きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「葛湯」__金曜俳句への投句一覧
(11月28日号掲載=10月31日締切)

葛湯は、葛粉に砂糖と少量の水を入れ、よく掻き混ぜながら熱湯を加えて作ります。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年11月28日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【葛湯】
パソコンに零してならぬ葛湯吹く
口尖らせ疲れを癒し葛湯吹く
葛湯かな舌に残りし木匙の香
艶つぽくしな垂れ掛かり吹く葛湯
じわじわと老い広がる葛湯かな
葛湯待つ橋の袂に車夫の声
メール見ず葛湯ひたすら混ぜてをり
雨音は点から線へ葛湯練る
一灯の暈けて葛湯の溶け残る
一吹きのあとの一口葛湯飲む
ミッキーのカップで作る葛湯かな
適当でいいの葛湯の作り方
ガラス窓を風鳴らす夜の葛湯かな
未成年童話のやうに葛湯吹き
画のやうに神話のやうに葛湯溶き
透き通る葛湯に透ける泡の粒
葛湯吹く不幸を飛ばすやうに吹く
句を詠む母へ少し濃き葛湯かな
我が身への励ましの息葛湯吹く
朝の月愛でつ葛湯吹いてをり
葛湯して吉野のカフェの一会かな
革命を信じる亀と葛湯かな
日差しにも葛湯にもあるとろみかな
葛湯吹く頬の紅きを愛しけり
葛湯吹き朱塗の匙のたよりなき
食卓に母の手ありて葛湯かな
車椅子一周の息葛湯吹く
回復期甘め増すなり葛湯かな
葛湯吹く暫し無言の旅の宿
亡母真似て両手でつつむ葛湯かな
丸窓に人の姿が葛湯かな
一万歩超えて葛湯が飲みたくなる
独り居の壁に向かひて葛湯とく
葛湯吹き笑ってもみるかなしさに
テナーソロ熱ちちと葛湯すすりこむ
濃みどりの葛湯すくつてゐる夜更
手拭ひをしつかり巻きし葛湯かな
葛溶いて熱き湯にせん風の夜は
陶磁器の小さき匙から葛湯かな
歳重ね旅の疲れの葛湯かな
葛湯吹く行方知れずの髪飾り
ほうほうと葛湯吹きつ昔語り
葛湯まぜ妻のひとことごもつとも
それほどでもなけれど葛湯もてなされ
今日一日葛湯を吹いて永らえり
葛湯溶くさらり讃岐の和三盆
葛湯吹く口笛吹かぬこと久し
葛湯吹き明日の現実生ぐさき
葛湯溶く薄鈍色の一日なり
原戸籍束ね一息葛湯かな
葛湯して至近距離まで近づきぬ
葛湯して癇癪玉を宥めおり
茅屋で夜半独りの葛湯かな
煩悶が煩悶を呼ぶ葛湯かな
火傷する程の熱きに葛湯溶く
揺り起こし宿題の子と葛湯かな
風の音のわれも立てたる葛湯かな
一杯の葛湯も冷めて一人かな
葛湯溶く老いの二人の侘び住まい
帰ったら葛湯かき交ぜ暖まる
ここまでやつて来たので葛湯を飲む
病み上がり葛湯吹く息弱々しく
葛湯飲む生命力にあやかって
葛湯溶きしづかな昼と思ひけり
葛湯吹き奈良の女と言ひ放つ
主計町溶くる葛湯の匂ひかな
葛湯吹く付箋を剥がす優しさで
ひと匙の葛湯ひと日を明日へ継ぐ
行きつけの坂の途中の葛湯かな
左足の裏の皮膚かな葛湯飲む
銀の匙遣ひて冷ます葛湯かな
葛湯で貼る収入印紙四万円
葛湯溶く太き硝子の撹拌棒
手につつむ椀のやさしき葛湯かな
小上がりの先ずは葛湯を所望せり
粉つぽさ融ける葛湯や鼻の奥
朝市の復活遠き葛湯かな
病床の喉に落としてみる葛湯
葛湯吹く亡母が向こうにいるように
雨しどどカフェのメニューの葛湯かな
患いに葛湯嗜むろうたけて
もうどうでもよくなつてゆく葛湯かな
湯気立てて滾る葛湯にまた一句
しらしらと雨ふりきたる葛湯かな
黒匙で冷ました葛湯妣に上げ
葛湯吹くじんわり暮れる磨り硝子
枕元葛湯頓服体温計(まくらもとくずゆとんぷくたいおんけい)
葛湯して余震の恐れ薄らげり
葛湯掻き明日が期限の文字仕事
飲む前にポップを歌ふ葛湯かな
拘りもだんだん薄れゆき葛湯
葛湯吹き柑橘の香を言ひ当てり
葛湯吹く平均寿命超えし朝
京焼の葛湯を冷ます賀茂の風
葛湯して妻突然のアリアかな
仮病の子生き生きとして吹く葛湯
身のうちの泣き虫あやす葛湯かな
葛湯吹く妻の眼は糸となり
大叔母の眉間ほどける葛湯かな
癒ゆるまでただひたすらに葛湯かな
葛湯溶く安芸の木箆の減り具合
堅いこと云はんと葛湯ほら吹いて
朱の匙のあやうく沈む葛湯かな
病歴も履歴のうちと飲む葛湯
葛湯でも飲むかと大きひとりごと
葛湯吹くそっと労る風の向き
花に似てすこし儚き葛湯かな
ひたすらに両手を使ひ葛湯解く
人間に闇あり葛湯かきまわす
つつがなく老いにし母と葛湯かな
葛湯好く今亡き母の茶碗かな
はじめての葛湯は匙に馴染みけり
遅く着き鄙の葛湯をもてなされ
葛湯飲みテンション一度こんなもの
独り居の匙まで熱き葛湯かな
飲み終へて暫し安堵の葛湯かな
ストレスの溜まりたる胃へ葛湯吹く
練りゆけば葛湯の奥の薄あかり
宵長けてともに葛湯を啜らんか
つぎ会ふ日問うて病母の葛湯吹く
あばら家に葛湯吹きつつ向かい居り
タピオカに似て非なるもの葛湯溶く
ふつふつと光る白妙葛湯煮ゆ
病床に母の呪文の葛湯かな
吹く息にしぶしぶ凹む葛湯かな
吹く息が飛び越えてくる葛湯かな
たち昇る葛湯の湯気の向ひ側
ニョキニョキと夜勤終わりの葛湯かな
緑褪せし東洋文庫葛湯の夜
葛湯吹く吹いてあれこれ忘れけり
葛湯吹く仏壇の灯を消すやうに
透明な葛湯に翳る気泡かな
もの知らぬ者にも甘き葛湯かな
梁太し夜更けて葛湯煮る男
背をこごめ葛湯のセールにぽちと押す
中年になって老舗の葛湯かな
木の匙の軽さと重さ葛湯吹く