「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
掲載が遅れたことをお詫びいたします。

選句結果と選評は『週刊金曜日』３月２５日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【猫の恋】
猫の恋いまだにみえぬやねのうえ
鳴き声の闇深めるや恋の猫
恋猫に尋ねてみるも否と言ふ
猫の恋生りかけし句を破らるる
ぬきさしのならぬ距離なり猫の恋
恋猫に喉飴ひとつわたしたし
恋猫の凛と尾を立て凱旋す
みにきてよ猫の恋ほどいいものさ
心中者来世も契る猫の恋
電気ポット沸騰しました猫の恋
闇に石投げ込めばやむ猫の恋
恋猫を追う人のあり哀しけり
啄木の日記は若し猫の恋
抱き止めど毅然と恋猫戦場へ
猫の恋徹夜のページ震へさせ
牛丼の特大大盛り猫の恋
ピーピーと鳴くポットです猫の恋
恋猫と鴉あらそふ樹上かな
恋猫や空の固さを裂くごとく
めのまえを猫の恋からはじまれり
猫の恋ふるさとにあるかくれやど
言の葉と無縁な場所に恋の猫
うつり気もまつしぐらなり猫の恋
空ひとつ仰ぎて猫の恋了はる
今頃にフェミニズム知る猫の妻
本能に生き抜く幸や猫の恋
しあわせにきているという猫の恋
猫の恋しらずにとおるいなかみち
ふるさとにとまってきたと猫の恋
恋猫の闇を凝縮したりけり
猫の恋笑みおはします地蔵尊
出勤のごとき顔して恋の猫
猫の恋泉下の眠り悩ませる
尾をひいて夜を奔放に猫の恋
ライバルの数多ありけん猫の恋
恋できぬ猫の寝ねゐる出窓かな
スコッチをストレートでやる猫の恋
老いらくの恋に余生や浮かれ猫
恋唄の流るる街の恋の猫
肝心なことせで帰宅猫の恋
黒豹に見紛ふ気魄恋の猫
αからβへすすむ恋の猫
猫の恋月の兎が杵落とす
生活の綾表はさず猫の恋
この世をば我が世とぞ思ふ猫の恋
エクストラフラッシュビーム猫の恋
タバスコにハバネロ入れて猫の恋
飼はれゐて流転を知らず恋の猫
恋猫の背後に立つを禁じけり
またたびを恋する猫の椀に入れ
草食系関係ないネ猫の恋
猫の恋近くは寄って目にも見よ
明日正午吾に恋猫の瞳もて
恋猫のはたと声呑むいくさごと
ものおきのかたすみにある猫の恋
浮かれなどせで恋猫の出て行ける
恋ひ猫のガラス隔てし内と外
恋猫の髭先煎じたる紅茶
一線も二線も越えし恋の猫
引き籠ることにも飽きて猫の夫
浮かれ猫障子破りて知らぬ顔
みていてもわからぬことと猫の恋