きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

2012年の鍵となる言葉(1)「抑圧か解放か」(上)

<北村肇の「多角多面」(60)>

 ひっそり、人知れずという感じだった。2011年の去り方も、2012年の到来も。街中に、新年の華やいだ雰囲気はない。そうした傾向は、ここ数年ずっとあったが、今年は特に顕著だ。繁華街のイルミネーションなどは、かえって痛々しくさえみえる。

 無理をするのはやめよう。浮かれた気分にならないのなら、表面的に取り繕う必要はない。そもそも、12月31日と1月1日は単に一日進んだだけで、その間に大胆な変化が起こるわけではない。多くの人が何日間かの休暇を楽しんだ、その程度の話しだ。だがしかし、「新年」には利用できる面もある。一度、立ち止まって、現状を分析し将来を展望する機会にはもってこいである。

 そこで、自分なりに2012年の「鍵となる言葉」を考えてみた。まずは「抑圧か解放か」だ。すでに、「アラブの春」はいくつかの国で独裁者からの解放を勝ち取った。だが、一方で、シリアでは依然として市民の虐殺が続いているし、中国政府の言論抑圧姿勢にも変化は見られない。インターネットを駆使した、新しい市民革命がどこまで広がるのか、逆に「国家」の管理体制が強まるのか。その推移によって世界は大きく変わる。

 さらに重要なのは、金融資本、「カネ」からの解放だ。金融資本の暴虐こそが新自由主義の本性なのは明らかであり、リーマンショックや欧州の経済危機は、もはや国家には彼らを制御することができないという実態を露呈した。市場にすべてを委ねた結果、金融資本という怪物は、国家の管理を寄せ付けない存在になったのだ。この怪物をどう退治するのか、そのことが人類そのものに問われていると言っても過言ではない。

 そして、この背景には、現代人がカネの抑圧から逃れられないという現実がある。私自身、カネから解放されていない。解放できる自信もない。社会全体の構造がカネによってつくられている中で、“仙人”になるのは並大抵のことではない。

 だが、政治により抑圧を減らすことはできる。有効な方策は、平準化だ。大企業や富裕層から税金を取り立て、貧困層に回す政策の実行である。いろいろと議論はあるが、ベーシックインカムの導入もいまこそ検討すべきだ。どんな状況に陥っても、餓死することなく、雨露を防ぐ生活のできる社会ができあがれば、抑圧感はかなり軽減されるだろう。

 私たちひとり一人の心と覚悟の問題もある。幸せはカネでは買えないと、もう一度、しっかり認識したい。精神の解放はそこから始まるはずだ。(2012/1/13)