きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「木の葉」__金曜俳句への投句一覧
(12月22日号掲載=2017年11月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年12月22日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

電子版も発行しています

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

【木の葉】
木の葉雨おのおの秘めし傷の痕
木の葉散り明るくなりし道を行く
踏み迷う木の葉散り敷く山路かな
木の葉にも吾にもありし夢見し日
翻弄の木の葉一枚荒き川
父親の袖にせがみて木の葉ひとつ
若かりし頃の木の葉やオー・ヘンリー
木の葉落つかそけき音や夜独居
トーチカに吹き溜まりたる木の葉かな
木の葉雨空描きたるプレリュート
多勢(おおぜい)の木の葉の上の靴の音
木の葉眺む拘置支所の小さき窓
へばりつく木の葉掃き居(お)り老し妻
鈴懸の木の葉がさがさ地を覆う
かあと鳴く鴉と木の葉揺れてをり
黙々と木の葉踏み踏む妻笑う
夕陽あまりにあかく燃ゆ中木の葉散る
葉脈の骨ばってゆく木の葉かな
そよ風の筋目を見せて木の葉散る
道端の木の葉おしげもなく積もる
赤信号待つ子良い子に木の葉舞う
木の葉散る剥がれし駅の住宅図
留まれる木の葉のうえを飛ぶ木の葉
白和に木の葉を添へて寺の膳
枝先に木の葉一枚留まりぬ
一陣に呼応して降る木の葉雨
木を蹴つて木の葉を落とす競技やる
木の葉には上手く隠れた気の仔猫
青空のしづけさ移る木の葉かな
手帳買ひ木の葉挟みて少し老ひ
舞う木の葉はりつく木の葉夜の校庭
風吹けば木の葉流るるバス通り
断片を繋ぎ合わせて木の葉とす
散り際は見せまい夜の木の葉雨
人疎ら木の葉さざめく駅広場
木の葉はく我に声かけ小学生
街のスクリーンセーバー木の葉散る
マラソンのラストスパート木の葉雨
しがみつく粘り強さよ寒木の葉
すがりつく皮1枚の木の葉かな
水のなか木の葉積もつて化石なる
縁側のやけに明るく木の葉散る
風に散る木の葉光の子のように
木の葉舞うユーモレスクが好きな人
子等二人木の葉蹴散らし妻叫ぶ
山歩き木の葉舞散る夢舞台
散る木の葉ひらひらひらと長良川
どきりとす肩に落ちたる木の葉かな
足袋老舗木の葉はさまる硝子木戸
金の翼となり木の葉空に消ゆ
山の宿木の葉時雨の埋めるほど
木の葉舞い地に着くまでの別世界
つかまえた木の葉朱さにしっぽあり
木の葉散るやがて飛び立つ風孕む
木の葉舞ふ故郷に雪の降る頃ぞ
夢見佳し木の葉降る音ついて来て
小学生色々遊ぶ木の葉の場
木の葉散る土となりゆく色の散る
木の葉雨いつもあんたはひとりぼつち
一坪といへど農場木の葉雨
木の葉踏む夜道に日の香満ちあふる
木の葉掻く音の次第に近づけり
ベンチより木の葉撒きてはまた拾ふ
封鎖なき京都大学木の葉落つ
山彦の積もる木の葉を均しけり
誰からも忘れ去らるる木の葉かな
散りもせで白き霜置く木の葉かな
木の葉散る四段活用らりるれと
立ち尽くし木の葉散る風見てをりぬ
円陣の吠ゆる球児へ木の葉かな
母の墓佇みをれば木の葉かな
木の葉散る幾度も天へ向かひつつ
諳じて木の葉を栞のハイネの詩
今日もまた北風枯葉巻き上げて
雨戸繰る大寺の暮れ木の葉降る
纏はるる木の葉踏みしむ面会日
子のために残る木の葉の時雨かな
木の葉散る吹かれしままに狂い舞う
木の葉にも将来性があるのかも
枝先に音符のごとき木の葉かな
快晴ださくさくと踏む木の葉道
山と積む木の葉のひと型にたわみ
