きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「石蕗の花」__金曜俳句への投句一覧
(12月23日号掲載=11月30日締切)

石蕗は、海岸や海辺の山に自生するキク科の常緑多年草です。「石蕗」だけでは花のことにならないので、注意が必要です。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年12月23日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。

【石蕗の花】
友偲び震災のがれき石蕗の花
磴を雪駄の急ぐ石蕗の花
境界の石垣崩れ石蕗の花
同棲や石蕗の花から徒歩五分
いしぶきの黄や雨の日も晴れの日も
石蕗の花納戸の奥にマリア像
鐘撞堂に鐘撞く人無し石蕗の花
同じ道同じ時間に石蕗の花
石蕗の花少女は否を貫きぬ
日溜りに戯れてをり石蕗の花
追ふよりも追はぬ幸せ石蕗の花
吉の墓海へ向かふや石蕗の花
朝の雨止んで明るき石蕗の花
せのびしてつかれたねつはぶきのはな
暗き朝に光を放つ石蕗の花
隧道の趾をたづねて石蕗の花
石狩の夕暮灯す石蕗の花
話しかけられるのを待つ石蕗の花
熟考の棋士の一手や石路の花
野良犬とひなた分けあう石蕗の花
手入れせぬ庭先ながら石蕗の花
石蕗の花告白できず五十年
海鳴りや無住の寺の石蕗の花
石蕗の花魚嫌ひの猫増えり
石蕗の花荒磯づたいに道つづく
中庭は静かに濡れて石蕗の花
目印は石蕗の黄色と人を招ぶ
石蕗の花信じられない筋肉痛
石蕗の花あかりばかりに中庭は
前栽に石蕗咲いている隠れ宿
灯台の明かりは沖へ石蕗の花
荷車に石蕗の花一輪が
朝日よりひかりの音す石蕗の花
寄せ植の石蕗の花光満つ
日向より日陰明るき石蕗の花
独り身の襟の匂ひや石蕗の花
朝市の浦を仰げば石蕗の花
明日のこと明日に委ねて石蕗の咲く
古寺のつくばい涸れて石蕗の花
どちらかと言へばポップス石蕗の花
海よりの風に活けたり石蕗の花
石蕗の花格天井に溜まる湯気
母の手の届くところや石蕗の花
石蕗の花生家の庭の記憶かな
石蕗の花犬小屋いまは苫屋めき
懇ろに庫裡裏掃かれ石蕗の花
石蕗の花なぶる風吹き始む
庭隅に独善の石蕗の花
野仏の褪(さ)めた前垂れ石蕗の花
被爆川覗くごとくに石蕗の花
赤き実のかぶさる石蕗の花の上
雨粒の享けたるひかり石蕗の花
江ノ電のS字カーブや石蕗の花
ただじっと約束を待つ石蕗の花
父になる妊婦の笑みに石蕗の花
絶壁に風をゆだねて石蕗の花
主人なき庭を好みし石蕗の花
署名して回覧板回すや石蕗の花
石蕗咲けり生まれなかつた兄弟に
水際に遊ぶ子の無し石蕗の花
地の熱を吸いあげ石蕗の花の咲く
石路咲いて淋しさつのる黄の極み
さざれ石さざるる月日石路の花
病窓の中庭暗し石蕗の花
石蕗の花つややかに葉も陽に光り
なお生きて年金暮らし石蕗の花
応えなき玄関先に石蕗の花
つはぶきの役場の花壇にも咲けり
いしぶきの葉に雨残る朝の宿
主無き車椅子捨つ石蕗の花
石蕗の花倹しき花と呼ぶ勿れ
御用邸の浜は静けし石蕗の花
石垣より石蕗の花見えペンキ塗り
大仏の整ふ螺髪石路の花
濡れ縁にをんな待たせて石蕗の花
主婦カフェの客を待つごと石蕗の花
