きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「綿虫」__金曜俳句への投句一覧
(11月27日号掲載=10月31日締切)

綿虫を見たことがありますか? 初冬のどんよりと曇った日などに、白い綿のような分泌物をつけて飛んでいます。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年11月27日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【綿虫】
綿虫をくぐり風船売めく子
綿虫や山に武将の宴跡
ト音記号宙に書くかに雪蛍
綿虫や陰陽師とし悪払ひ
綿虫やはやりやまいに逝くことも
綿虫やなんもねっけど休んでけ
また飛んだ家はどこなの綿虫さん
綿虫や故郷に向かう足せかし
指し出せば綿虫指に止まりけり
抱へるもの交換せぬか綿虫よ
雪虫と雲のやうなる綿菓子と
島影は早くも暮色雪ほたる
ピアノ譜のインクの匂ひ雪螢
綿虫のやうに遊んでみたきかな
燐寸擦る音に綿虫とほざかる
綿虫や通用門はまだ閉鎖
綿虫の飛ぶ音聞こゆほどの闇
雪蛍光の中に身を隠す
図書館の道に綿虫見る図鑑
綿虫の綿にたましひひとつ付く
綿虫や拡大鏡をさがしをり
綿虫や老ひを知らざる汝が生(しょう)
撫肩となりて綿虫滲みをり
追へば逃げ避ければ当たる雪蛍
綿虫を吹分けながら馬の鼻
綿虫や神保町にカレーの香
綿虫をそっと両掌に包みけり
綿虫の守るべきこだはりひとつ
窓の玻璃kissの跡消ゆ綿虫や
綿虫に気付けばいつも一人なり
綿虫の屍のごとく宙に舞ふ
衰えたわが手に止まり雪蛍
綿虫やそのやわらかな横なぐり
綿虫の朝日に雨戸開けにけり
ぬくもりへ雪崩るるひかり雪蛍
巫女一人祈祷受付雪ほたる
口すぼめ綿虫吹くも悔ひありき
エレベーターのなかに綿虫と我
雪虫や暮れて匂へる醤油蔵
綿虫を額縁に入れ夕陽落つ
綿虫のスケッチ誰にも見せぬ我
綿虫の舞ふ日や父祖の墓じまひ
綿虫の群れ飛ぶ頃となりにけり
綿虫に何故か心のときめきぬ
綿虫や雲の上には海の音
綿虫の一匹のみのちぎれをり
綿虫や九州育ちはふためいて
綿虫や声沸き上がる決勝戦
庭先の綿虫「へのへのもへじ」かな
綿虫や吊り橋揺れる二日酔い
一本道綿虫の舞ふバス通り
人の手に止まり果て行く雪婆
綿虫の夢のごとくに飛びゆけり
綿虫や旅人のごと入日待つ
綿虫や出会いも楽しひとり旅
綿虫や束ねられたる悔やみ状
綿虫のかくも低きを漂へり
綿虫のすこし橋から連れて来し
綿虫と暫し世間を忘れたり
綿虫の便りの友の山に逝く
綿虫や情事の後の身繕ひ
ひとつ消えひとつ綿虫あらはれる
綿虫や目線の高さ好む様に
綿虫の漂ふばかり吾老いなり
綿虫や吊り上げらるる事故車輌
綿虫を青く流してバスの窓
風に乗り綿虫いずこ籠る日々
綿虫やバターの香る台所
赤信号掠め綿虫西空へ
書き置きのごとく綿虫漂えり
綿虫の宙ぶらりんにあこがれる
舞い終えて我が手に止まり雪蛍
綿虫や年輪百の杉丸太
綿虫に包まれ迷子や宵の夢
綿虫の日照雨のごとく光りけり
綿虫や主婦に休日あらまほし
綿虫にかわされ続け家路かな
綿虫を掬ひし風の余しけり
珊瑚樹のあたり綿虫ゆううゆう
菓子とゼリー綿虫を見て見続ける
綿虫の浮き沈みして進まざる
綿虫やまだ出されない助け舟
あらたなる大綿あまた召されけり
綿虫や来しかたのごと行く末も
綿虫や私のための水鏡
綿虫に捨てたき想ひ乗せばやと
一丁の豆腐の使ひ雪婆
山にゐるはづの友どち雪蛍
綿虫やしばし東寺をさ迷ひぬ
綿虫や碧き都会の碧き夢
ふはふはと光りの粒の雪蛍
雪蛍届く喪葉書友の顔
綿虫や昼間のライトはぼんやりと
稜線は利休鼠や雪蛍
綿虫や主人公の夢今も見て
綿虫の時折見せる急旋回
迂回路に綿虫のいて立ち竦む
綿虫に絵画心を刺激され
綿虫や欠けたるままの柘植の櫛
綿虫や北海道の雪まぢか
雲海の綿虫綿の降雨かな
綿虫のそこはかとなく嬉しかり
夕雲に混じり綿虫遊びけり
綿虫の季節まもなく雪の日々
綿虫や納骨の経聞くやうに
山の端の尖り初めたる雪蛍
綿虫や皆で見送る船着場
夕暮の大綿は影欲しをり
綿虫と君のショールの青き白
綿虫や雨を通りし貨車の駅
綿虫やかぐろき馬の目を見つめ
綿虫をホウと吐出す獣道
綿虫の群れなして飛びぶつからず
開け放つ子供食堂雪蛍
綿虫をひき連れるごと下校せり
綿虫の風を掴みて放さざる
綿虫や彼の人の魂ここにあり
雪蛍人には見えぬ戸の在処
綿虫は己が生命を思へるや
綿虫や子は作文に上手く書き
村里に老いたる盲しろばんば
自動車のエンジン起動雪ばんば
綿虫やくっきりとある手稲山
綿虫や如来如去(にょらいにょこ)の水脈をなす
綿虫や虫にして紆曲を生くる
綿虫の触れむとすればぶつかりぬ
綿虫や自律神経ざわめけり
綿虫や野末に高く黒い旗
綿虫の色浅き坂降りてゆく
綿虫の吾がため息に遊びをり
綿虫が滲むウインドブレーカー
綿虫をついつい触りたくなりぬ
綿虫やあの子の家も一人親
醤油蔵つづく通りの雪蛍
綿虫の迎へし北の独り旅
雪ほたる武蔵野は陽を零しをり
雪ばんば一円玉のばかり増え
綿虫や穏やかな午後曇り空
国宝の堂に綿虫遊びたる
野良の猫綿虫の毛羽痒がりぬ
綿虫に空海の尾のゆるる牡馬
綿虫やカテドラル見ゆ?の森
綿虫や近代兵器持たぬ國
墨の香と綿虫連れて家路かな
綿虫を指もて追へば指揮者めく
綿虫や綿毛を背負つて冬告げる
暮るるとき大綿の影ふつふつと
追分を山へ折れれば雪ばんば
綿虫ややらされ感で仕事して
雪虫のやわらかく降る夢の中
綿虫やオスマントルコめく地表
雪蛍和服でひと日過ごしけり
綿虫やその電報は死の知らせ
雪螢湧いて消えゆく山の街
雪虫の消え大きもの来る気配
綿虫を生きている雪と呼んだ父
綿虫よ君の色無き言の葉よ