生か死かその選択で水盗む
水盗む農の盛りは今昔
幾度も両手を合はせ水盗む
水盗み子等に叱られ低頭す
早朝の水路もラッシュ水盗む
水盗むごくろうごくろうまあ一杯
流れにも意思のありけり水盗む
水盗む夜の星空仰ぎ見ず
月消へて星消へてより水盗む
水盗む恍惚もまた古老述ぶ
闇に聞く松風遠き水盗む
水盗む一鍬闇に響きたる
水盗む壺の蓋取り底にして
明日はまた明日のこととて水盗む
水盗む新参者はいかにせむ
水盗む見て見ぬ振りの妻子かな
水盗む棚田は世界遺産とや
水盗み樹木の立ち枯れ心待ち
水守りいもり半身に構へたる
スコップの忍ぶポケット水盗む
満天の星うらめしき夜水番
ふるさとや水盗む田も無くなりぬ
減反の世に水盗むこと絶えし
昨日より今日暖かくなり水盗む
子の寝顔守りたき気や水盗む
水盗むその手を神に返しけり
上流の誰が水盗む細き川
水盗む水は真直ぐに流れゆく
水盗むこの世に妻子あるかぎり
水盗む田の面に夜の映りゆく
水盗む親父の声の震えおり
水盗の後の用水分岐点
空白み差し入れ飯や水盗む
水喧嘩かたる古老の口おもし
水盗む記述一行あり村史
矩と堰ともに破つて水盗む
水盗むやからはリードの長き犬
ジロリとは確かな擬音水守る
盗まれて分かるぞただの水ともし
分岐水岩一つ投げ水盗む
水盗む丑三つどきの黙迅し
人に逢ふ水盗人の心地もて
今は昔水盗みたる休耕田