六十度と決めて傾いで石蕗の花
夕ぐれて花石蕗明り別れ道
便り来る煩ひ解けし石蕗の花
母が逝き石蕗の花凛と待つ
侘び寂びも小庭にひとり石蕗の花
けらけらと笑ふ比丘尼や石蕗の花
自転車で家路急ぐや石蕗の花
石蕗の花こがねの粒子庭散らせ
理髪師に俺はなるんだ石蕗の花
石蕗よおまえ迎えてくれるのか
一年の節目に眺め石蕗の花
四阿は父の作なり石蕗の花
石蕗の花久しき友の便り来る
乗換の駅に汽車なし石蕗の花
石蕗の花ロシア人墓地北向きて
海沿ひの時鐘ながし石蕗の花
たちまちに朝は海から石蕗の花
石蕗咲きてあへなき老後華やげり
乳がんを切ると決めた日石蕗の花
故郷へ残す父母石路の花
地窓越しときどき目の合ふ石蕗の花
自己主張強き黄や石蕗の花
遠景は楠近景は石蕗の花
つぼみ過ぎたちまち庭は石蕗の花
咲残る石蕗の花裏参道
砂掃いて箒目やさし石蕗の花
児を預けママチャリ急ぐ石蕗の道
星に乗る王子はをらず石蕗の花
石蕗の花密やかに咲く寺の裏
石蕗の花新港までのけもの道
石蕗の花気づかれぬよう煙草すう
安珍の鐘楼跡に石蕗の花
石蕗の花咲く海べたの無人駅
境内に木漏れ日遊び石蕗の花
石蕗の花営業中の鍛治の庭
南国の浜辺自生の石蕗の花
しゃんだら機嫌を直す石蕗の花
石蕗の花母にまた傷つきぬ
妻のゐる方へ方へと石蕗の花
断崖に石蕗の花こぼれ咲く
裏路地の光の先に石蕗の花
山寺や石蕗の花点景に
裏路地に大きな番地石蕗の花
さりげなく告げし病名石蕗の花
石蕗の花退屈さうな部屋である
主婦カフェの苦労知ってる石蕗の花
朝潮の聞こえてみえず石蕗の花
石蕗の花寝屋子はみんな出払うて
石蕗の花「ハントウユウジ」なる偽名
手水鉢丸ごと乾き石蕗の花
夕ぐれを待ちて華やぐ石蕗の花
石蕗の咲くふるさと売れと手紙来し
一刻な老人ふたり石蕗の花
石蕗の花貧しき國の民として
石蕗の花富士はひねもす雲の中
石蕗の花小雨そぼふる神楽坂
竜馬像の横の崖道石蕗の花
石蕗の花ぴしゃりと受話器おく日かな
石蕗の花のくきやか句碑の文字
岩陰になお照る葉もつ石蕗の花
よく見れば美人なり石蕗の花
音吉の美浜訛や石蕗の花
咲くほどに寂しくもあり石蕗の花
チェンバロの優しき和音石蕗の花
石蕗の花インクは土に吸はれたる
ダンディーな老人の恋石蕗咲けり
石蕗の花走る歩くの加減かな
丘の上石蕗の花咲き湿地かな
便風の置き去ってゆく石蕗の花
しゃがみ見れば機嫌良さそう石蕗の花
石蕗の花供養塔まで道険し
独り居に黄の容赦なき石蕗の花
石蕗の花つまらぬ事は忘れざる
石畳乾き始めし石蕗の花
公園を横切りやかたへ石蕗の花
石蕗の花咲けば独りにもどる
陽の斜面我が物顔の石蕗の花
鳥の声尖りて石蕗の花あかり
石蕗咲くや埋木舎に一と日居る
露西亜船見送る丘の石蕗の花
石蕗咲けり日記に一行今日を閉づ
石蕗の花さかなのやうに光をり
石蕗の咲く崖の下より熊野灘
明けやらぬ朝の散歩や石蕗の花
海へ向く総理の像や石蕗の花
石蕗の花岬へ子らは魚籠提げて
井戸端に群れて咲きけり石蕗の花
石蕗の花ランチ食むひと眺めをり
花石蕗を跨いで猫の髭尖る
石蕗の花人住まぬ庭占領す
この場所に昨日も来たね石蕗の花
コンクリの隙間で生きる石蕗の花
石蕗の花今日細胞のいくつ死ぬ
内々定一件石蕗の花ぴかり