きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

カスピ海ヨーグルトは損か得か

巷ではカスピ海ヨーグルトというものが流行っているようだ。先日も新聞広告でカスピ海ヨーグルトに関する本が「4刷り!」となっており、これは意外と広がっているのだなと思っていた。みのも◯たの番組では特集したのだろうか? 以前から、「グルジアヨーグルト」という名称を聞いていたのだが、日本ではどうやらカスピ海ヨーグルトという名前に落ち着いたらしい。グルジアは長寿国らしく、神話化に結びついたのだろう。さて、そんなカスピ海ヨーグルトにはいくつか特徴がある。

その1。無限に育つ。基本的に減ったら牛乳を入れ、温度が20度~30度で10時間から20時間寝かすとヨーグルトになってしまう。めちゃ簡単である。高校時代、クラスメートのTが苦労して鍋でヨーグルトを繁殖させていたのと訳が違う。もちろんおれのバーサンが、牛乳は時間が経てばヨーグルトになると言って、腐った牛乳を飲んでいたのと訳が違う。牛乳を変えると味も変わるらしい。

その2。売っていない。カスピ海ヨーグルトは常温で発酵する。だから、密閉した容器だと破裂する危険があるそうだ。しかし、日本では食品衛生法で穴を空けた容器で流通させてはいけない。雑菌などが入ってしまうことを防ぐため。だから市場では流通しないそうだ。

その3。売ってはいけない。1985年頃に日本に第1号の種株を持ち込んだ家森幸男京都大学名誉教授が販売や商用利用を禁止したという。だから、商店では入手できず、通常は種株をだれかにもらう。一瞬、Linuxのようなフリーソフトの思想かと思ったが、違うようだ。「その2」がその理由なのだろう。ということで種株を持っている知人からわけてもらう。そのような人がいない場合に入手するのはきわめて困難だった。「だった」というのは、11月からフリーズドライさせた菌を入手することが可能になったらしいからだ。

さて、そんなわが家(といっても1人暮らしだが)にも、ついにカスピ海ヨーグルトがやってきた。カスピ海ヨーグルト歴3カ月の知人に種菌をわけてもらったのである。やはり、種菌を株分けをして相手がお腹を壊したりするのはマズイので、株分けする相手との信頼関係が大事なのである。というか、こいつなら株分けをして腹こわしても文句を言わないだろうと私は判断されたようだ。それから2週間ぐらい経つが、ぜんぜん大丈夫だ。ネットを見ると、かなり大事に大事に育てている人が多いようだ。私も食べては牛乳を注ぎ、食べては牛乳を注ぎ……。不安で毎日ニオイと色を見ているのだが、まあ大丈夫か。糠味噌みたいなもんか。しかし、以前より、牛乳を買うサイクルが短くなってきた。

そこでちょっと考えてみたい。カスピ海ヨーグルトははたして得なのか損なのか。

ヨーグルトを買わなくてすむとはいえ、結局、牛乳を買ってきて育て続けなければならないからタダではない。それに放っておくと腐ってしまう。作るたびに、雑菌の入る危険性もある。秋冬は、気温が低いからいいが、温かくなってくれば雑菌が繁殖しやすくなる。結構、危ないかもしれない。家森京大名誉教授によると、栄養価もほかのヨーグルトとたいして違わないという。カスピ海ヨーグルトを食べたからと言って、グルジア人のように長寿になるわけではない。そうなると、そんなに酸っぱくないオリジナルのヨーグルトを作れるということが特徴ということになる。

なんだか毎日不安を抱きつつ、手をかけてヨーグルトを作りつづけることは私にとって割にあわないような気がしてきたが……。
(平井康嗣)