兼題「草笛」__金曜俳句への投句一覧
(6月27日号掲載=5月31日締切)
2025年6月25日10:56AM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
草の葉を摘んでつくる笛を草笛といいます。唇につけて吹くと鋭い音が出ますよね。
さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2025年6月27日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【草笛】
草笛や調子はずれのト短調
草笛に先づ習ふ葉の選びやう
青タンを付けて草笛吹いてゐる
草笛やかすかな姉の背の記憶
草笛の途切れとぎれの音色かな
草笛や僕はまだまだ風の音
草笛や犬にシャベルのやうな舌
コロンボのサビ草笛で吹いており
草笛や棚田を風の駆け降りる
草笛の鳴らぬ水路を母と行き
音楽の教師草笛不得手なり
草笛や庭の葉あれこれ咥えみて
草笛に曇り始める夕まぐれ
草笛を吾子たち吹いて平和鳴る
草笛の音感狂ふ切通し
草笛を吹いて青空呼び寄せる
草笛を吹くくちびるのかたちかな
草笛や海暮れるまで海を見る
蒼天に哀切きわめ草笛や
草笛に島の山坂応えけり
草笛や父に似てきし太き指
草笛や一本橋を一列に
草笛や軍艦島は一里沖
草笛が遠くて夜はカレーかな
草笛の音オクターブ上げてをり
果もなし野面に消ゆる草笛の
草笛や帰りたくないバイトあと
サブスクの曲相和する草笛と
草笛を吹きながらあつちから来る
草笛や君の迎への合図らし
草笛を息のかぎりにゆく雲へ
草笛のたかさに集う八雲かな
草笛や父の煙草はわかばなり
草笛や昭和の遠き鳰の海
草笛や移住の君の歓迎会
草笛や「ダニーボーイ」のAシャープ
草笛のやうやく曲になりにけり
草笛を吹けぬ口には毒がある
草笛を両目つむりて聞いてをり
棺には花と詩集と草笛と
草笛や水路の棒は渡るため
草笛や好きな子吹けばどきどきす
草笛の流るる小諸城址かな
避難所や草笛吹いて和みをり
草笛や岬から岬に届く
草笛や父の教へを子に教へ
草笛やガキ大将のひとり旅
草笛や連山影をあやまりぬ
草笛や青き風吹く丘の上
輪唱のやうに草笛遠ざかる
墨堤の草笛の音は薄みどり
曇天に草笛の声鳴きかわし
草笛や軽くルージュをひく彼奴
小諸なる古城初めての草笛
草笛を少年に教えてもらう
草笛を吹く子の草に隠れをり
草笛を自在に鳴らし城ガイド
草笛や雲の上ゆく心地せり
廃線を行く草笛の音錆びぬ
草笛に額の文庫本落ちる
草笛や言葉の要らぬ牧の午後
草笛の刹那少年少女かな
草笛で吹く故郷のみな違ふ
不愉快な話題ね草笛の小舟
草笛や湖面たちまち鏡とす
午後二時の終電待つや草の笛
草笛に挑む八十路に孫おらず
はてもなき蒼天に曳く草笛の音
草笛を吹く少年の片想ひ
草笛の風にまかせるビブラート
老いたるも草笛の音衰へず
草笛や愛されすぎて破かれた
草笛は山神様のおなじない
草笛や老いの指先細くして
草笛のカンタービレや君の吹く
草笛やきっとわたしは壊れる子
トランプの世界に鳴らす草笛を
堪えても涙しょっぱき草笛かな
草笛の音に応ふる尻尾かな
草笛の一拍おいて鳴り初むる
草笛の調子外れは父譲り
草笛や光返して千曲川
介護士の草笛十八番麗しく
先生の草笛披露する時間
しんがりの草笛鳴らぬままに川
草笛を鳴らせしが子のはるかなり
草笛を先に鳴らして兄貴風
草笛のあとは草むら返しけり
草笛のボーイソプラノめきて鳴く
草笛を習ひし子らの輝く目
草笛の鳴りさうな葉を選びけり
草笛の長く野面に後を曳き
くちびるの草笛ずつと忘るるな
少年も少女も走る草笛に
草笛を俳句仲間に教はりぬ
草笛や独りぼつちがついて来る
草笛の風にまぎれて泣くつもり
草笛の放られている下校道
ひちりきの音と化し草笛高く
唇は紅く草笛むずかしく
草笛や池塘に速し流れ雲
姉の吹く草笛どこかへんへんへん
葉っぱとてものをいいたし草笛で
草笛を吹けば朱殷の日暮かな
びびとしか吹けぬ草笛あのねのね
兄の忌の宙を遠音の葦の笛
忘れたき草笛吹きし君は風
草笛や声を殺して愛された
草笛の音に生き様にじみ出ず
草笛や辻の地蔵は笑ふだけ
草笛に似合わぬ曲を吹きし妻
草笛のうまい子神田生まれとは
草笛の鳴る子鳴らぬ子吹かない子
母降りる草笛の素材探すため
朗々と手話の指もて草の笛
草笛の恥づかしきほど高き音
草笛に弱酸性の唾を注す
草笛のしばし途絶えて始めから
なんとまあ草笛向きの艸だこと
草笛や対岸の赤い機関車
祖父の吹く草笛で発つ縄電車
草笛や夕日が主語でありし頃
草笛の泣くがごとくに音外し
草笛の荒城の月城跡に
紙芝居終ひ草笛配りだし
0点も草笛吹いてくじけない
草笛を吹けども鳴らず休耕田
草笛の口笛のごとまだ吹けず
草笛のそんな曲まで吹けるとは
草笛をさえぎる雲ははるかなり
草笛の昭和は遠し八十寿なる
草笛のうしろを靡く大人かな
草笛をどれも器用に鳴らす夫
草笛は森の妖精を癒してる
草笛や横顔無心夕日浴ぶ
草笛の長調とも短調とも
草笛によるイ長調夜想曲
トランプに草笛吹いて対抗す
草笛や私のできぬ事あまた
草笛やじいちゃんの陰現れり
草笛の一直線に届きけり
毀れゆく星に草笛やはらかい
草笛や父の昭和を吹きにける
草笛や風に拐われ恋の土手
作られる草笛母が草千切り
草笛のやっぱり吹けぬ朝ぼらけ
草笛を覚へし土手をまだ残す
草笛に託す想いもありにけり
草笛を教えてもらうユーチューブ
草笛や兄も父にはかなはざる
草笛の哀調帯ぶるわらべ歌
名を知らぬままに草笛子に伝ふ
草笛や唾に濡れたる椿の葉
思春期を草笛吹きて墨堤に
草笛の泣かせどころを知る吹き手
草笛の去って空き地となりにけり
草笛も口笛までも反抗期
水生の草抜き草笛作る母
草笛や吾子の埋れる草の丈
草笛やいつもぶかぶかズボンの子
草笛や昔の生徒会長と
草笛ニ血ノ香アナタハ青春デシタ
草笛を吹き来る島の獣医かな
切り立ての髪をゆすりて草笛吹き
草笛のみどりの風を運びくる
草笛のよく鳴る草を捨てられず
草笛や老いの先途は確かなり
草笛の雲に届けと吹き交はす
草笛でじぶんのうたを吹きし君
草笛や風を感じる人だから
草笛の香り歯裏に残りけり
草笛はすこしマヨネーズの匂ひ
風にのる野原つぶやき草笛や
まだ産毛しか無き頬よ草笛よ
草笛や夜はひとりぼっちだね
