きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「鶯餅」__金曜俳句への投句一覧
(2月25日号掲載=1月31日締切)

「鶯餅」は、早春の季節感を持っています。餡を餅でくるみ、青いきな粉をまぶしています。江戸時代からはやったそうです。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年2月25日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
※公式サイトが攻撃を受けていたため、掲載が遅くなったことをお詫びいたします。

【鶯餅】
よくしゃべり鶯餅を五つ食べ
それぞれに届け先あり鶯餅
この風に鶯餅ときまりけり
この森に鶯餅の雛のゐる
城下町カフェーに出さる鶯餅
お懐紙に鶯餅をそっと置く
愛らしき顔をしてまぁ鶯餅
鶯餅つまみて眺む指三本
紙箱は鶯餅の膨らみぞ
鶯餅猫は一瞥くれしのみ
頑なに守り続ける鶯餅
胸元に鶯餅の粉零る
真円を描けるうぐひす餅の粉
鶯餅赤子のやうにそつと取る
不思議なるうぐひす餅のかたちかな
鶯餅買ふ暗がりへ声かけて
御幣島のふりがな鶯餅買ふ
向きを揃へ軍用機めく鶯餅
指で触れ鶯餅は王者かな
鼻息に鶯餅の粉が飛ぶ
広告の鶯餅に合ひにゆく
此の所うぐひす餅の事ばかり
指もぐる鶯餅の柔き胴
紙箱のすみゆ鶯餅こぼる
手に溢る粉をすふっと鶯餅
白シャツを脱ぎて鶯餅を食む
待ち合はせ何故に鶯餅売り場
吾子の云ふ鶯餅の嘴はどち
書斎まで茶の香と来たる鶯餅
鶯餅つがひを食ふにためらへり
気まずさは鶯餅を抓むまで
父恋し鶯餅が店頭に
反故積もる机上鶯餅と茶と
鶯餅かたち改め頬ばる娘
鶯餅どこまでも飛べさうな気に
鶯餅二条通のあの店の
水つかふ音のするなり鶯餅
妾宅に鶯餅が飛んでいく
茶箪笥の玻璃にうぐひすもちふたつ
鶯餅天神さんの帰り道
詫び役の夫の選びし鶯餅
賜りし鶯餅や桧の経木
鶯餅川ゆく舟を見やりつつ
てのひらを崩して受くる鶯餅
熱る口鶯餅に冷ましけり
豚汁や鶯餅をそのあとに
鶯餅ちょこんと並ぶ京老舗
鶯もち運命線に粉残す
母所望鶯餅を持ち見舞ふ
箱入りの鶯餅の片寄りぬ
街を風抜けてうぐひす餅きたる
お持たせの鶯餅をまず供ふ
鶯餅尖りたる端平行に
指よりは鶯餅は竹の箸
テレビ見てパクつく奴め鶯餅
男手の懐紙を折るや鶯餅
鶯餅こゑせぬうちに食べにけり
逃がすやうにひらく両手や鶯餅
鶯餅明日この町を離れます
きな粉散り鶯餅のころがれり
和菓子舗に鶯餅のならぶ頃
鶯餅に咽て茶に咽にけり
二個ずつとお茶の鶯餅おやつ
羽ばたかぬやうに鶯餅を置く
鶯餅食べたるらしき口周り
鶯餅子らの口元きな粉色
雨の夜の鶯餅の熟れにけり
空からの声や鶯餅食えば
綻べる蕾を見やり鶯餅
指舐めて鶯餅の皿を置く
鶯餅無着色ねと確かめて
和服着て姉妹分け合う鶯餅
人数に足りず売りきれ鶯餅
鶯餅黄粉溢して膝崩れ
うぐひす餅留学生の目の色の
どつちから食へば正解鶯餅
甘党の男三人鶯餅
