きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「春菊」__金曜俳句への投句一覧
(1月31日号掲載=1月5日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

春菊の原産地は地中海地方、日本には江戸時代頃に伝わったそうです。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年1月31日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

電子版も発行しています

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

【春菊】
春菊の花咲く隣り町の畔
春菊を摘みて父の眼和らぎぬ
春菊をパチパチ揚ぐや外神田
春菊を仁王の顔で喰む少女
カリカリの春菊揚げた強い母
春菊や散歩仲間のいやなやつ
春菊の青き絵手紙投函す
茹で過ぎた春菊といふを諦念を
春菊ばかり吾に寄越す鍋奉行
春菊やついついつられ歩車分離
父母は手を春菊に染め夕の納屋
春菊や香りを添える鍋料理
引き潮のやうに春菊きざみをり
春菊や燃えているのは春かしら
香の強き春菊を喰むそつと喰む
愛撫する春菊の香の指先を
春菊や上手くまわら洗濯槽
春菊の香に独り酌む昼餉かな
春菊や緑に生命力を見る
春菊を爪弾く箸浚ふ箸
春菊の畝に平行通学路
春菊やそれでいいのと言はれても
春菊の斬られ刃先を濡らしけり
春菊は冬でも春の香り立つ
春菊煮えむかしの話懐かしむ
春菊のすぐに煮えたる別れかな
春菊を取り分ける間に話題変へ
春菊やブルーシートはごわごわと
春浅し窓辺の塵の湧き上がる
春菊や少し断食してみよう
茹で終へて部屋に満ちたる菊菜の香
春菊の命の証濃い緑
春菊の刈り残されて花の咲き
鳥影のよぎる春菊刈りにけり
気塞ぎの傘濡らしむる菊菜かな
茎長の春菊かをる玉子とじ
みどりの地さらにみどりの菊菜かな
少年はパクチーわれらに春菊
ちよっとだけ青と菊菜の株植ゑる
すき焼きの春菊誇らしげに萎え
春菊や美しく箸使ふ国
春菊や今なら上手くやれさうな
春菊やノラより今のままでよし
春菊の真みどり受くる皿の色
首筋に春菊の香のついて来し
春菊に二色の花や母といる
春菊のかほりを嫌ふ男かな
春菊や和える相手を香で包み
春菊の好きだ嫌ひだ苦味あり
春菊の花を可憐と思いけり
春菊の佳き命名や佳き苦味
春菊のかをる茹で方子に教へ
鍋かけて春菊摘みに庭先へ
春菊大地に未練根の絡み
水ほぐす桶の春菊あおあおと
ひと束の春菊よべの雫ごと
春菊やざざ降り千々に京の露地
大祖父の春菊ばかり椀に盛る
春菊やまだぎこちない左利き
春菊のそれぞれ違ふ風を持つ
春菊秋桜絶対矛盾的自己同一
春菊の春に華やぐ売り場かな
春菊の届きて鍋のほかはなし
春菊のここぞとばかりにはならず
春菊の畝越え飛行機雲の行く
春菊の香をひと雨の鎮めけり
堂々たる中年春菊とりあふ
摘まるるを待つ春菊の明るさよ
春菊に母のお小言受け流す
春菊の香のみにたよる厨かな
春菊のこのぎざぎざを愛すべし
朝日子と春菊の香と妻の居て
春菊を三本夜の一人鍋
酒も靴も並ぶ八百屋に春菊来る
春菊や畝に残して花を待つ
朝粥の春菊食はず嫌ひかな
榊持つやうに春菊見せられる
入浴を待つや春菊笊に寝て
水炊きの春菊残す男かな
菊菜の香よろしと思ふ不惑かな
春菊の葉を摘み終へて外す蓋
春菊の軽やかな葉に朝の雨
敦煌の春菊澤に鍋料理
寄せ鍋や春菊さつとくぐらせて
残業の夜食春菊和える箸
春菊や溶け込ませたき吾のよわさ
プランター春菊摘んで豆腐買う
須臾のまの野性の香気菊菜噛む
春菊のメモを忘れし夫に電話
春菊指に貼りつくしつこい葉
春菊を植ゑ春菊の花は見ず
湯治場に満つる香気の菊菜かな
鍋の春菊息子喰うときはや黒く
中指の長き少年菊菜摘む
大根蔵(おおねぐら)脇の春菊なお青く
春菊のえぐみもうまい友と鍋
春菊を一株抜かば生命の香
青空へ春菊の香の拡散す
春菊も香菜もある八百屋かな
説教を聴かむ春菊煮えぬ間に
牛すじを巻く春菊の香と湯気と
牛肉は主役春菊脇固め
春菊やまだ目が覚めぬ妻の顔
春菊のくたり豆腐にはりつきぬ
三度目の恋は春菊好きな奴
さてあとは菊菜を入れてできあがり
春菊の香にほぐれゆく心かな
春菊を洗う川面に降る光
高麗菊刻みて明日を確かにす
春菊やひと抱へ持て従兄来る
春菊の律儀に並ぶ畑広し
春菊を束ねる祖母の匂いかな
春菊や塗りの小鉢の隠し膳
なにかあるごとき落日菊菜買う
春菊をただただ妻のために摘む
初恋や春菊なんて大嫌い
春菊の花の白きに触れむとす
春菊煮え香りの中に皆の笑み
裏路地に春菊育ちをり閑か
春菊や四分休符めく横顔
春菊の小道自転車二人乗り
春菊の頃に出てきたままの家
もう羽ばたけぬものと煮る菊菜かな
春菊や今も息子は反抗期
春菊の束藁しべで手際よし
春菊の籠を日の目の透く日かな
春菊や萎えども柔ではあらず
春菊の香に目覚めれば妻厨
春菊を茹でて賄ひ飯の番
春菊を貰いつ落ちのない話
春菊の強き生命に肖らん
牛肉を買ひ春菊を買ひ忘れ
春菊や的は遠くて放てない
春菊の想い出食べて今語る
春菊の数枚落ちし通勤路
春菊や好みの合ふと知る日なり
春菊の畝間で鳥餌あさり
春菊やこの違和感を何とする
春菊やすげなき寡婦のすまし汁
春菊切る音深み臍縮む
カンツォーネ耳に春菊洗ひけり
吹きこぼる泡も菊菜の色めきぬ
春菊と飛んで行きたし月の辺へ
春菊や五感それぞれ老い始む
春菊を吸ひ込むやうに湯気立てり
春菊の根が摑みたる土の色
春菊の一把収まらない土鍋
春菊みどり馥郁牡丹鍋
朝日さす厨春菊すまし汁