きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「囀(さへづり)」__金曜俳句への投句一覧
(3月30日号掲載=2月28日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2018年3月30日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【囀】
囀りや話の尽きぬぢぢとばば
囀りの拙きをこそ愛おしむ
囀りや池の灌木揺らぎおり
囀や三角座りの児らの上
囀のくすぐりてゐる馬の耳
埃立つ道で囀る鳥六羽
囀りのやがて静まる頃を待ち
囀りや気を引き付けて恋芽生え
さへづりや冒険をする詩作かな
囀のもしくは万華鏡の色
囀りの朝もはよから賑々し
囀りや大室山も動こうぞ
囀の羊水揺らせをりにけり
さへづりや搭乗口のまうへより
山の日は山より出でて囀れり
我が声も囀りに似る夜の流れ
囀りを秩父に残し兜太逝く
囀の早暁の森に光満つ
囀りのふと止む秩父兜太逝く
囀の並木通りに待ち合はす
囀や旅立ちのまだ夜明け前
囀に答へて廻る散歩道
さへづりや眼帯にある穴数多
囀や双眼鏡の尼ふたり
学童の囀止まぬ列が行く
控えめは囀さみし古軒端
囀や休眠口座解約す
さへづりやバドミントンの音がして
囀りや火縄匂ふ雑賀の里
ハイジャンパー囀りの中バー上げる
天翔る囀りを聞く土手の上
囀りて谷を越えゆく二羽のキジ
囀に目覚める朝を待って寝る
日向ぼこ夢に聞こゆる囀りや
囀やフェリーの去りし集積所
囀や原発停止の日となりて
囀を知らで前向く子に詫びる
囀や交互に咽を潤して
囀のこぼれ落ちくる木叢かな
囀や戦争遺跡巡る旅
囀りの風に匂ひのありにけり
囀ずるは夢に隠れた奥の院
森ひとつ膨らむやうに百千鳥
囀らぬ鴉に小鳥囀れり
囀りや閑かに聴き入る青い空
シャンパンの囀り甘き香を放つ
囀の窓辺に響く起床時
囀りや寺にお経で価値を持つ
囀や水面に映る昼の星
囀や明日の天気気にするな
囀を編み込み草木伸びゆけり
囀りに乗せるバッハの無伴奏
さへづりや庭にみづまくゴムホース
囀りや天に直なるロープウェイ
抑揚をつけし囀り母を呼ぶ
囀や面影のなき渡し跡
白杖とわたる歩道や囀れる
さへづりや児らのなはとびゆつくりと
囀りの透き目に忍ぶ逢瀬かな
帰宅して囀消えぬ雪天に
囀りに身を置き換えて人恋し
赤き糸絡まるやうに囀れり
騒乱の声満ちあふる百千鳥
囀や病院ロビーのお馴染みさん
後一球囀り消える耳の奥
鉄路錆び囀りいよよ野に高し
北見ではそだねそだねと囀れり
百千鳥約款を端まで読めり
囀や教師出張して自習
囀りや心をつなぐ子守唄
沈黙の春おもわせる囀り音
四十雀一里四方に囀れり
囀りや落ち来るものと揚がるもの
翔つときも着くときも囀つてをり
囀や投擲の矢の射抜く恋
囀に晴れ晴れとして門出かな
囀や耳朶のうぶ毛の輝けり
囀の高まりて知る郵便屋
蓋開けて沸騰の湯の囀りて
さびしさに囀りに行く動物園
囀や遊覧船を降りてより
囀の鏡のなかに紅を引く
高き囀よ受験生の意気よ
囀りの朝慰めも励ましも
囀は一号棟の陽だまりか
囀りは弥生もかくや吉野ヶ里
囀やシャイな若(わか)にも茶をすすめ
囀や寝返り打って丸くなり
囀や草は滅びず三博士
囀りや風景に酔ふ梅の花
囀や小学校は山の上
囀や水の都のビル影に
囀りと売り声競ふ直売所
囀りのたつた一度のあやまちも
山肌も少し艶めき囀聴く
囀や菩提寺までの長き坂
囀るや散歩仲間の二三人
囀が脳細胞刺す寝床かな
囀や白寿を待たず兜太逝く
幼子の我に飛びつき囀りぬ
囀や今朝よりここは匂ひ立つ
水鏡囀る声も映しけり
空見あぐ囀り消すな風の音
囀に香香ぽりぽりコラボさせ
囀や遺す一樹を決め兼ねて
囀や地上にも地下にも通貨
囀や澄み渡りたる大空に
囀や休み休みの九十九坂
良寛の一茶の空や囀れり
囀りや潮騒破リ昼近し
囀りのフラット聞こゆ吉野川
囀や二重の窓を一息に
囀の無きも複合汚染かも
囀の音に明るき暗きかな
やさしさを全面に出し囀れり
囀や空のはしっこ縁取りぬ
囀や独り暮しの長き黙
囀りや訛りとびかふ路線バス
富士に向く砲台跡に囀れり
囀りのやつと聞こえる六十路かな
自転車のベルで囀に混じる
囀りの消えていくほど応援歌
囀りやふと目をあげる砂遊び
囀やビニルハウスの暑き里
五線譜に二羽のさへづり記しけり
囀のかたまつたまま川を越す
囀やフォーティエイトこそ居らね
囀の調子つぱずれこそよけれ
囀りに負けし人語の過疎に住む
囀りを聴いて一人と気付きけり
澄み渡る山の湖囀れり
百千鳥それぞれがそれぞれの話
囀や銚子の滝の濡れ具合
囀りの宙や号砲今鳴りて
囀のひとかたまりによろこびぬ
囀りに深まり行けるしじまかな
囀りの一羽ばかりが声高く
囀の山萌葱色萌葱色
窓開けて囀一つ新居かな
囀りの光りて届き雨の止む
囀や便箋にびつちりの文字
新しき補聴器届き百千鳥
囀りに母屋とられて居候
泣き止みて囀の差す木の間かな
通学路囀いつもフォルテシモ
筆先に囀りふくみ文つづる
囀や斜に構えて覗く猫
囀りの中の老ひたるニュータウン
囀に遠き樹からも応えけり
囀や考の棚田に考の鋤
囀に呼び止められし立ち話
囀りを失くした子にもみちはあり
囀や胸にさざなみ生まれ来る
囀や駅の構内カフェの庭
囀や欅大樹の天辺に
囀や製糖場に人見えず
始発待つ地下駅に囀りわたる
さへづりやマクドナルドの窓大き
あふるる思ひ届くかどうか囀りぬ
囀りて蕩けるバターぱんの耳
ホームランボール囀までとどく
引き返すことなき道を囀れり
囀や本丸よりも二の丸に
さへづりの真下に母の眠る墓
水上をゆく船に来て囀れり