足の指むず痒くなる木の葉どき
舞ひ上がる試みしつつ木の葉散る
木の葉時雨戸籍に特に動き無し
夜が明けてやつぱりどつさりの木の葉
西部劇はねて背に木の葉散る
舞い落ちて手に温かき木の葉かな
舞ひ止まぬ木の葉の陰を時流る
木の葉舞ふ水陽炎は仄暗く
腐し木の葉白き鎌研ぐ地獄沢
木の葉てふ地球に付箋ありにけり
木の葉落つる赤の広場や青き空
山靴の下深々と木の葉積む
ハンマーの音につられる木の葉かな
絶え間なき木の葉に視界奪はるる
前を行く木の葉百歩も追いつかず
死にてなほ音立ててゐる木の葉かな
木の葉散る死が迫り来る音がする
木の葉舞う死への営み見せながら
木の葉雨履けばますます寂しくて
ひとしきり散りし木の葉の潔し
靖国にこころを遂げて木の葉雨
木の葉舞う林を抜けて隣り村
詩心湧き我(われ)が集める木の葉かな
少年の白きフードに木の葉落つ
老人の寄り集まりし木の葉かな
海へ向く無人駅かな木の葉散る
裸婦像の乳房をかすり木の葉散る
木の葉落ち山女と化して五十鈴川
木の葉散る閉ざしたままの長屋門
走つたり歩いたりして木の葉かな
木の葉舞う猫飛びかかり空(くう)を知る
木の葉掃き集めて夜の神楽坂
著しく動かぬ片手木の葉落つ
木の葉散るゴッホの絵画見しあとに
木の葉踏む音道づれに山登る
木の葉踏む乾ききったる日暮れかな
木の葉散るしがみつくのはもうやめだ
国境に地球儀木の葉よりけむり
土地持ちに嫁して木の葉をにくみけり
足音と木の葉時雨の石畳
森のおく木の葉時雨は七色に
堆き木の葉や神階ぞ朽ちぬ
ヒロインは木の葉にまみれ生まれけり
地に着かぬままに木の葉の見えざりき
又の世に木の葉と共に落ちにけり
大いなる流れに沿つて木の葉かな
終ひの日はいかにあるらむ木の葉落つ
「必殺」をけふは三度目木の葉降る
ダンサーの血管闇に散る木の葉
吹込みし木の葉が土間に水車小屋
水占の底に木の葉の透きとほる
空に点打ちながらふる木の葉かな
青空を罅割らすため木の葉散る
ゆらゆらと森羅万象木の葉焼く
木の葉散るゆつくり行けといふ如く
信濃町駅からずつと木の葉雨
道端に着替えのバッグ木の葉かな
コンビニに吸い寄せられて木の葉積む
激し過ぎ木の葉踏み踏み反省す
生きてゐるゆゑに木の葉の湿度かな
水底へ届く木の葉の時間かな
おもてうら隠さず舞ひて木の葉落つ
庁舎出て木の葉散る中喫煙所
木の葉散る音に振り向くをんなかな
こぎつねが木の葉差し出しそうな夜
木の葉舞ふソナタの楽譜胸に抱く
木の葉散る風といふより日に揺られ
目に叶う木の葉さがして並木道
曇り空濃き色映ゆる木の葉かな
木の葉掃く玉砂利掃かにやうにして
飴色の流しのギター木の葉散る
復元の竪穴住居木の葉雨
木の葉散る恋人たちのストリート
目と鼻の穴を開けたる木の葉かな
かつて垣根ありしあたりや木の葉一枚
行末は木の葉ぶ厚き獣道
廻りつつ木の葉降りくる梢より
大ぶりの木の葉でかくすハトの糞
ふてぶてしく木の葉溜りに猫眠る
出勤のくるくる木の葉兜町
木の葉にも裏表あり裏を見る
吹き溜る木の葉の上に眠り猫
山門を潜る背に散る木の葉
木の葉焚く子らと焼き芋待ちながら
窓沿ひにただ一枚の木の葉落つ
まだ緑残れる木の葉選みけり
枝間より日の瞬きて木の葉降る
木の葉舞ふそろそろ彼とすれちがふ
木の葉影小窓に揺るる茶室かな
晴天の風につまづく木の葉かな
眼帯の女子高生や木の葉散る
木の葉浮き水底までの深さかな
マンホール開いてゐるなり木の葉散る
お喋りの言葉に火の粉木の葉散る
四五枚の木の葉影絵のごと残り
酔つたことないのよわたし木の葉ふる
あやかしの背に木の葉止まりたる
外人墓地の木の葉は鳥となりて飛ぶ
木の葉散る音闇に聴く独居かな
木の葉踏み幾年ぶりの母校訪ふ