きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

便利なはずの出産一時金の直接支払制度導入によって産科医療機関がピンチ?!

出産一時金の直接支払制度で被保険者は便利になったと思っているが、視点を変えれば問題ありありだという。誰がどのような目的でこの制度を導入したのかを、確認すれば政府のめざす国の姿が見えるかもしれない。

今、こどもを生むと医療機関に分娩費用を約40万円ほど支払わなければならない。結構な金額である。

退院時に支払う際にクレジットカードがなければ現金を用意する必要がある。また、医院によっては一定の前払いを求めるところもあった。しかし結局、健保組合などから出産育児一時金として分娩費用は戻ってくるから、部屋を四人部屋であるとか標準的なものにしていれば、結局お金はほとんどかからない。

流れ的には、被保険者は産科医院に支払い、健保組合などに出産一時金を請求するという手続きで、被保険者は先に出産費用40万円を支払って、1カ月後くらいに40万円を受け取るということをやっていた。実質的に被保険者の立て替え払いということである。

 

●出産一時金支払制度を日本産婦人科学会と日本産婦人科医会が批判

しかし、昨年10月1日により、厚生労働省保険局長通知によって、産科の出産一時金直接支払制度ができました。事前に申請すれば、被保険者が窓口で出産費用40万円をを支払う必要はなく、医療機関と健保組合などが直接やりとりをするという仕組みになったのです。被保険者は医療機関で、個室料金だとか、エクストラな金額だけを支払えばよいとなった。被保険者にとっては便利になったと言える。

株式会社金曜日(週刊金曜日の発行元)が加入している出版健保の場合 http://www.phia.or.jp/hoken/k05.html

 

●分娩費の入金が2~3カ月先で資金ショートの危険?

ぼくもそう思っていた。ところが、この制度に対して日本産婦人科学会と日本産婦人科医会が批判しているという。

3月31日に神奈川県保険医協会の理事長が発表した談話によれば、「分娩費の医療機関への入金が出産当月から2~3カ月先となり、運転資金ショートにより産科医療機関の存立が危ぶまれるという事態が起きている」というのだ。さらに、この保険局長通知は、法的根拠がなにもなく、「この制度を肯定する医療機関関係団体はどこにも存在しなくなっている」というのだ。

背景には保険給付の一元管理などがあるとも理事長談話は指摘しているが、民主党連立政権の傾向として納税者番号の導入など国民個人会計などとつながるということなのだろう。

 

 【4月2日補足追加】

4月1日の晩、この記事を書いたのち、ある病院職員に聞いたら、直接支払制度によってむしろ助かったということだった。

というのは、これまでは何らかの理由で支払をせずに逃げてしまう被保険者が存在していたが、この制度導入により、とりっぱぐれが減ったということなのだ。この制度は、被保険者が事前に申請してくれれば、あとは医療機関と健保組合などのやりとりだけだからだ。たとえば、事務処理能力が低い被保険者でも、分娩入院の条件として直接支払の申請手続きを要求されれば、さすがに申請手続きをせざるをえないだろう。

だがこのエピソードをもって、直接支払制度を肯定するわけではないが、利点もあると現場から出ていることは頭の片隅に置いておきたい。