きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「負真綿」__金曜俳句への投句一覧
(12月24日号掲載=11月30日締切)

負真綿とは、寒さを防ぐため、下着の背中の部分や羽織の下に入れる真綿のことです。櫂未知子さんによると、とてもあたたかいそうです。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2021年12月24日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです。

電子版も発行しています。

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
※公式サイトが攻撃を受けているため、新規アクセスが困難で、掲載が遅れたことをお詫びいたします。

【負真綿】
負真綿肩をすぼめる夫婦連れ
冬の旅辻音楽師負真綿
長靴にスコップ持ちて負真綿
姉よりもわずかに軽し負真綿
負真綿うまれしたまごの温かさ
負真棉厨の土間の水仕事
うつしよととこよのすきま負真綿
五人の子負ふて育てし負真綿
神事見て負真綿見て我を見て
負真綿椽(えん)の媼の膝に猫
風つよく木戸を押しけり負真綿
どこまでも歩いてゆける負真綿
告白にそろと脱ぎたる負真綿
老け作りして番台の負真綿
夜回りや背中頼もし負真綿
ぽんしんを着て背の骨を正しけり
食卓の日月澄めり負真綿
負真綿撮影の間の待ち時間
真綿負え老たる母に見送られ
負真綿楽譜に音符ひしめきて
負真綿罠に獣の気息濃し
負真綿仰げば獅子座流星群
有難や温さ生みたる負真綿
我がからだ壊れかけおり負真綿
荒れし手に絡み付きけり負真綿
初警邏やせ我慢捨て負真綿
母負いし形に箪笥の真綿かな
負真綿猫負うような温もりよ
負真綿SDGsも包み込み
負真綿スコットランドより打球
老画家は膠溶きをり負真綿
負真綿して丈足りぬ喪服かな
骨折の子の片袖や負真綿
縁側の負真綿で笑む祖母記憶
朝市の能登の訛りや負真綿
負真綿駆ける子を見て犬を見て
奥飛騨に生きたる証し負真綿
負真綿人の温さと夜の寒さ
縁側に茶飲み話や負真棉
負真綿妻の三十年の留守
借財はおほかた残り負真綿
負真綿母の重さを知らざりき
負真綿すさみしこころ解き放つ
負真綿夢のつづきの唄かすか
結目のまたも増えゆく負真綿
病む母の背に問ふ宵や負真綿
負真綿せなになじみて温かき
ダウンだよ孫に教へし負真綿
負真綿きのふの夢がうつすらと
本籍は遠き町なり負真綿
負真綿すこし猫背となりにけり
負真綿ほどいて母の洗い張り
幾代の老女抱いたか負真綿
負真綿お蚕様の偉業かな
知らん人に会わぬ家居ぞ負真綿
シフト入り冷え性の娘は負真綿
負真綿ねぐらへ帰る群れ静か
六地蔵かけてやりたや負真綿
子をおろす背の軽さや負真綿
風水を信じぬ母の負真綿
負真綿よごるるほどになじみけり
負真綿二階へ上がればいもけんぴ
肩の荷の有るうち着れぬ負真綿
野次馬の語源知らぬが負真綿
負真綿お子さまランチにくぎづけ
婆様の負真綿着るいたこかな
負真綿キリンが街に来し記憶
負真綿英語のスペル暗記の夜
山守る母の老いたる負真綿
綿子きてことばゆつくり育つかな
鬼婆の声なき笑ひ負真綿
薄灯漏る深夜に兄の負真綿
負真綿声を聞いてるだけでいい
負真綿目は妹を追ひぬ子規
負真綿けふの歯科医の下がり眉
ゴブランの椅子の残り香負真綿
見られざる背中の広さ負真綿
背の真綿ひそと確かめ体育館
負真綿母より譲り受けしかな
接続の悪き鉄路や負真綿
寝るつもりなくて寝て居る負真綿
野宿者の背に新聞の負真綿
ジーンズの遠ざけたりし負真綿
しばらくは樟脳匂ふ負真綿
足の爪伸びたら切るだけ負真綿
うたた寝の月に焦げたる負真綿
負真綿して宵闇を手懐ける
鬼城なら背なを真直ぐに負真綿
子孫夫母を食わせて負真綿
負真綿潜って呟く秘密かな
負真綿すればたのしき風の夜
負真綿今日は一日口きかず
いつの間か居眠りしたり負真綿
行き帰り五分の湯屋へ負真綿
新潟の古民家で見し負真綿
人生は一回だから負真綿
湿布薬張りたる背中負真綿
負真綿睫毛の長き少女かな
負真綿脱いで一日の終わりけり
夕ぐれの窓に及べり負真綿
背蒲団くゝる祖母の手ひび割れて
双方の言い分聞いて負真綿
義母縫いし綿入れ半纏安住ましき
負真綿紫煙くゆらす老教授
負真綿昭和の冬は寒かりし
ひとり寝の床に嵩張る負真綿
負真綿義母の手縫いの半纏に
ダサかわい夜の素顔の負真綿
抽斗の過去捨て切れず負真綿
名札ある水の匂ひの負真綿
湯上りに負真綿着て宴席へ
星空に夢中なる子の負真綿
真綿負う孫ら騒ぎて赤き顔
負真綿明治生まれの祖父の粋
負真綿江戸の水車を初警邏
手荒れの母ペタンペタンの負真綿
負真綿偲ぶ歌なり赤とんぼ
負真綿ほどく時間の中の母
負真綿今やモンベル・パタゴニア
綿子着て写真はいつも隅っこに
背筋しゃん足腰のばす負真綿
十歩とて納屋の遠さよ負真綿
負真綿記憶の母はいつも背に
捨てられぬ母の形見の負真綿
母のやさしさを丸ごと負真綿
負真綿ここにいるよとささやけり
夜の深くパジャマの上の負真綿
負真綿展示や郷土資料館
負真綿数式ひとつ解き終わる
負真綿羽織り畑へ出てみたり
炭深く肴を隠し負真綿
まんなかに子をはさみこみ負真綿
負真綿母亡き後は吾が纏い
負真綿遠い昔のやせ我慢
水いろの無聊をこぞる綿子かな
負真綿気づかれぬやう着こなせり
やうやうと迎へる婆や負真綿
覚えては忘るる単語負真綿
負真綿ランプの下で足袋繕ひ
星座めく沖の漁火負真綿
負真綿行李にそつと忍ばせり
着流しに負真綿して颯爽と
寒くないと言ひて鍵と負真綿
負真綿背中にゆるり寄り添うて
負真綿して爪くらいととのえる
負真綿菜っ葉を刻む朝の厨
負真綿百年の家に住む寒さ
アイロンで紙幣をのばし負真綿
遠い日は茶箱の奥の負真綿
負真綿して飾り気のない笑窪
文机に向かふ父の背負真綿
負真綿過ぎた月日も夢の中
父母が逝きやつと自立す負真綿
負真綿けふ一日をどう過ごす
祖母よりの時のゆるりと負真綿
負真綿積分の解未だ得ず
負真綿して憚らぬ齢かな
遠き日の記憶の重さ負真綿
負真綿背なの真中の夜の匂ひ
負真綿箪笥のにほひ身にまとう
夕暮れの空泣き出せる負真綿
負真綿二人暮らしに箸五膳
負真綿山姥が出る頃合ひか
負真綿田舎を愛する異国人
負真綿背に繕ひの遠き母
美しき手の母のおさがり負真綿
負真綿の二人がつぷり相矢倉