きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「梅酒」__金曜俳句への投句一覧(5月29日号掲載=2015年4月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2015年5月29日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【梅酒】
父をまね盃で飲む梅酒かな
白砂にねむる毬藻よ梅酒瓶
満開の夕日に翳す梅酒かな
梅酒飲み酔い痴れるなり水芭蕉
食前の梅酒ごときで赤くなり
梅酒献釈迦堂ほのと灯りけり
小間に置く梅酒朝晩覗きけり
梅酒飲む夕餉のまこと直ぐに消え
黙々と梅酒を試す男かな
梅酒好きと聞けば梅酒を買い揃へ
梅酒汲む赤銅色の肌の色
梅酒飲む三等分より少し多く
睡眠の儀式のやうに梅酒酌む
一日の仕上げとしたる梅酒かな
いつあける今でしよ父の梅酒甕
梅酒飲む若甘苦き恋の頃
梅酒飲む母仕込みけるてきぱきと
飲む量は必ず審議の梅酒かな
晩酌の父と梅酒のソーダ割り
隣家の梅酒となり二度楽しめり
ひらひらと神は梅酒を注ぎ合ふ
下戸なれど梅酒で祝ふ誕生日
とっておき秘蔵の梅酒食前酒
亡き母の梅酒造りの七回忌
独り酌む母の遺せし梅酒瓶
梅酒や氷浮かべて生き返る
瓶いろいろ母の梅酒も残りゐて
流れ着くものに梅酒の瓶ありぬ
風まろく梅酒もまろく生まれけり
梅酒一杯交換条件付いてをり
会席の膳に梅酒の匂ひかな
山鳥の庭に来てゐる梅酒かな
酔い回り思考とまらす梅酒かな
皴深き実のまろびたる梅酒かな
饒舌の少しはじまる梅酒かな
飲み頃の梅酒の蓋を固く締め
ナポレオンブックの空きに梅酒注ぐ
酒豪さへ慣れぬ梅酒に酔ひどれる
封を切る十年待ちし梅酒かな
名水の井の底揺らぎ梅酒酌む
梅酒酌む馴染みの店のカウンター
梅酒飲む鳥獣戯画の一日終ふ
蒸発か梅酒の瓶に印する
梅酒にと母の里より梅とどく
妻の味母に似てきし梅酒かな
瓶底の澱や久しく梅酒澄む
梅の古酒若きの苦楽醸すかな
梅酒漬けしてをられたる記憶のみ
月ヶ瀬といふ名の梅酒くむ月夜
一途にも琥珀の優る梅酒かな
本日も珈琲店主梅酒飲む
梅酒飲みほろ酔い気分で散歩する
梅酒飲む豆腐は球か直方体
寝る梅の息吐くことも梅酒瓶
古寺の古僧の運ぶ梅酒壺
瓶と甕新旧大中小梅酒
繰り返す日々にも慣れて梅酒減る
グラス二つ置きて一人の梅酒かな
定年子鬼の居ぬ間に梅酒抱く
梅酒酌む傘寿の姉と古稀の我
梅酒飲むゴマは必ずまぶされて
梅焼酎仕込みてよりの雨じめり
我が好み酔い呼び起こす梅酒かな
亡き父の手書きのラベル梅酒開く
酒ビール焼酎を経て梅酒なり
逝きし後残る梅酒の命継ぐ
十年の梅酒用なるグラス選る
カラカラと一日の果ての梅酒かな
伝来の梅酒に秘めし隠し味
一杯の梅酒を我の仏前に
年月を琥珀とするや古梅酒
残されし梅酒一瓶母の家
休日や梅酒の梅をジャムに煮る
製造日並ぶ梅酒の色並ぶ
乾杯は梅酒と決めしクラス会
桜飲み梅酒口にし酔い痴れる
掻き回すストローで突く梅酒かな
紀の国の古民家に呑む古梅酒
懐メロのひとつにサザン梅酒酌む
忘れられ厨の闇に梅酒熟る
梅焼酎あの日淋しき少年期
秘蔵せし古梅酒への客迎ふ
亡き人と語らふ夜の梅酒かな
いと古りし梅酒に残る妣の技
分けくれし梅酒は海苔の空瓶に
ステルナのメモや古色の梅酒瓶
仮面とる時父甘き梅酒酌む
飲む人を亡くし梅酒の甕古りぬ
梅酒瓶伏す石明日は何乗せん
一つずれ梅酒の好きな妻の席
もう今は少しの梅酒元酒豪
とつおいつ梅酒の酔ひにまかせけり
梅酒にて乾杯するや老人会
とろとろと故郷とほき梅酒かな
一日を締める梅酒の懺悔色
五つ六つ庭の実も足し梅酒つけ
しっとりと色を深めている梅酒
かりこりと実を食べつくす梅酒かな
セロニアスモンク聴くとき梅酒飲む
ほろほろと梅酒に映る妻の顔
よき色に妻を梅酒で染めてみし
少年が髭うつすらと梅酒買ふ
梅酒減る知らずにゐるも知つてても
青青と光折れ込む梅酒かな
食前の梅酒八十路を越えにけり
音もなく器をすべる梅の酒
蓋にまだ飮むべからずと梅焼酎
よこしまに梅酒を強いるおのこかな
紀伊国屋ホールを出でて梅酒酌む
ふるさとの暮色の中の梅酒の香
前菜に梅酒添えられ淡き酔ひ