きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

5分でわかる闇金融~「追い貸し」後編

前編の続き。

さて。取材をしている間にミヤコさんに対していくつかの疑問が湧いてきた。

(1)なぜヤミ金が口座番号を知っているのか。
(2)なぜ彼女は警察にも連絡せずに、まともに相手をしたのか。
(3)なぜ結局、「利息」を払ってしまったのか。
(4)なぜヤミ金はまたしても電話をかけてくるのか、などなど。

である。以下は、事実にいくつかの推測を交えた私の考えだ。
まず「ヤミ金被害者」たちは、必ずしも完全にヤミ金から足を洗えるわけではない。なぜなら、借金がなくなっても自分の日常生活は何も変わらないからだ。月給15万円で、かつかつの生活で苦しんだ挙げ句にヤミ金を手を出した人がいるとする。その人がヤミ金をなんとか整理できたとしても、元の苦しい生活に戻るだけである。だから、その苦しい生活の中で今後いかに頑張っていけるかが、ポイントになる。
例外的に少額のお金に困り、ついつい手を出してしまった人ならば、過ちとしてヤミ金から足を洗えうことは難しくない。しかし、必然がゆえにヤミ金に手を出した人は、誘惑を断ち切って自律する強い心が必要になる。

今回、「追い貸し」を受けたミヤコさんの場合は、どうやら後者に近いらしい。複数のヤミ金被害者の話を聞いて思った。
つまり、ヤミ金がミヤコさんの口座番号を知っていたのは、彼女が常連だからである(これは事実)。
彼女がヤミ金をまともに相手したのは、ヤミ金との電話のやりとりに馴れているからである(これも事実)。
彼女が警察に連絡もせずに利息を払った理由は、そのうち資金繰りに危なくなったら利用するかもしれないために強く出られなかったのである(これは推測)。
彼女にヤミ金が懲りずに電話をかけてくるのは、彼女の口座番号だけでなく断りきれない性格という情報までもヤミ金業者同士が共有しているからである。そして、強く出れば彼女がまた借りるだろうとタカをくくっているからである(これも推測)。ということで、それなりの関係性があるのである。

ヤミ金は、最初に1万円や2万円の金を貸す形式はとるが、それは金を貸したという奇妙なポーズだ。その後に続く行為は「詐欺」もしくは「恐喝」である。ある被害者の会をやっている方も同じ意見だった。もっと言えばヤミ金は商売ではない「タカリ」である。その中でも「追い貸し」など、子どもでもつかないような屁理屈なタカリだと思う。

<連絡>
▼4月には本誌で消費者金融とCMの問題を取り上げる予定です。▼いよいよアホでマヌケなアメリカ大統領が戦争を始めるようだ。ブッシュの演説を受けた18日、ABC放送などは早速特番を組んで91年の湾岸戦争との比較をしていた。爆撃された民間人の黒こげの死体なども放送していた。91年の湾岸戦争を語る本はいくつか出版されたが、わたしがもっとも感銘を受けたのが片岡義男さんの『日本語の外へ』(筑摩書房)。アメリカを見続けてきた片岡さんが、衛星放送で日本に流される米国のニュース番組を見て淡々と語るわけだが、これが雰囲気ある物語に仕上がっているのだ。
(平井康嗣)