きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

あの政党は憲法破壊団体か

憲法には憲法尊重擁護義務という条文(99条)がある。
この義務は判例のない条文だから、そのまま素直に読んで意味を理解すればいいのだろう。
尊重だけではなく、擁護だから、かなり積極的な印象を受ける。
義務は人民にではなく、天皇や閣僚やら公務員に課せられている。

憲法尊重擁護義務が規定されているからといって、日本国憲法はけっして改憲を許さないわけではない。ただ憲法によって地位が認められている職業は、憲法を尊重する義務があると言っているわけだ。
改憲規定だって、憲法が自ら規定している。だから護憲派こそ改憲について正々堂々と議論していいのだ。憲法が民主主義を絶対に守るのであって、民主主義が憲法を守るわけではないのだ。
いわゆる護憲派といわれる憲法学者も同じような答えを言うだろう。

ちなみに、ぼくはそんな改憲議論をするつもりはない。その前に違憲の疑いの濃い法律について徹底的に議論するのが筋だろう。

そんな憲法尊重擁護義務を先日、あらためて見ると、いくつかの派生規定がある。たとえば、

国家公務員法第38条
左の各号の一に該当する者は、人事院規則の定める場合を除くの外、官職に就く能力を有しない。
1号から4号まで省略
5号 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者。

という条文がある。

ヘイセイ9年版『有斐閣の判例六法』によれば、上記のような主張をする団体を「憲法破壊団体」というそうだ。
そのような主張をする団体の構成員を憲法破壊団体員ともいうそうだ。
ちなみにネットで「憲法破壊団体」を検索したが、ストレートにヒットしなかった。
あまり議論されない用語のようだ。

ちなみに国家公務員は一般職と特別職にわかれる。内閣総理大臣から国務大臣、国会議員の秘書まで国家公務員の特別職だ。
国会議員は行政府に属するわけではないので、もちろん公務員ではない。

しかし、よくわからないのが、「日本国憲法を暴力で破壊することを主張する」という意味だ。

憲法の条文が掲載されている六法全書をビリビリ引き裂くこと……なんかじゃないだろう。

たとえば、内閣総理大臣や国務大臣の所属する政党が、軍隊を使って憲法に違反する行為を行うよう主張した場合はどうなのだろう。
9条2項の「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」に対して現在の自衛隊はきわめて違憲の疑いが濃い。自衛隊を公然と軍隊と認めるべき政党が主張すれば、官職につけないことになるのではないか。
至近の話でいえば、自衛隊が海外で武力の威嚇、武力の行使。これを認めるように政党が主張した場合は38条違反になる可能性が高い。

そうすると、そんな主張をする政党に属する大臣は能力を有しない、ことになる。

そういえば、どの政党も自衛隊を軍隊にだとか、海外で武器を持たせろなどと、党として主張していないような気がする。

この一見地味な規定のブレーキが効いているのだろうか。
(平井康嗣)