この色を好みし母に鶯餅
てのひらに鶯餅のこゑの乗る
書庫整理鶯餅はお預けで
鶯餅形良きほう吾にくれ
鳴き真似を鶯餅を食べながら
本物の声を待ちつつ鶯餅
くちびるに鶯餅の今際かな
貧乏は気位の高さ鶯餅
ひとつ食ぶ鶯餅のあとの指
鶯餅女将の声のよくとほる
草色の鶯餅の黄粉かな
お抹茶を添へておもたせ鶯餅
風の香に染まる指さき鶯餅
手のひらの鶯餅もぬくもりて
うぐひす餅食みぬ幽かに吸ひながら
黙すまま鶯餅を食む父と
うぐいす餅風のふるえを受け止めて
退勤のをんな鶯餅きれい
まどろみの中のそらみみ鶯餅
食べ方の難しさうな鶯餅
重箱の隅に鶯餅の涙
体温の残る鶯餅つまむ
高みより笑ふ鴉の春隣
好きすぎて噎んでしまう鶯餅
ふりさうな空ね鶯餅どうぞ
鶯餅皿に向き合ふ雄と雌
お向かいの鶯餅が今年また
もも色の一花添えたし鶯餅
鶯餅買へり故里なけれども
思ひの外話し良き人鶯餅
鶯餅黄粉ほんのり焦げてをり
単純な鶯餅の粉散つて
うぐいす餅十指に風を誂えて
野に紛る黄粉を掛けて鶯餅
遠山を鶯餅が従へる
鶯餅食す子供の頃の味
鶯餅声うつくしき人と食む
鶯餅何処の国へ向ふやら
山に坂あり鶯餅に軽さあり
鶯餅来て検番の中休み
鶯餅に頭と尻とありにけり
二心なけれど鶯餅ふたつ
喉元に鶯餅の柔らかさ
鶯餅食むや腹中さざ波す
相槌も今日の明るさ鶯餅
手づかみを鶯餅の許すべし
鶯餅窪みに羽根のありし痕
鶯餅読みさしを閉じ三個食ふ
鶯餅故郷の味と言い切りて
ちよんと突く鶯餅をちよんと置き
鶯餅ついで詣りの小寺かな
鶯餅鳴かず飛ばずも絵の修業
鶯餅幟目指して道迷ふ
カーテンは鶯餅と同じ色
鶯餅巣ごもるやうに並びをり
午後の雨鶯餅を探したる
鶯餅耳に残れるシンフォニー
鶯餅いつもは湯呑置く場所に
待ちかねし句座や鶯餅配る
土佐堀や鶯餅かるいかるい
鶯餅うなじの透ける師匠かな
鶯餅ひとつふたつと飛び去りぬ
一個二個鶯餅は止まらない
鶯餅ほら飛び交ふよ木々の間に
ひとりとは鶯餅を食べたあと
鶯餅つまみ損ねし羽根厚し
張替の午後の障子に鶯餅
にぎやかに鶯餅の渡りゆく
ヒロインの出てくるところで鶯餅
目で見れば鶯餅に穴が有り
やはらかき風が窓より鶯餅
ひととひと鶯餅がくっつける
鶯餅香も色めきて一呼吸
長考の後の鶯餅ひとつ
膨らみをつまみ鰭食ふ鶯餅
仏壇に鶯餅の名残りあり
鶯餅となりへ六羽飛びいけり
黒文字の先に鶯餅の羽
飛び立たんばかりの鶯餅を食む
鶯餅指に黄粉の軟らかさ
余命過ぎ鶯餅を頬張れり
まつことに鶯餅といふかたち
鶯餅まづ鳴き真似をひとしきり
鳴きしかな鶯餅を眺むれば

【桜餅】
母作り桜餅食む昭和の日
桜餅頬張る稚児の頬の色
桜餅香りの渇する郷遠き
餅盛れば香り盛りゆく桜餅
馳走てふギヤマン皿の桜餅

【初髪】
初髪や一年ぶりの柘植の櫛
髪染めて笑いて梳くや初髪を
初髪やクレオパトラも楊貴妃も
初髪や鬢に混じりし白きもの

【宝船】
これ敷いて夢を見ようか宝船
宝船疫病退散文字のあり
宝船体重制限ないらしき
どつちみち夜は来るもの宝船
宝鮒敷きて今宵の始まりぬ
宝船今朝はどうして眠いのか