きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

グッドナイト、アンドグッドラック

今年のアカデミー賞主要6部門にノミネートされている『Good night and, Goodluck』は“古き良きアメリカ”と衆目が一致する1950年代を舞台。「伝説のニュースキャスター」エド・マロー(本名、エドワード・R・マロー)と彼の番組『シー・イット・ナウ』のスタッフが主人公である。
表題は、番組の決めセリフである。

映画のもう一つの重要な主人公は「マッカーシズム」である。
共和党の上院議員ジョセフ=マッカーシー(1909~1957)の名が冠せられるマッカーシズムは、熱狂的な「赤狩り」つまり共産主義者攻撃のことである。全米は赤狩りという名のヒステリーに包まれたということだ。

若手のマッカーシーは、過剰に極右を売りにし支持率50%まで獲得していた。
どの時代でもどの国でも、マッカーシーのような人物は存在する。

昔の日本でも、戦前・戦中の治安維持法になるだろう。治安維持法も国体護持のために、宗教を否定する唯物論者の共産党員を炙り出し、非国民、犯罪者のレッテルをはっていった。
日本でも、そんな国会議員、地方議員は何人もいる。

映画は、政治色が強い話をシガーで煙に巻き、予想される騒音をスタンダード・ジャズで、スマートにかき消すことだろう。
デヴィッド・ストラザーンのエド・マローが偏向を恐れずに毅然と、そしてダンディに語る姿は、現代日本に生きる身としては、おおいに励ましになる。

しかし、映画の中でキャストたちがタバコを吸いすぎである。過剰である。
ぼくも昔はタバコを吸っていたから、マッカーシーばりにタバコ狩りを主張したりはしないが、観ているだけでも煙たくなってくる。「KENT」のCMを記録映像として紹介しているくらいだ。どうみても、タバコ産業がスポンサーについているとしか思えないが、だとすれば巧妙である。
CBSのオーナーだったウィリアム・ベイリーはタバコ会社の経営者の息子だったというから、CBSとタバコは密接に関係しているのかもしれない。(『60ミニッツ』では、フィリップ・モリス社を激しく叩いていたが)

『ツイン・ピークス』でローラ・パーマーの情緒不安定な父親役のイメージが強いレイ・ワイズ(ドン・ホレベック役)が涙目になったとき、これはよからぬことに巻き込まれるなと思ったら、やはり自殺してしまった。はまり役なんじゃないか。

ジャーナリズムの世界では、生まれた時代の巡り合わせがスターを生む。
マッカーシーのいない時代に、反マッカーシーを唱えるマローの勇気は必要ない。
今の時代にはどんな「勇気」が必要なのか。

最近読んだ本 テーマ「オレ主義」
『成り上がれ!』(甲田英司、WAVE出版)。六本木ヒルズに住むまで成り上がった社長の話。
『ダークダイサイドオブ小泉純一郎』(岩崎大輔、洋泉社)。フライデースクープ記者の取材記録。
(平井康嗣)