きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「玉蜀黍(とうもろこし)」__金曜俳句への投句一覧
(9月28日号掲載=8月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

兼題の「玉蜀黍(とうもろこし)」を「玉葱(たまねぎ)」と勘違いされた方もいらっしゃいました。読み方に不安を覚えられた時は調べられることをお勧めします。

玉蜀黍は焼いても茹でても美味しい、秋らしい食べ物ですね。さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2018年9月28日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【玉蜀黍】
自分にも他人にも甘し玉蜀黍
唐黍の葉擦れの音となりて来し
驟雨きて玉蜀黍の輝ける
もろこしや一口目だけためらえり
玉蜀黍小僧は階に休む
唐黍の粒ごとにある実りかな
とうきびや地平線越へオホーツク
もろこしを焼かなくなった電化かな
無造作にとうもろこしをもぎにけり
饒舌な人のもろこし語りをり
唐黍の丈高々とそよぐかな
玉蜀黍に皆潜り込み引揚り
唐黍をもぎて全身濡れし朝
札幌や玉蜀黍を焼く匂い
もろこしをほおばり金歯と燥ぐ子等
茹でしのち玉蜀黍を折りておく
香ばしやもろこし売りの嗄れ声
匂い立つ玉蜀黍の焼け具合
玉蜀黍笊に捥ぎ取り妻と来て
玉蜀黍生で囓れと渡さるる
唐黍やひしめき合うも整然と
もろこしの狙ひと違ふところ折れ
少年に姉は玉蜀黍を捥ぐ
玉蜀黍粒の揃ひのふと哀し
美しき玉蜀黍の歯並びや
昔呼ぶ焼玉蜀黍香ばしく
唐黍を焼く香の路地をすり抜ける
茹であがる玉蜀黍にかぶりつき
もろこしのあとには歯間ブラシかな
玉蜀黍皮の草履を土産とす
頃合いや玉蜀黍の醤油焦げ
もろこしを囲んで噂話止む
捨もろこし芽が出て全身小説家
唐黍の黄の濃くなりぬ皮剥けば
茹でてことさら唐黍の粒の艶
唐黍の捩れがちなる粒の列
整然と玉蜀黍の粒並ぶ
もろこしを怒り忘るるまで齧る
幼らは唐黍畑かくれんぼ
白壁に玉蜀黍の種を乾し
唐黍を焼く色黒の腕かな
炉に焦がす玉蜀黍とソーセージ
髭切られもろこし毒気ぬかれけり
唐黍の穂のごとき髪錦糸町
ひらめきを待ちつ玉蜀黍を食ぶ
食べれなくなるまで玉蜀黍を見る
うつくしき玉蜀黍の煙かな
唐黍の香よ懐かしき学友よ
もろこしを噛めば乳色午後の色
唐黍の葉ずれの下の初キッス
玉蜀黍けものの歯形うつくしき
二つとも玉蜀黍は友の物
母老ひて唐黍噛める歯や自前
わたくしも玉蜀黍も一即多
玉蜀黍やつぱり生に限ります
唐黍の穂の潮風になびきけり
道草にもぎし唐黍後ろ手に
むちむちと湯気もろともに喰う玉蜀黍(もろこし)
七千年寄り添ひて来し玉蜀黍
玉蜀黍焼ける香運ぶはるけき日
乱喰ひのあとのもろこし荒びけり
戦涯てもろこし焼き日遠くあり
玉蜀黍あつちとこつちから囓る
父嚙る玉蜀黍や指の胼胝
とうきびや義経落人伝説地
母の焼く玉蜀黍の切なさよ
生産者不詳玉蜀黍甘し
家苞に玉蜀黍をひと括り
縁日の玉蜀黍の嘘臭さ
玉蜀黍の吊りひも解かず宅配す
故郷や玉蜀黍の畑の風
黒々と唐黍の穂は大人びて
鼻の奥焼玉蜀黍の香は玄らず
焼いても茹でてもとうもろこしである
押しこめて諦めり唐黍の皮
山あひに水平線や玉蜀黍
唐黍の土を叩いて空仰ぐ
玉蜀黍は猛暑尻目に黄金色
冷めしに玉蜀黍だけの独り言
玉蜀黍実の数だけのひげがあり
玉蜀黍漢字で書いて売り歩く
玉蜀黍茹で裏阿蘇の昼支度
唐黍に齧りつく目の活きいきと
玉蜀黍かみて来し方飲み下す
もろこしを焼いて母恋ふ心かな
もろこしの粒の数ほど教え来し
朝採れの唐黍濡れしままに売る
黄金の玉蜀黍にたじろぎぬ
恋人の鼻下湿る玉蜀黍
唐黍はやはり捥ぎたてならば生
唐黍の葉音に紛る鬼の声
とうきびの焼けたる香から露店街
もろこしの皮一息に剥しけり
ショートボブのごと玉蜀黍のひげ
唐黍(とうきび)や実りてけもの集う夜
玉蜀黍古老に教さる草履かな
もろこしを食べてるうちに止む喧嘩
いつぺんにたうもろこしを剥く女
窮鳥の突く玉蜀黍の陰部
開拓の地の唐黍の広きかな
武器になる玉蜀黍をしのばせて
唐黍捥ぐ骨折るごとき音させて
夕闇にもろこし焼く香夜宮なり
迷ひ来て玉蜀黍の葉ずれかな
唐黍の芯断つ音や家暗し
たうもろこし醤油多めにぬりました
大皿の湯気のふくらみ玉蜀黍
玉蜀黍草履を作って履いた日も
玉蜀黍焦がしいまさら貞女など
もろこしの食べごろ隙のできるころ
水音を聞いて唐黍総立ちに
もろこしを食む手小指の曲がり癖
恋をして紅引くころかもろこしか
玉蜀黍畑の雲の迅さかな

【玉葱】
声掛合ひ玉葱吊す老夫婦
俄雨や玉葱のみなひれ伏して