きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「枇杷の花」__金曜俳句への投句一覧
(11月30日号掲載=10月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

「枇杷」が実をつけるのは夏ですね。「枇杷の花」が咲くのは11~12月です。
枇杷がバラ科ってご存じでしたでしょうか。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2018年11月30日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【枇杷の花】
廃屋の庭の鬱蒼枇杷の花
枇杷の花種埋めし子は十五歳
花枇杷や故国遥けし百済寺
枇杷の花農家の庭は畑つづき
枇杷の花何時咲いたとも終るとも
ひそやかに行く末案ずる枇杷の花
ぼんやりと脛掻きをりぬ枇杷の花
島を発つ枇杷の花にも見送られ
結願のまたその先へ枇杷の花
枇杷の花無垢といふほど白くなく
枇杷のはな貧乏人の子沢山
亡き伯母の庭がふるさと枇杷の花
花枇杷や噴煙は雲突き抜くる
薄鼠の雲別たれて枇杷の花
干し物の二階に見えて枇杷の花
枇杷の花何とかなるわと呟きて
枇杷の花岬の見ゆる遊女塚
風少し出て枇杷の花香りけり
先ほどの枇杷の花まで戻ろうか
竿売の声間伸びして枇杷の花
茶事に副う花と覚ゆる枇杷の花
東京も空き家多し枇杷の花
白髪の老婆嗤えり枇杷の花
枇杷咲くや母がひとりで守る生家
襟あわせ陽傾きて枇杷の花
枇杷の花坂の真下に商店街
残したる思ひもなくて枇杷の花
近づけば今花盛り枇杷の花
戦争のはじまる匂ひ枇杷の花
物干しの隣りに在わす枇杷の花
夜をゆく中央線や枇杷の花
枇杷の花親族だけの法事なり
手鏡で髪梳く妻や枇杷の花
嫁がずにソプラノ歌手や枇杷の花
好きだからこそわるくちに枇杷の花
琵琶の花色と香りを実にゆずり
枇杷の花五輪揃ってロキャンジャー
枇杷の花肥料袋の埃かな
廃屋に消せぬ記憶や枇杷の花
高き畝さらに上には枇杷の花
すっぴんの妻が手を振る枇杷の花
枇杷の花土曜大工のお父さん
枇杷の花寂し過ぎずに寺の庭
四阿に言の葉消えて枇杷の花
戸袋の半ば朽ちるや枇杷の花
図鑑にも地味と書かれし枇杷の花
自己主張せぬ人思ふ枇杷の花
枇杷の花だからここまでやつて来た
咲き染むる枇杷の花色それぞれに
妊活の友に幸あれ枇杷の花
家を出る朝に零るる枇杷の花
電動の介護ベッドや枇杷の花
無情なる裁きの庭や枇杷の花
枇杷の花娘四十まだ嫁かぬ
ひそやかに生きてけふあり枇杷の花
枇杷の花開き過ぎなさ奥ゆかし
顔知らぬ残り香の人枇杷の花
葉陰よりぼそっと萌ゆる枇杷の花
口笛のなかなか鳴らず枇杷の花
町へ出るバスはまだ来ず枇杷の花
枇杷の花売り地に三年目の香り
見上げたら今宵は満月枇杷の花
葉ばかりの木ではござらぬ枇杷の花
列車から鉄の匂ひや枇杷の花
家計簿や漏らさず記し枇杷の花
枇杷の花葉は万病の薬なり
惑星の誕生のごと枇杷の花
我の名の相々傘や枇杷の花
道すがら目路に留まりし枇杷の花
母の眼でわれ見る妻や枇杷の花
白といふ色押し出さむ枇杷の花
もつともつとやさしくなれる枇杷の花
いつもこのあたりで目まい枇杷の花
消えたがる山の日射や枇杷の花
そして誰もいなくなった枇杷の花
忖度の窓辺に散らす枇杷の花
姑の誕辰大薬王樹咲く
一人居の母恙無し枇杷の花
寂しさの身に添ふこころや枇杷の花
かの人のほとの湿りや枇杷の花
枇杷の花地味すぎる妻が大好き
枇杷の花マリアのなべて伏し目がち
枇杷の花失恋しても泣かないわ
枇杷咲いて鳥のしとねの点りけり
