きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「貝割菜」__金曜俳句への投句一覧
(9月27日号掲載=8月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

蕪(かぶ)や大根などの、芽が出て二葉になったばかりのものが貝割菜です。それを間引いたものが間引菜と呼ばれます。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2019年9月27日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【貝割菜】
貝割菜不登校児の寝息しづか
行方知れぬひと思ひ出す貝割菜
貝割れやにぎわい聞こゆ保育園
貝割菜はなればなれにならぬやう
貝割菜小さき影をそれぞれに
残り物炊き込みご飯の貝割菜
貝割菜頬ごつき子のはにかみぬ
これからの命の種や貝割菜
ぞっくりと畑に芽を出し貝割菜
月光が来て総立ちの貝割菜
はりさけるみどりの息や貝割菜
頬杖をついて見とれる貝割れ菜
貝割菜立方体に売られけり
貝割菜辛味をすでに備へたる
貝割菜昨夜地面を離れたる
貝割れ菜酢飯の上の緑の蝶
貝割菜如雨露の水の粒立ちて
貝割菜抜いて雫を手で絞る
貝割菜ちらし寿司にもトッピング
思い切り昼は怠けて貝割菜
遠い樹のはつかにしなふ貝割菜
整列の杜撰なりけり貝割菜
土の香の混ざる味噌汁貝割菜
貝割菜シェフの大皿小皿かな
貝割菜双子姉妹に持ち味の
平和祈念像や貝割を手にす
眼下にはペリーの海や貝割菜
四五本は笊に貼りつき貝割菜
風評を纏う貝割皿の隅
ままごとに息を吹き込む貝割菜
バーコードに行き先委ね貝割菜
薄暗き夕餉にひかり貝割菜
生き生きとパックの中の貝割菜
食べる時貝割菜に無いアウラかな
貝割菜おほくはけふもかはりなき
卓上の布ゆきとどき貝割菜
辛味よし双葉あいらし貝割菜
大皿の仕上げに散らし貝割菜
貝割菜軍港見ゆる丘はるか
貝割菜O(オー)157は遠退いて
貝割菜ただそれだけの望みかな
純粋といふ罪深し貝割菜
摘んですぐ朝餉の卓に貝割菜
朝市や可愛らしきは貝割菜
薄切りの舌に巻かるや貝割菜
根毛を土に残せる貝割菜
建売の狭き庭なる貝割菜
どちらとも言へぬ時あり貝割菜
貝割菜明日の活力翌日も
欧米の生まれと思ってた貝割れ菜
ほろほろと畝綻びる貝割菜
昨晩の雨の匂ひや貝割菜
明け方に飴のありしか貝割菜
あらそひて最後の椅子や貝割菜
一つだけ落ちて主役の貝割菜
光合成二枚で始む貝割菜
キッチンの皿の畑の貝割菜
見勝手な恋があらまし貝割菜
早伸びるシンクの口に貝割菜
人生の付け合せかな貝割菜
痛む歯にしみると言へず貝割菜
後にする酒場にひとつ貝割菜
すでにして大根の香や貝割菜
一口に収まる高さ貝割菜
マイセンに翠映えたる貝割菜
たつぷりと貝割菜添へ塩ラーメン
貝割菜憎くなけれど作業唄
夜雨あと音符のような貝割菜
貝割のいつも震へてゐるやうな
貝割菜歩き初めの双子の娘
貝割菜カッパドキアの奇石群
雨水の流れし跡や貝割菜
半分は明日に残すか貝割菜
うそつぽくもある真顔や貝割菜
貝割りに残るしづくや貝割菜
ためらいはつまみ抜くまで貝割菜
食べ過ぎてしまふ体質貝割菜
富士を背に地下足袋農夫かいわれ菜
大いなる真昼を掴め貝割菜
確かむる食べて辛みの貝割菜
干上がりし月面の川貝割菜
貝割や川面にはかに明けそむる
笊抱へ摘みつ溢しつ貝割菜
独り言きき貝割のよく育つ
爪立てて疎らに間引く貝割菜
また弁当入れろと云うを貝割菜
脇役は慣れております貝割菜
いつの間に地の青みたる貝割菜
貝割菜の背丈日に日に世田谷線
ぱらぱらと締めのお茶漬け貝割菜
貝割菜かくもさやけき草の息
清貧てふ人は痩身貝割菜
貝割菜サラダボウルに溢れをり
貝割や妻に催促されゐたる
いまひとつ割りきれぬ想ひ貝割菜
いきいきと死んでゐるなり貝割菜
取つてをる我が膝痛し貝割菜
茄子食はぬ妻は一途に貝割菜
散りばめて色めを図る貝割菜
買ひ忘れてさはさであれど貝割菜
朝市に買ふひと掴みの貝割菜
貝割菜の根を切り落とす婆の爪
貝割にたじろぐ癖の昭和人
円陣の乱れ認めず貝割菜
貝割菜辛きを昼の肴とす
種の殻あたまに乗せて貝割菜
たどたどし押し上げ出でし貝割菜
味噌汁に豆腐と良く合う貝割れ菜
朝富士の雨の気配や貝割菜
人生に似ると食する貝割菜
連符数多なるドビュッシー貝割菜
みづからを触れてたしかむ貝割菜
貝割菜小さき根にも辛みあり
マラソンのスタート溜り貝割菜
貝割菜ポテトサラダにトッピング
貝割や握れば軋む水のなか
貝割菜盛り上げられて盛り上げる
世界標準を守る日本や貝割菜
自分なんてきらいと言って貝割菜
この上は異議に及ばず貝割菜
苦味かみけふ振り返る貝割菜
井に浸し高原の味貝割菜
貝割菜星の光のごとく喰ふ
直線の畝美しき貝割菜
眼が合ふてはにかむ少女貝割菜
貝割菜いたつきいゆるきざしあり
貝割菜哀しみひとつ越えてきて
シャキシャキともの云う嫁や貝割菜
貝割菜茎の白さを恥ぢらひて
土香り滴に濡れる貝割
あめあがりにほひあたらし貝割菜
かはたれに雀舞落つ貝割菜
貝割菜父の作りし朝餉かな
蜑の畑短き畝の菜を間引く
手巻き寿司きゅうりと玉子貝割菜
貝割菜舞い立つ如く我先に
少しだけ未来残して貝割菜
答案に三角ばかり貝割菜
貝割菜伸び放題の大雑把
素うどんを洗ひて貝割菜添へて
とびとびに密集したる貝割菜
踏むばる根か細く抜かる貝割菜
貝割菜姉妹のごとく揃いけり
身を知つて妻の山盛り貝割菜
和風ごまドレッシングの貝割れ菜
涙ほどはかなき雨滴貝割菜
貝割菜ためらいつつも間引きかな
身の丈に引け目ありけり貝割菜
まっさらな土まっさらな貝割菜
味噌汁に朝露添へて貝割菜
貝割菜直接会って話します
摘まれたることさへ忘れ貝割菜
貝割の根本断ち切り雲ひとつ
後悔を一摘みずつ貝割菜
日の強き島の畑や貝割菜
貝割や風の細さに驚きし
貝割のこゑきつとソプラノだらう
貝割菜つまむ素直になれぬ朝
いとけなき子らの輪唱貝割菜
貝割菜朝日に水を分かち合ひ
貝割菜菜っちゃん菜がつく菜っぱの子
貝割菜新居の出窓育てたき
貝割菜乾いた土の下の根や