寡黙なる枇杷の花を横切りて
目の下に見下ろす家に枇杷の花
孫の顔産毛光りぬ枇杷の花
降り立てば香り幽かに枇杷の花
枇杷の花仰ぎ雲梯渡り切る
瀬戸内の趣き愛し枇杷の花
枇杷の花早く実になれ齧らせろ
枇杷の花どこか異国のかほりして
しやべりすぎのあとの寂しさ枇杷の花
清貧を貫き枇杷の花咲かせ
枇杷の花書に親しみて三十年
をちこちに空き地ありけり枇杷の花
花枇杷や南端に住むこの島の
絶縁の実家に咲くや枇杷の花
枇杷咲けど静まりかえる家ありて
ひたすらに待つ人ありや枇杷の花
死ぬまではふつうに生きる枇杷の花
廃屋の庭に枇杷咲く旧街道
婿取った農家の娘枇杷の花
枇杷の花戯言に付き合ってみる
京都から帰宅する日に枇杷の花
これからが長き旅路の枇杷の花
枇杷の花目礼をして行き過ぎぬ
坂道の村に育ちて枇杷の花
湯の街に押し寄す異邦枇杷の花
尺八の調子外れや枇杷の花
枇杷の花君が来そうな気配して
車椅子花のぬくもり枇杷の花
七十を閲して知るや枇杷の花
枇杷の花メールのごとき母の文
転職の君を見送る枇杷の花
枇杷の花昼三味線の路地虚ろ
自転車の速度落とせば枇杷の花
枇杷の花けふの詩人の終までも
洋館の開かずの鉄扉枇杷の花
枇杷の花幾たびあらん老いの恋
枇杷の花咲けど静まりかえる家の前
あんた戦前にする気か枇杷の花
お隣りはたしかに空家枇杷の花
ぶさた詫ぶ人なき故郷枇杷の花
枇杷の花電子レンジのチンの音
結論を伸ばすてふ智慧枇杷の花
切実な思ひを秘めて枇杷の花
古民家の低き潜戸枇杷の花
枇杷の花咲くエリザベス女王杯
枇杷の花防鳥ネットの多色性
枇杷の花古書のほつれはそのままに
枇杷の花葉は万病の薬なる
妣の庭実生の枇杷の花咲けり
曇り日に香り漂ひ枇杷の花
群れる娘等みな寂しかろ枇杷の花
枇杷の花指輪の跡の消えにけり
猫の手も胸もかぐはし枇杷の花
ひょっとしてこれは花なの枇杷の成る
枇杷の花各戸に咲くや城下町
訪うものもあるべし枇杷の花匂う
九十の父母笑う枇杷の花
分筆のかたへは更地枇杷の花
ジーパンに合はすネクタイ枇杷の花
源泉は此処から二キロ枇杷の花
墓石へみづふんだんに枇杷の花
本堂の開き放たれて枇杷の花
君と居た借家にほろろ枇杷の花
枇杷の花ひねもすめくる『赤と黒』
よく見れば桜に似たり枇杷の花
物言わぬ枇杷の花かな夫(つま)に似て
植えちゃダメ母そこに居る枇杷の花
宿坊に二段ベットや枇杷の花
二本ともまだ咲きもせず枇杷の花
指す島の軍艦に似て枇杷の花
亡き友を夢にさがしぬ枇杷の花
表札は外れし侭や枇杷の花
完治せぬ病ぽつりと枇杷の花
しみじみと人恋しくて枇杷の花
見下せる鶴の港や枇杷の花
裏木戸の朽ちし蝶番枇杷の花
枇杷の花あるともなしに盛りなり
枇杷の咲き薄墨の湾となる
空箱に確かな高さ枇杷の花
窓硝子磨き見つけし枇杷の花
らふそくの灯りの先に枇杷の花
枇杷の花白髪の鬚にのこる腰
流言に目を瞑る日や枇杷の花
枇杷の花ほろほろ咲きて一人ぼち
花枇杷やバスを見送る車椅子
漢文の要所要所に枇杷の花
枇杷の花嫁ぎし家は大家族
一歩退く生き方もあり枇杷の花
食せしは江戸が初物枇杷の花
持ち寄りし署名の束や枇杷の花
枇杷の花花のひとりのさびしさも
帰省せる放蕩息子枇杷の花
枇杷の花ゆるき夜風に絡みをり
古里は雨音しるき枇杷の花
寡黙なる枇杷の花の前に立ち
枇杷の花寂しき色に咲きにけり
碧空に時は流るる枇杷の花
枇杷の花今は解らぬ隠れ谷
木刀は土産となりぬ枇杷の花
三世代暮らす家あり枇杷の花
幸せの色は何色枇杷の花
香りより風の生まるる枇杷の花
引越して行きし隣家の枇杷の花
諭しても今は無理だと枇杷の花
ひっそりと咲く寥しさや枇杷の花
ひっそりと平和願うや枇杷の花